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「敷金」は法律的に認められている?
大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然……落語に出てくる決まり文句の1つですが、お話の中ならいざ知らず、現実にはそう甘えたことも言っていられません。マンションにせよ一戸建てにせよ、賃貸物件の貸し借りには何かとトラブルがつきものです。中でも火種になりやすいのは「敷金」の返却にまつわるものではないでしょうか。
荷物も持ち出して空っぽになった部屋で大家さんが一言……「フローリングに家具の跡が付いてますね、修理費用として敷金からいただきます」……あれよあれよと引かれていって、戻ってきたのは雀の涙、それどころか追加で費用を請求されて目も当てられない……そんな話もしばしば耳にします。普通に暮らしていてできた痕跡にまで責任を持たなくちゃいけないの?そんな悩みの種に関わる法律が、実に120年ぶりに改正されたのを御存知でしょうか。
では、「敷金・礼金」にはどのような規定があるのでしょうか? なんと、特にはありません。法律でかくあるべしと定められているわけではなかったのですね。地方によって金額も違えば呼び名も違い、様々なトラブルの引き金になっているようで、国民生活センターにも年間14000件ほど相談が寄せられています。同様に、部屋を引き払うに当たっての「敷金の返還」についても決まりはありません。つまるところ大家さんしだい……昔からの慣習がそのまま現代にも引き継がれていたのです。
「部屋の原状回復」についても同様でした。借主は貸主に、「借りていた部屋を元の状態に戻して返す」という義務はあります。しかし、どこまで戻すのかとは明記されていなかったのです。家具を取り除いて空っぽにすることが「元の状態」なのか、壁紙から畳にいたるまで全てを張り替えて「元の状態」なのか……これでは両者が自分の都合の良い方に解釈して当たり前、そんなあやふやがトラブルを呼び込んでいたわけですね。
まず「敷金」についてです。貸主側は部屋の明け渡しを受けた際に、借主側に敷金を返還しなければならないと記されました。もちろん未払いの家賃があれば徴収されますが、敷金はあくまで家賃の担保であると定められました。言い換えれば、原状回復の費用に充てられるためのお金ではないと条件づけられたことになりますね。
そして「原状回復義務」については、通常使用による損耗、経年変化の修復は借主側の責任の範囲外と定められました。家具の設置による床やカーペットの凹み、エアコン設置による壁のビス穴、畳の日焼けというような、普通に暮らしてついた痕跡は借主の責任の範疇外になったのです。貸主は契約解除の際に修理費用を要求することも、敷金から引くこともできなくなります。
とはいえ、通常使用以外での損耗を元通りにする義務がなくなったわけではありません。やんちゃなお子さんがおもちゃを振り回して開けた穴、引っ越し作業などでついた傷、飲みこぼしを放置してついたカーペットや畳のシミ、タバコのヤニで壁紙や天井を黄色くしてしまった、などの修復の責任は引き続き存在します。また、契約を結ぶ際に「特約事項」として、経年変化の損耗も借主側の負担になる、と盛り込まれていた上で合意があれば有効とみなされます。
昔から言われていることですが、新居に入る時はなるべく荷物を運び込む前に、傷や汚れをチェックして撮影しておくといいですね。最近では日付がわかるようにその日の新聞と一緒にスマホで動画を撮っておく人もいるそうです。また、管理会社によっては前もって傷んでいる箇所を報告するよう書類を郵送してくるところもあります。
賃貸契約に限った話ではありませんが、何かを契約する時には前もってしっかりと内容を確認しておくのは必須。貸す側、借りる側、どちらにとっても気持ちの良い関係が築けるよう、賃貸契約時には今まで以上に真摯な態度で臨みたいものです。
荷物も持ち出して空っぽになった部屋で大家さんが一言……「フローリングに家具の跡が付いてますね、修理費用として敷金からいただきます」……あれよあれよと引かれていって、戻ってきたのは雀の涙、それどころか追加で費用を請求されて目も当てられない……そんな話もしばしば耳にします。普通に暮らしていてできた痕跡にまで責任を持たなくちゃいけないの?そんな悩みの種に関わる法律が、実に120年ぶりに改正されたのを御存知でしょうか。
敷金トラブルの相談報告数、なんと年間14000件!
