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なぜ仕事を「つまらない」と感じてしまうのか?
やりがいのない仕事はつまらなく感じる
日々を生きる糧を得るために、避けては通れないもの。それが仕事です。だからこそ楽しくやりたいものですが、「つまらない」と感じてしまう人が多いのも事実ですよね。とはいえ、誰でもその仕事を始めた当初は夢や希望を抱いていたはず。それなのに仕事をつまらないと感じるのは、その仕事の現実を見たうえでつまらないと感じる原因にぶつかってしまったからでしょう。もちろん、仕事をつまらないと感じる原因は職場の雰囲気や人間関係など、ひとつではありません。しかし、多くの場合は「やりがいが感じられない」ことが根本にあります。それでは、どんな仕事だとやりがいがないのでしょうか。よくあるケースは「自分に裁量権がない」仕事です。裁量権とは「任せられる度合」のことで、裁量権が少ない仕事ほど組織や上司から与えられた指示やマニュアル通りにこなす業務ばかりになります。そうすると単調作業の繰り返しになったり、手が空いてもやることがなく暇になったりしてやりがいを見失い、つまらなくなってしまうのです。
裁量権のある仕事なら業務のプロセスそのものからカスタマイズできますし、オリジナリティやクリエイティビティを発揮できますよね。このような「自分らしさのある、自分だからこそできる仕事」には多くの人がやりがいを感じるのです。
満足感が得られない仕事もつまらない
ところが、裁量権があればどんな仕事でも意欲的に取り組めるかというと一概にそうとはいえません。難しすぎたり逆に簡単すぎたりする仕事は、裁量権があってもつまらなく感じるのです。難易度が高すぎてどんなに工夫しても終わらない、終わったとしてもクオリティが低くなってしまう仕事は「そもそも無理」と感じて意欲がわかず、せっかく自分らしく取り組んでも満足感が得られないので、つまらなく感じてしまいます。それならば簡単すぎる仕事は楽に稼げるからよいのではないかとも思えるのですが、この場合はすぐ暇になり、結局は裁量権が少ない仕事と同じ単調作業になってしまいます。さらに、楽すぎて学ぶことが少ないので自分の成長が感じられません。このためやはり意欲がわかず、「いい仕事をした」という満足感が得られないので、つまらなく感じてしまうのです。
この現象は、心理学用語の「達成動機」で説明できます。達成動機とは目標を達成しようとする意欲のこと。アメリカの心理学者J.W.アトキンソンは、成功しようとする動機づけを接近モチベーション、失敗を回避しようとする動機づけを回避モチベーションと名づけ、両者の合成値が目標達成への行動にあらわれるという公式を考えました。そしてこの公式から、達成動機は成功の見込みが五分五分のときに最も高くなり、目標が難しすぎても簡単すぎても上がらないという仮説を立てて実験したところ、実際その通りの結果を得たのです。
つまらない仕事を楽しくするためには、自分の裁量権を手に入れて難しすぎず簡単すぎない仕事を担当することが大切といえるでしょう。
仕事と自分を見つめ直そう
仕事をつまらなく感じると頭に浮かぶのは、やはり転職ではないでしょうか。もちろん、合わない仕事をいつまでも続けるのは心身によくないので、転職は有力な解決策のひとつです。しかし後先考えずに勢いで転職すると、転職先でも同じように仕事をつまらなく感じるかもしれません。後悔しないためにもまずは、客観的に現状を見つめてください。仕事と自分の関係を冷静に分析するには、「今の仕事のつまらない点」と「その点をつまらなく感じる原因」を紙に書き出すと効果的です。もやもやした不満を心に溜めておくより、見えるかたちにアウトプットしたほうが頭の中を整理できて、どこまでが自分自身の対応で解決できる範囲かわかります。考えて書くという行動にも、心を落ち着かせる作用がありますよ。
自力では難しくても、上司に相談すれば解決できることがあるかもしれません。そのときには「仕事がつまらない」と否定的な表現をしないで、「もっと役に立てる」とか「ほかにもできる仕事がある」と職場に協力したい気持ちを伝えてください。それでも解決しないなら、思い切って転職に踏み出しましょう。
<参考サイト>
・こころの耳 領域3 仕事の裁量性
http://kokoro.mhlw.go.jp/comfort-check/cc003/
・こころの耳 領域3 仕事の裁量性
http://kokoro.mhlw.go.jp/comfort-check/cc003/
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