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DATE/ 2019.03.27

英語圏の人々にとって一番難しい言語とは?

 街中で外国人観光客を見ることが珍しくなくなった今日この頃。英語を話せるボランティアの需要が高まるなど、外国語に触れる機会は増えてきています。話せた方が良いとはいえ、なかなか英語を話せるようにならない方も多いと思いますが、同じように海外から来た人が日本語を話せるようになるのも難しいもの。では、海外の人にとって日本語を習得するのはどれほどの難易度なのでしょうか。

英語圏の人にとって日本語習得は最高難易度

 アメリカの国務省にあたる機関であるFSIは、英語圏の人が習得するのにどれだけの時間がかかるかを基に、世界の主要言語を難易度別に5つのカテゴリーに分類しました。カテゴリー1~3の言語は575~900時間(6~9ヶ月程度)で習得できるとされ、ラテン語を起源としたイタリア語やフランス語やスペイン語、英語と起源を同じくしたオランダ語やドイツ語が含まれています。

 カテゴリー4になると1100時間(約1年弱)も習得に時間がかかるとされ、ギリシャ語やトルコ語、タイ語などが分類されています。そして最高難易度のカテゴリー5の言語を習得するのにかかる時間は、なんと2200時間(約2年弱)。アラビア語、中国語、韓国語、そして日本語が分類されているのです。さらに、日本語はそのカテゴリーの中でもより習得が難しいとされ、実質世界で一番難しい言語だと位置づけられています。

なぜそんなに難しいのか?

 英語圏の人にとって日本語の習得が難しいのは多くの理由があります。ひとつは「文法の違い」で、英語では文章を作る上で必ず主語が必要ですが、日本語では主語がなくても文章が通じる場合が少なくありません。また、助詞の使い分けも大きな壁となります。というのも、普段日本語を使っている私たちも「こういう場合は「~は」、こういう場合は「~が」を使う、その理由は?」と説明を求められても、なかなか説明できませんよね。日本語を母国語としている人びとが感覚で使っているものを習得するのはとても難しいのです。

 また、「発音の難しさ」も理由のひとつです。例えば、「おばあさん」「おばさん」は私たちにとっては意味が異なる言葉ですが、英語圏の人にとっては「おばあさん」の「あ」の音を発音するのは難しいとされています。こうした母音をのばす音を長音といいますが、英語圏の人にはなじみのない発音だからです。同様に「がっこう」の「っ」といったつまる音、促音も難しいといわれています。その結果、英語圏の人が話す「おばさん」「がこう」という言葉は日本人にとってはカタコトの日本語に聞こえてしまうのです。

日本語を話す人にとっても英語は難しい

 他にも、漢字・ひらがな・カタカナの3種類の文字を使い分けている、敬語の表現が細かく分かれている、会話に必要な語彙数が多い、和製英語が多くて厄介……などその理由を挙げたらキリがありません。日本語は英語と異なるルールが多い、それが英語圏の人びとにとって日本語の習得がもっとも難しい言語の理由となっているのでしょう。

 逆もまた然りで、日本語圏の人が英語を習得するのは難易度が高いとされています。英語が苦手だと思うのは自然なことなので、諦めずに英語の勉強を続けてみてください。他の言語よりもかなりの時間が必要かもしれませんが、英語も話せるようになることでしょう。

<参考サイト>
・Map Reveals How Long It Takes To Learn Different Languages
https://www.boredpanda.com/language-learning-difficulty-map-europe/
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