不動産屋さんの店先や部屋探しサイトを見ていれば必ず目にする「敷金・礼金」。改めて確認してみますと、「敷金」とは家賃などの担保として家屋の持ち主に預けておく保証金になります。不払いなどが生じたときに補填されるためにあるお金です。また、住居を引き払う際に部屋の原状回復に当てられるのが一般的です。これに対して「礼金」は文字通り、部屋の貸主である大家さんへのお礼として支払われているものです。お礼ですので返ってくることはありません。では、「敷金・礼金」にはどのような規定があるのでしょうか? なんと、特にはありません。法律でかくあるべしと定められているわけではなかったのですね。地方によって金額も違えば呼び名も違い、様々なトラブルの引き金になっているようで、国民生活センターにも年間14000件ほど相談が寄せられています。同様に、部屋を引き払うに当たっての「敷金の返還」についても決まりはありません。つまるところ大家さんしだい……昔からの慣習がそのまま現代にも引き継がれていたのです。
「部屋の原状回復」についても同様でした。借主は貸主に、「借りていた部屋を元の状態に戻して返す」という義務はあります。しかし、どこまで戻すのかとは明記されていなかったのです。家具を取り除いて空っぽにすることが「元の状態」なのか、壁紙から畳にいたるまで全てを張り替えて「元の状態」なのか……これでは両者が自分の都合の良い方に解釈して当たり前、そんなあやふやがトラブルを呼び込んでいたわけですね。
民法改正で「敷金」「原状回復義務」がはっきり明確に
そんなあやふやさの終止符となったのが120年ぶりの民法改正です。「敷金の返還」や「原状回復」の定義がはっきりと明記されたのです。まず「敷金」についてです。貸主側は部屋の明け渡しを受けた際に、借主側に敷金を返還しなければならないと記されました。もちろん未払いの家賃があれば徴収されますが、敷金はあくまで家賃の担保であると定められました。言い換えれば、原状回復の費用に充てられるためのお金ではないと条件づけられたことになりますね。
そして「原状回復義務」については、通常使用による損耗、経年変化の修復は借主側の責任の範囲外と定められました。家具の設置による床やカーペットの凹み、エアコン設置による壁のビス穴、畳の日焼けというような、普通に暮らしてついた痕跡は借主の責任の範疇外になったのです。貸主は契約解除の際に修理費用を要求することも、敷金から引くこともできなくなります。
とはいえ、通常使用以外での損耗を元通りにする義務がなくなったわけではありません。やんちゃなお子さんがおもちゃを振り回して開けた穴、引っ越し作業などでついた傷、飲みこぼしを放置してついたカーペットや畳のシミ、タバコのヤニで壁紙や天井を黄色くしてしまった、などの修復の責任は引き続き存在します。また、契約を結ぶ際に「特約事項」として、経年変化の損耗も借主側の負担になる、と盛り込まれていた上で合意があれば有効とみなされます。
契約前の確認がポイント
今回の改正は2020年を目処に施行されるようです。最近では敷金礼金ゼロ物件も多くなっているようです。賃貸契約に関しては、「契約を結ぶ際に必要な連帯保証人」や「震災などで賃貸が滅失」した場合についても改正がありました。施行前後に賃貸契約を結ぶ予定のある方、賃貸物件を管理している方は要チェックです。昔から言われていることですが、新居に入る時はなるべく荷物を運び込む前に、傷や汚れをチェックして撮影しておくといいですね。最近では日付がわかるようにその日の新聞と一緒にスマホで動画を撮っておく人もいるそうです。また、管理会社によっては前もって傷んでいる箇所を報告するよう書類を郵送してくるところもあります。
賃貸契約に限った話ではありませんが、何かを契約する時には前もってしっかりと内容を確認しておくのは必須。貸す側、借りる側、どちらにとっても気持ちの良い関係が築けるよう、賃貸契約時には今まで以上に真摯な態度で臨みたいものです。
<参考サイト>
・弁護士法人 咲くやこの花法律事務所:民法改正の不動産賃貸実務への4つの影響と賃貸借契約書の見直し方法
https://kigyobengo.com/media/useful/557.html
・独立行政法人 国民生活センター:賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html
・弁護士法人 咲くやこの花法律事務所:民法改正の不動産賃貸実務への4つの影響と賃貸借契約書の見直し方法
https://kigyobengo.com/media/useful/557.html
・独立行政法人 国民生活センター:賃貸住宅の敷金、ならびに原状回復トラブル
http://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/chintai.html
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