社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
認知症700万人時代、「生涯健康脳」のつくり方
認知症は発症する15年前に兆候が分かる!?
認知症人口は、年々増加傾向にあります。厚生労働省の推計によると、いわゆる「2025年問題」に伴って、2025年には認知症の高齢者は700万人を超えるのではないかということです。「2025年問題」とは、2025年には団塊の世代のすべての人が75歳以上の後期高齢者となり、その医療費や社会保障費が増大する一方、介護医療従事者などの人手不足が深刻化するのではないかと予測されている問題のことです。認知症は、いろいろな事件に発展することもあり、しばしば社会問題として取り上げられますが、MRIの診断の精度が向上したおかげで、近年新しい発見が続出しているといいます。
『生涯健康脳』(瀧靖之著、ソレイユ出版)によると、たとえば、認知症は発症の15年前に診断によってその兆候を確かめることができるそうです。そもそも、認知症には「脳血管性」「レビー小体型」「アルツハイマー型」の大きく3タイプあり、最も多いのが「アルツハイマー型」。
診断によって将来の発生を予見できるのも「アルツハイマー型」です(※以下、補足なく「認知症」と記す場合は「アルツハイマー型認知症」だと思ってください)。
認知症を予防する生活習慣
『生涯健康脳』の著者である瀧靖之博士は、著書のなかで「認知症は生活習慣によって予防できる」と述べています。瀧博士は、脳のMR I画像を疫学データとして活用する研究、すなわち生活習慣と脳の関わりついての研究において、世界でも最先端の研究所である東北大学加齢医学研究所の教授です。これまで見てきたMRI画像は16万件を超え、MRI画像を見なくてもその人の外見を見れば、だいたい脳の様子を予測できてしまうほどの脳医学の達人なのです。どんな生活習慣が脳に良いのか。本書によると、「有酸素運動」を生活に取り入れることを勧めています。ただし、運動とはいえ、1日に30分程度歩く程度でいいそうです。激しく瞬発力を使う運動よりも、ウォーキングやジョギング、水泳のような継続的に酸素をしっかり取り込む運動が適しています。
それから、「睡眠」です。質の良い「睡眠」を充分な時間とることにより、ストレスを取り除き、脳のメンテナンスを行うことができます。これが認知症予防に大きな働きをおよぼすのだそうです。
脳の最高の栄養素は「知的好奇心」
「生涯健康脳」とは言っても、自分には年齢的にもう遅いのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、そんなことはありません。「脳はいくつになっても、生活次第で変化する」「生活習慣が遺伝子さえも超える」と瀧博士は述べています。実は、「生涯健康脳」を続けるためには、先述した「有酸素運動」や「睡眠」に増して大事なことがあります。それは、「知的好奇心」です。「知的好奇心」の高い人はいつもイキイキしているように見えますね。つまり、脳と見た目は一致するということではないでしょうか。
ちょっとした生活習慣、ちょっとした心の持ちようで、脳の健康は持続できるということです。皆さんも「生涯健康脳」でいるために、今から少しずつでも「有酸素運動」「睡眠」「知的好奇心」を意識して生活してみてはいかがでしょうか。
<参考文献>
『生涯健康脳』(瀧靖之著、ソレイユ出版)
http://soleil-pub.co/books/index.html#bs-01
『生涯健康脳』(瀧靖之著、ソレイユ出版)
http://soleil-pub.co/books/index.html#bs-01
<関連サイト>
瀧靖之氏の研究室ホームページ
http://www.nmr.idac.tohoku.ac.jp/index.html
<参考サイト>
厚生労働省HP: 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf
瀧靖之氏の研究室ホームページ
http://www.nmr.idac.tohoku.ac.jp/index.html
<参考サイト>
厚生労働省HP: 認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/nop1-2_3.pdf
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。
『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣と羽柴…二つの名前で語られる秀吉と秀長だが、その違いは何なのか。また、これまで秀長には秀吉の「補佐役」というイメージがあったが、史実ではどうなのか。実はこれまで伝えられてきた羽柴(豊臣)兄弟のエピソードにはか...
収録日:2025/10/20
追加日:2025/12/18
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
「逆境とは何に逆らうことなのか」「人はそもそも逆境でしか思考しないのではないか」――哲学者鼎談のテーマは「逆境に対峙する哲学」だったが、冒頭からまさに根源的な問いが続いていく。ヨーロッパ近世、ヨーロッパ現代、日本...
収録日:2025/07/24
追加日:2025/12/19
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
国家が的確な情報を素早く見つけ行動するためには、インテリジェンスが欠かせない。日本の外交がかくも交渉下手なのは、インテリジェンスに対する意識の低さが原因だ。日本人の苦手なインテリジェンスの重要性について、また日...
収録日:2017/11/14
追加日:2018/05/07
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為という「画狂親娘」の人生と作品について、堀口茉純先生にそれぞれの絵をふんだんに示しながら教えていただいた講義を、今回の編集部ラジオで紹介しました。
葛飾北斎といえば知らぬ人はいない江戸の絵...
葛飾北斎といえば知らぬ人はいない江戸の絵...
収録日:2025/12/04
追加日:2025/12/18


