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家に本が何冊あったかが子どもの能力を決める?
最近、「読書」について興味ぶかい研究結果が発表されました。なんと、読書の質や量とは関係なく、「家に本が何冊あるのか」ということが「子どもの読み書き能力やITスキル」と大きく関わっていることが明らかになったのです。
どのような調査が行われ、具体的にどのような結果が出たのか、なるべくわかりやすく調査内容を解説していきます。
文科省の解説によれば、「国際成人力調査」とは、日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランドなど、OECD加盟国の24か国と地域の「16歳~65歳までの男女」を対象として、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」、また、調査対象者の背景となる「年齢」「性別」「学歴」「職歴」などを問う調査のことです。
結果は「本がほぼない家庭で育った場合、読み書きや算数の能力が平均より低かった。自宅にあった本の数とテストの結果は比例し、テストが平均的な点数になるのは自宅に80冊ほどあった場合」でした。ただし、ひたすら本の数が多い方がいいのかといえばそんなことはなく、「350冊」を超えると、テストの結果との慣例性は小さくなりました。
また、本人の性別や年齢や教育水準、さらに親の教育水準、大人になってからの仕事も関係ありません。シンプルに、「たくさんの本に囲まれて育ったかどうか」が問われているわけです。
さて、気になるのはやはり日本でしょう。日本は残念ながら結果はかんばしくなく、世界平均におよばず平均102冊。18カ国・地域のランキングにおいて14位でした。
というのも、じつは読書はまだまだ謎だらけなのです。読書が読書する人に何をもたらし、読書中に頭の中で何が起こっているのかについては、ほとんどわかっていません。ここ最近、認知科学や脳科学が発達し、AIやロボットの開発が本格化するなか、やっと読書を研究する準備も整ってきたというところです。
今回紹介した調査同様に、もしかすると将来的に読書の量や質についても驚くべき結果が明らかになってくるかもしれません。ちなみに、『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』(ニコラス・G・カー著、青土社)という本によると、インターネットに浸かれば浸かるほど、私たちは「注意散漫」になり、深い思考ができなくなります。
本を読まないリスクのことはよく分かっていませんが、同じ読み物でもインターネットのやりすぎにはリスクがあるようなので、ご用心を。
どのような調査が行われ、具体的にどのような結果が出たのか、なるべくわかりやすく調査内容を解説していきます。
「国際成人力調査」とは?
ウェブサイト「ニューズウィーク日本版」の「子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査」という記事によると、オーストラリア国立大学と米ネバダ大学は、共同で2011~2015年に31の国と地域に住む25~65歳の16万人を対象に「国際成人力調査」を行い、そのデータを分析しました。その結果は学術誌「ソーシャル・サイエンス・リサーチ」に発表され、英国のガーディアン紙が報じました。文科省の解説によれば、「国際成人力調査」とは、日、米、英、仏、独、韓、豪、加、フィンランドなど、OECD加盟国の24か国と地域の「16歳~65歳までの男女」を対象として、「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」、また、調査対象者の背景となる「年齢」「性別」「学歴」「職歴」などを問う調査のことです。
16歳の時に自宅に何冊本があったか
調査では「16歳の時に自宅に何冊本があったか」という質問を設け、その後に「読み書き能力」「数字」「情報通信技術」のテストを課したそうです。結果は「本がほぼない家庭で育った場合、読み書きや算数の能力が平均より低かった。自宅にあった本の数とテストの結果は比例し、テストが平均的な点数になるのは自宅に80冊ほどあった場合」でした。ただし、ひたすら本の数が多い方がいいのかといえばそんなことはなく、「350冊」を超えると、テストの結果との慣例性は小さくなりました。
「たくさん読めばいい」わけではない
この調査の面白い点は、質問を「家にあった本の冊数」にしぼっており、「どれだけ本を読んだのか」ということと結果が無関係であること。要するに、たんに親が本好きだったり、たくさん読んでいればいいというわけではありません。また、本人の性別や年齢や教育水準、さらに親の教育水準、大人になってからの仕事も関係ありません。シンプルに、「たくさんの本に囲まれて育ったかどうか」が問われているわけです。
世界でいちばん本好きの国
「16歳の時にどれだけ書籍が自宅にあったか」の国別のランキングも出ています。世界一本好きの国はエストニアでした。世界の平均冊数が115冊だったのに対して、エストニアの平均冊数は218冊でした。さらに、350冊以上と答えた人が35%にものぼりました。さて、気になるのはやはり日本でしょう。日本は残念ながら結果はかんばしくなく、世界平均におよばず平均102冊。18カ国・地域のランキングにおいて14位でした。
読書の効果は未知数
以上の調査は、繰り返しになりますが、あくまでも子どものときの育成環境に関するものです。どれ程、どのように読書したのかという読書量や読書の方法と、その人の能力の関係性は明らかにされていません。言い換えれば、このコラムを読者のみなさんを含め、すでに大人となってしまった私たちは、この結果を子どもの教育に役立てることはできても、自分たちの能力向上には打つ手はないということです。というのも、じつは読書はまだまだ謎だらけなのです。読書が読書する人に何をもたらし、読書中に頭の中で何が起こっているのかについては、ほとんどわかっていません。ここ最近、認知科学や脳科学が発達し、AIやロボットの開発が本格化するなか、やっと読書を研究する準備も整ってきたというところです。
「読書のロマン」と「ネットのリスク」
現段階では読書が何をもたらしてくれるのか、わかりません。それならわざわざ読まないという立場もあれば、未知の領域だからこそ読書に可能性を見いだしたい方もいるでしょう。後者の方がロマンはありますが、なにもわかっていない以上、正しさも誤りもなく、どちらもアリです。今回紹介した調査同様に、もしかすると将来的に読書の量や質についても驚くべき結果が明らかになってくるかもしれません。ちなみに、『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること』(ニコラス・G・カー著、青土社)という本によると、インターネットに浸かれば浸かるほど、私たちは「注意散漫」になり、深い思考ができなくなります。
本を読まないリスクのことはよく分かっていませんが、同じ読み物でもインターネットのやりすぎにはリスクがあるようなので、ご用心を。
<参考文献・参考サイト>
・『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること>』(ニコラス・G・カー著、青土社)
・子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/ok-11.php
・文部科学省│国際成人力調査(PIAAC:ピアック)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm
・『ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること>』(ニコラス・G・カー著、青土社)
・子どもの時に、自宅に紙の本が何冊あったかが一生を左右する:大規模調査
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/10/ok-11.php
・文部科学省│国際成人力調査(PIAAC:ピアック)
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/data/Others/1287165.htm
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