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DATE/ 2020.11.27

なぜ「猫」は集会を開くのか?

「猫の集会」をご存知ですか?

 駐車場や神社の境内にたくさんの猫が集まる現象を、「猫の集会」といいます。ごく日常的な光景なので、見かけたことがある方も多いでしょう。

 この集会は日本だけでなく、世界中で見られるもの。1973年には、「猫の帝王」と呼ばれたドイツの動物学者パウル・ライハウゼン氏がレポートを発表しています。これによると、猫の集会には主に次のような特徴があるとされます。

・オスもメスもいる
・お互いの距離は約2メートルから約4メートル
・基本的に座っているだけ
・敵対行動をとることはほぼない

 日本でも動物学者の山根明弘氏が1990年代はじめに猫の集会のレポートを発表しており、「何時間もそのままでいて、交流はしない」など、ライハウゼン氏の報告との共通点が見られます。さらに猫の頭数は10から20匹程度で、お互いの距離は50センチメートルから1メートル程度としており、一定の距離を置いている点もライハウゼン氏との共通点といえるでしょう。

 また、集会に参加している猫は野良猫ばかりではありません。外出を許されている飼い猫も参加しており、同じ地域に住む猫なら誰でも参加できるようです。

いつ、どこで開かれているの?

 山根氏の観察では、猫の集会は「無風状態の静かな夜」に「少し広い場所」で開かれていたともレポートされています。どうやら時期や時間帯や場所にも特徴があるようですね。それはどのようなものでしょうか。

 まず時期は夏から秋、時間帯は夕方以降が多いようです。繁殖時期である春の盛りや、寒さが厳しい冬を避けるのは妥当でしょう。もちろん夏も暑さが厳しいですが、猫は西アジアや北アフリカの砂漠地帯が原産地といわれるため、どちらかといえば暑さより寒さが苦手です。さらに猫は夜行性のため、日が沈んで暑さが和らぐ夕方以降なら行動しやすくなります。夏から秋の夕方以降は、猫が活動しやすいので集会に適しているのですね。

 そして場所は、冒頭でお話しした駐車場や神社のほか、公園の一角や海岸などが選ばれるようです。このような開けた場所は、同じ地域の猫が共有している縄張りと考えられます。猫には他の猫が入ることを許さない「ホームテリトリー」と、他の猫と共有する「ハンティングテリトリー」というふたつの縄張りの概念があり、このうちのハンティングテリトリーが重なっている場所を集会の“会場”にしているというわけです。

猫が集会を開く理由は?

 それでは猫たちはなぜこのような集会を開くのでしょうか。実は、その理由はよくわかっていません。しかしいくつかの推論があるのでご紹介しましょう。

 メンバーの確認:同じ地域にどんな猫が住んでいるのかを、お互いに確認しているのではないかという説です。集会に参加している猫にはオスもメスもいるだけでなく、老猫も子猫も、野良猫も飼い猫もいますが、猫の集会はどんな相手にも敵対行動を取らないことが特徴のひとつ。ここでメンバーを覚えて、無用な争いを避けるようにしている可能性はありますよね。

 婚活・合コン:繁殖時期のパートナー探しの場なのではないかという説です。確かに、地域の猫が一堂に会しているときに探せれば効率的ですよね。人間でいうならお見合いとか、もっとカジュアルな出会いの場としての合コンのようなものなのかもしれません。

 情報交換:食料を得られる場所や危険な場所の情報を交換、共有しているのではないかという説です。特に野良猫は食料の確保が重要な日課なので、地域の仲間から情報を得られるのはありがたいでしょう。また車の交通量が多い道路の情報などは、子育て中の母猫に必要なはずですよね。

 このほかにも夕涼みをしているという説や、特に理由はなくなんとなく集まっているという説もありますが、いくつかの説が重なりあっているのかもしれません。人間にはわからないことも多い猫の集会ですが、猫たちがのんびりと過ごしているところを見ると、居心地のいい集まりであることは間違いないようですね。

<参考サイト>
・ペトこと 猫が集まっているのはなぜ? 猫の集会について解説
https://petokoto.com/articles/2629
・sippo 「猫の集会」何してるの? 不思議な夜を過ごす猫たちの秘密
https://sippo.asahi.com/article/11928271
・ペットスマイルニュース 猫の集会はなぜ開催される?いつどこで参加できる?人間が招待されることも?
http://psnews.jp/cat/p/40318/
・子猫のへや 猫の集会を開く~不思議な行動に現れる猫の本能や習性を知る
https://www.konekono-heya.com/syuusei/gathering.html

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