社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.06.07

触れるテレビ!?驚くべき5年後の放送技術

 2020年の東京オリンピックに向けて、TV放送技術はどんな進化をみせるのだろうか?そんな5年後の放送技術を垣間見ることのできるイベントが、東京都世田谷区にあるNHK放送技術研究所で開催された。

 例年「技研公開」として開催されているもので、今年は「究極のテレビへ、カウントダウン」というサブタイトルからも伺えるよう、オリンピックを意識した放映技術に注目が集まっていた。

多視点映像合成の進化

 オリンピック中継においては、臨場感とともにわかりやすい解説が求められる。今回は、ハイビジョンから4K、そして8Kと進む高解像度放送技術のロードマップもさることながら、複数のロボットカメラで同じ被写体を撮影し、多視点映像として出力する技術にスポーツ中継の可能性を感じた。

 このロボット撮影の技術によれば、アスリートのテクニカルな動きや姿勢に応じ、これまで以上に多視点での撮影が可能となり、立体的な映像合成が可能となる。また、CGと組み合わせた解説、ボールの軌道などを多視点映像と組み合わせて分かりやすいAR解説映像として出力できるのだ。

 カメラの小型化、ケーブル本数の削減、処理映像の高品質化、映像処理速度の向上によって、これまでに見たこともない映像が視聴できるようになる。

触れるテレビ

 その他、近未来の放送技術としてユニークなデバイスが「触ってみよう」のコーナーにあった。ディスプレイに表示されたCGを反射型空間映像投影板に映し、空間に結像した仮想物体に触れることにより、力覚のフィードバックと硬さを感じられる触覚デバイスである。

 実際のデモでは、高級魚のキンキを3D映像として投影。触覚デバイスとなる指輪部に指をはめ、キンキの輪郭や表面をなぞったりすることができる。押したりすると、確かに弾力を感じることができる。背びれ部のとげとげした質感から、オブジェの奥行きも感じられた。

 物体形状を認識し伝達するデバイスは少なくないが、硬さも含めたイメージ伝達が可能なところはかなりユニークである。

 NHK技研によると、この技術の目的は、視覚障害者に物の形などの情報を伝えられるようにしたいとのこと。映像と音声では伝えきれない物体の硬さや手触り感を伝えられる「触れるテレビ」がここ10年くらいのうちに実現しそうである。
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
物知りもいいけど知的な教養人も“あり”だと思います。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

『孟子』に学ぶ、リーダーが過酷な境遇に追い込まれる意味

徳と仏教の人生論(5)陰陽と東洋思想を知ることの意味

宇宙や人生の本質について考察を深めていく今回の講義。前回に続く、宇宙がもう1つの宇宙のような存在をつくりたくて人間を創造したという話は非常に興味深い。陰陽(陰と陽)の両面を理解し、自然の摂理に根差した東洋思想を深...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/11/07
3

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方

戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題

保守的な軍国化によって、内戦への機運が高まっているアメリカだが、MAGAと極左という対立図式は表面的なものにすぎない。その根本に横たわっているのは白人とユダヤ人という人種の対立であり、それはカーク暗殺事件によって露...
収録日:2025/09/24
追加日:2025/11/06
東秀敏
米国大統領制兼議会制研究所(CSPC)上級フェロー
4

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち

たかが「1」、されど「1」――今、数の意味が理解できない子どもがたくさんいるという。そもそも私たちは、「1」という概念を、いつ、どのように理解していったのか。あらためて考え出すと不思議な、言葉という抽象概念の習得プロ...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ

経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本

組織のまとめ役として、どのように接すれば部下やメンバーの成長をサポートできるか。多くの人が直面するその課題に対して、「経験学習」に着目したアプローチが有効だと松尾氏はいう。では経験学習とは何か。個人、そして集団...
収録日:2025/06/27
追加日:2025/09/10
松尾睦
青山学院大学 経営学部経営学科 教授