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DATE/ 2019.03.24

退職金制度はいずれ消える?ゼロ企業の割合は…

 老後資金は数千万円は必要だと言われています。老後資金をつくっていくうえで、サラリーマンにとって頼みの綱は退職金です。しかしながら、この退職金の制度がいずれは消えゆくのではないかと言われています。

高度経済成長期の名残り

 日本は世界経済において明らかにプレゼンスを失いつつあります。米中という2つの大国に対してはついていくのがやっとのこと。国内的にも少子高齢化が経済発展の大きな足かせになっており、連日のように議会や報道で取りざたされています。

 こうして経済の先行きが不透明ななかで、人々が求めるのは安定と安心。しかしながら、サラリーマンの安定を保証する終身雇用、年功序列など日本的な雇用制度は崩れかけています。経営を圧迫するようなコストをできるだけ削減していこうという流れのなかで、同じく高度経済成長期の名残りである「退職金制度」の見直しも多くの企業で検討されています。

企業は勝手に退職金制度を変更できない

 退職金制度の廃止は会社にとって必要なことだとしても、そこで働く会社員にとっては不利益なことです。会社の勝手で会社員の不利益になるようなことをおこなうのは労働基準法で許されていません。

 労働者に十分に説明したうえで合意をとることが必要になります。なかなか合意は得られないように思いますが、じつは退職金の廃止を検討している企業は増加しつつあります。

24.5%は退職金ゼロ

 厚生労働省の発表(「平成25年就労条件総合調査結果の概況」)によると、24.5%は退職金ゼロ企業なのだそうです。従業員99人以下の中小企業について言えば、28%が退職金ゼロです。

 調査時から過去3年間に退職一時金制度を廃止した企業、調査時からその後の3年間で廃止を予定している企業はともに3パーセント程度ありました。

 また、退職年金制度については、調査時から過去3年間に制度を廃止した企業が7.3パーセント、その後の3年間で廃止を予定している企業が9.6パーセントもいました。5年以上前のデータなので、現代ではさらに増加している可能性もあります。

 労働者として知っておくべきことは労働者の合意なしには企業は退職金制度は変更できないということです。とはいえ、そのコストのために企業が弱ってしまっては本末転倒でもあります。自分の老後だけでなく、企業の成長と生き残りも十分に考慮することが大切です。

<参考サイト>
・退職金制度を変更・廃止するには│BUSINESS LAWYERS
https://business.bengo4.com/practices/683
・平成25年就労条件総合調査結果の概況│厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou04.html
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