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DATE/ 2020.06.23

日本の「離婚率」世界で見ると何番目?

 3組に1組は離婚する。こんな衝撃的なフレーズを耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。果たしてこの数字は本当なのか?そしてこれは高いのか、低いのか、国際的に見たらどうなのか。離婚をめぐる数字について迫ってみました。

離婚率「34.9%」これって高い?低い?

 厚労省の人口動態統計を参照すると、2017年の婚姻件数約60.7万組に対し、離婚件数は約21.2万組です。この年に結婚した60.7万組のうち21.2万組が離婚しているわけではなく(中にはその年のうちにスピード離婚した夫婦もいるとは思いますが)、あくまで便宜的な数字にはなるものの、離婚件数を婚姻件数で割ると34.9%という数字が出てきます。それぞれ人口1000人あたりで見ると、婚姻件数は4.9、離婚件数は1.7となります。過去にさかのぼってみると、婚姻件数のピークを迎えたのは昭和40年代。その後右肩下がりになっているのに対し、離婚件数が一番多かったのは2000年代初頭。昭和より平成の方が格段に“離婚率”が上がっていることがわかります。

 さて、では日本の最新の離婚率が35%程度、1000人あたり1.7件という数字がわかったところで、世界の傾向も見てみましょう。総務省統計局が「世界の統計2019」という調査を発表しており、こちらに採用している日本のデータは上記の1000人あたり婚姻4.9、離婚1.7です。まず人口1000人あたりの離婚件数でみると、世界トップはロシアで4.7件。続いてモルドバ(3.7)、ベラルーシ(3.4)、ウクライナ(3.1)、ラトビア(3.1)、カザフスタン(3.0)、リトアニア(3.0)と、トップ7を旧ソ連の国が占める結果となりました。とはいえ今回の調査対象は81の国と地域、かつ離婚件数を把握できていないエリアが13あるため、68か国内のランキングではあります。(一方国連加盟国は193か国です)。日本の1.7という数字は39番目にあたり、真ん中より少し低め、という位置づけになるでしょうか。

 離婚件数を婚姻件数で割った便宜的な離婚率で見るとどうなるでしょうか。世界一はポルトガルで63.6%。「3組に1組は離婚する」と日本の現状を示すショッキングなフレーズを冒頭で使いましたが、ポルトガルはほぼ3組に2組が離婚する、というわけです。続いてルクセンブルク(62.5%)、キューバ(60.4%)、ウクライナ(57.4%)、スペイン(56.8%)が上位に入ります。ともにトップ5に入るのはウクライナだけで、他は意外にも違う国が並ぶことになりました。カトリックが中心のポルトガルやスペインは離婚が禁じられているかと思いきや、世界有数の離婚率でした。本音と建前ということなのでしょうか。こちらでの日本の順位は36位。離婚件数と同じく、真ん中よりやや低めということがわかりました。

日本の婚姻件数の順位は69か国中48位

 それぞれ国民性や文化もあるでしょうし、離婚率の高低を単純に良い悪いと評価することはできないのですが、日本の離婚率や離婚件数や昭和に比べて増えたといえど、国際的な観点では今のところ並みと言えそうです。日本では未婚率が上がっている=少子化につながる、と指摘されることもありますが、人口1000人あたりの婚姻件数だと69か国中48位。離婚に関するランキングよりやや下位となります。ただし、事実婚が多い国は婚姻件数にカウントされていないものの夫婦と同じようなライフスタイルをとっているカップルも多いため、こちらも厳密に見ていこうとすると比較は難しそうです。

 コロナ離婚なんて言葉がニュースで扱われることもあるように、アフターコロナ、ウィズコロナと言われる時代、世界の婚姻や離婚に関わる数値はこれから変わってくるのかもしれませんね。その時日本はどんな位置につけることになるでしょうか。

<参考サイト>
・平成 29 年(2017) 人口動態統計の年間推計
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei17/dl/2017suikei.pdf
・世界の統計2019 総務省統計局
https://www.stat.go.jp/data/sekai/pdf/2019al.pdf
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一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授