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DATE/ 2019.01.05

正しく使える?「おもむろに」「小春日和」誤用が5割超

 自分が普段よく使っている言葉でも、改めて意味を問われるとイマイチ意味がわかっておらず、きちんと説明ができないことがあると思います。特に、古くから何気なく日常的に使っている慣用句や副詞などは、自身が勘違いしているだけでなく、伝える相手が違う意味で捉えている場合も多くあるのではないでしょうか。

 文化庁文化部国語課長の岸本織江氏は「言葉は、年月とともに変化していくもの」としつつ、「とはいえ、どんな言葉を使ってもいい、とういうわけではありません」「お互いが伝えたいことと、受け取ったこととが食い違ってしまえば、適切なコミュニケーションは成立しません」と述べています(『文化庁国語課の勘違いしやすい日本語』)。

 今回は文化庁国語課による「国語に関する世論調査」(以下「調査」)を参考に、言葉の誤用や変化について、考察してみたいと思います。

「おもむろに」「小春日和」の意味と誤用

 文化庁国語課は、平成7(1995)年度から毎年、調査を実施しています。調査の目的はずばり、「日本人の国語に関する意識や理解の現状について調査し、国語施策の立案に資するとともに、国民の国語に関する興味・関心を喚起する」こと。言うなれば、日本語とその環境に対する人々の意識を調査し、調査で得た結果を国語施策の参考とすることにあります。

 調査の内容は社会や家庭での言葉遣い、新しい複合語や省略語、漢字・慣用句・敬語・外来語などの理解度や関心度から、会話・手紙・メールといった言語コミュニケーションの現状など、多岐にわたります。全国の16歳以上の男女から調査対象を抽出したうえで、個別面接形式で調査を行っています。

 平成26(2014)年度調査の「慣用句等の意味・言い方について」において、「おもむろに」ならびに「小春日和」も調査対象となりました。

 「おもむろに」は漢字で書くと「徐に」となるように、辞書等に記載される本来の主な意味は「ゆっくりと」とされていますが、選択項目を「不意に」とし、“どちらの意味だと思うか”と調査したところ、「ゆっくりと」44.5%・「不意に」40.8%・両方3.1%・両方と全く別の意味6.2%・分からない5.3%という、5割超が誤用しているという結果が出てきました。

 一方、「小春日和」も、本来の意味とされる「初冬の頃の、穏やかで暖かな天気」51.7%に対し、選択項目として提示された「春先の頃の、穏やかで暖かな天気」41.7%、両方3.1%・両方と全く別の意味1.8%・分からない1.8%と、同様に約半数が誤用していることがわかりました。

 なお、同時に行われた「枯れ木も山のにぎわい」は、本来の意味とされる「つまらないものでも無いよりはまし」37.6%に対し、本来とは違う意味の「人が集まればにぎやかになる」の方を選択した割合が47.2%と高い結果となりました。ちなみにこの慣用句には平成16(2004)年度の調査結果もあり、そちらでは前者が38.6%で後者が35.5%と、わずかではあるものの本来の意味を選択する割合が高い結果を示しています。

経年の調査から見る「言葉をめぐる変化」

 前述のとおり、調査は数十年にわたって毎年行われており、その結果は分析され公開されています。中には数年後に同じ言葉や慣用句等の意味を調査し、経年比較をしている調査結果も発表されている場合もあり、貴重な資料となっています。

 例えば、“話のさわりだけ聞かせる”などに用いられる「さわり」について、本来の意味とされる「話などの要点のこと」と回答した割合は、平成28(2016)年度・36.1%、平成19(2007)年度・35.1%、平成15(2003)年度・31.1%に対し、本来とは違う意味の「話などの最初の部分のこと」と回答した割合は、平成28(2016)年度・53.3%、平成19(2007)年度・55.0%、平成15(2003)年度・59.3%という結果が、まとめて公開されました。

 同様に、「檄(げき)を飛ばす」について、本来の意味とされる「自分の主張や考えを,広く人々に知らせて同意を求めること」と回答した割合は、平成29(2017)年度・22.1%、平成19(2007)年度・19.3%、平成15(2003)年度・14.6%。対して本来とは違う意味の「元気のない者に刺激を与えて活気付けること」と回答した割合は、平成29(2017)年度・67.4%、平成19(2007)年度・72.9%、平成15(2003)年度・74.1%という結果が、まとめられています。

 2つの結果からは現時点では経年による大きな変化は見られませんが、定期的に調査を続けることによって、「言葉(に対する意味や用法)の変化」が鮮明なったり、もしくは「(意味や用法がそれほど)変化しない言葉」がわかってきたりするのかもしれません。

 国語学者で埼玉大学名誉教授の山口仲美氏は「慣用句」について、民族の長い間の知恵や発想が如実に表されている長い年月に耐ええた卓越した表現であり、「各民族の生活・性向・発想を探るかっこうの材料ともなる」と述べています。

 “生きている”ともいわれる“言葉”。「おもむろに」や「小春日和」の意味や用法も、数年後の調査では変わっているのかもしれません。

<参考文献・参考サイト>
・『文化庁国語課の勘違いしやすい日本語』(文化庁国語課著、幻冬舎)
・「慣用句」、『日本大百科全書』(山口仲美著、小学館)
・国語に関する世論調査 | 文化庁
http://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/kokugo_yoronchosa/index.html
(10MTV編集部)