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DATE/ 2017.09.15

なぜ、徳島県の過疎地が世界から注目されているのか?

世界が注目する徳島県の過疎地

 徳島県の山あいに上勝町という四国で一番小さな町があります。人口1600人ほどのこの小さな町の取り組みが、大きな脚光を浴びています。上勝町は、14年前にごみや浪費をゼロにすることを目指し、「ゼロ・ウェイスト宣言」を掲げました。全町民が45種類ものごみの分別に取り組むその活動は、現在、大きな成果を挙げ、なんとゴミのリサイクル率が80%に達しているのです。

 あまり知られていませんが、上勝町は、「ゼロ・ウェイスト宣言」の他にも、かねてより自治体の将来を見据えたユニークな町おこしを展開し、コピーライターの糸井重里氏の「ほぼ日刊イトイ新聞」に取り上げられたり、マイクロソフトが地域振興に協力するようにもなりました。ITとも縁が深いのです。

 また、徳島県には「せかいのかみやま」と称賛されている神山町という一風変わった町もあります。神山町は人口約5500人、高齢化率約50%のいわゆる過疎地ですが、「創造的過疎」としてIT企業や芸術家たちが集まる町でもあるのです。「創造的過疎」というコンセプトは、およそ30年にわたって地域再生に取り組んできたNPO法人グリーンバレーの大南信也氏が名付けました。

「コト」がつくる魅力

 『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』(ハーベスト出版)の著者の一人である藤代裕之氏は、「面白い地域は、なぜ面白いのか。そのヒントを探すため全国で調査を重ねてきた」ということで、自身の出身地でもある徳島県の上勝町と神山町を、注目を集める町として挙げています。藤代氏は元徳島新聞社の記者で、現在は法政大学社会学部メディア社会学科准教授です。『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』の著者の中には法政大学の藤代裕之研究室も名を連ねており、第29回地方出版文化功労賞にも輝いています。

 藤代氏によると、地域を活性させるためのキーワードは「モノ」と「コト」だということです。上勝町と神山町は、どちらも観光資源となる「モノ」がありませんでした。藤代氏は「モノは分かりやすいが、コトは見えにくい。上勝も、神山も、取り組んでいたコトは地方メディアが考えている以上に価値があった」と「コト」の魅力を指摘しています。

 また、マスメディアはともかく、地方メディアでさえも「コト」の魅力を見逃してしまうと、自身が徳島新聞の記者だった時代を振り返りつつ、地方メディアの課題を挙げています。

「よそもの」「わかもの」「ばかもの」の限界

 見えにくい「コト」に気づくには、「「よそもの、わかもの、ばかもの」の存在が必要」なのだそうです。そうした「異分子が入り込むことで「発見」が促される」わけです。

 ただし、それだけでは足りないとも述べています。「よそもの」「わかもの」「ばかもの」であって、「風の人」であることが重要です。

 『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』のタイトルにもなっている「風の人」とは、外部から変化をもたらす人のこと。その反対に、土地に根を下ろし活動する人が「土の人」です。

異分子であり続ける「風の人」

 「風の人」が定住・定着すれば、「風の人」も「土の人」になっていくわけですが、藤代さんは「定住しなくていいんです。」がコピーの岡山県西粟倉町のポスターを例に挙げて、「風の人を地域に縛り付け、土の人になることを求めるのではなく、回り道のようだが、風の人が行きやすく、過ごしやすい土地にしていく必要がある」と「風の人」であり続けられる環境が必要だと説明しています。

 そして、「人はあるときは風であり、あるときは土でありえる。そんな人が増えることで地域には新しい風が吹き続ける」と締めくくっています。

 「地方消滅論」など地方に対して悲観的な話題が囁かれる昨今、地元のために何かしたいと思っている方も少なくないはずです。「でも、何をすればいいのかわからない…」という方は、「風」として、新しい「コト」の発見を意識しつつ、地域の催しやプロジェクトにちょっと参加してみる、というのはどうでしょう。

 このとき大事なのは、あまり急がないこと。上勝町も神山町もたっぷりと時間をかけて試行錯誤を積み重ねてきました。遠回りに見えても、急がず、気負わず、地道に考え、取り組んでいくことが実はいちばんの近道なのかもしれません。
 
<参考文献>
地域ではたらく「風の人」という新しい選択(田中輝美、法政大学 藤代裕之研究室著、ハーベスト出版)
http://www.tprint.co.jp/harvest/043.html

<関連サイト>
田中輝美 Official Site
http://www.tanakaterumi.com/

法政大学 藤代裕之研究室
http://www.fujisiro.net/

(10MTV編集部)