社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2020.11.29

自販機横のBOXは「ゴミ箱」ではありません!

 街中でペットボトルや缶以外のゴミが出た場合、あなたはどうしますか?次の三択から選んでみてください。

 1)ゴミ箱に捨てる、2)家に持ち帰る、3)自販機横のBOXに捨てる――。

 状況に応じた選択と行動が取られると思いますが、実はこのうちの一つ「3)自販機横のBOXに捨てる」は、明らかに間違った選択といえます。なぜなら、自販機横のBOXは「ゴミ箱」ではないからです。

 では自販機横のBOXは、いったい何のためのBOXなのでしょうか。

自販機横のBOXは「リサイクルボックス」です!

 実は、自販機横のBOXは、リサイクルを目的に自動販売機で購入された清涼飲料の空容器を回収するために設置されているBOX、つまり「リサイクルボックス」です。

 しかし、2020年10月に一般社団法人全国清涼飲料連合会(略称:全清飲)が発表した「リサイクルボックスに関する消費者意識調査2020」(以下「調査」)によると、「自動販売機の横にあるボックスはゴミ箱ではなく、飲料容器専用のリサイクルボックスであることを知っていたか」という問いに対する回答は、「知っていた」57.6%、「知らなかった」42.4%という結果が出ています(全回答者1000名)。

 つまり、約4割強に、設置理由が正しく伝わっていないという現状が見えてきました。

 さらに「調査」からは、自販機横のBOXを「リサイクルボックス」ではなく「ゴミ箱」ととらえている人も多数いるのではないかということもうかがえてきました。

 「ゴミ箱」ととらえている人も一定数いるという可能性は、「調査」の「自動販売機の横にあるボックスにペットボトル・缶・ビン以外のゴミを入れたことがある人」という質問項目に対する回答から考察することができます。

 全回答者1000名中106名が「ゴミを入れた理由」という問いへの回答を行い、そのうちの最多の回答は「捨てる場所がなかった」となっています。

 しかし、その他の回答「(プラスチックや飲料の容器であれば)捨てても問題ないと思った」「(すでに他のゴミも入っていて)分別されていなかった」といった、「リサイクルボックス」としての正しい認知が行われていない可能性がうかがえる回答が挙げられています。

街中のゴミ箱減少・テイクアウト飲料の増加

 1995年に引き起こされた地下鉄サリン事件以降、日本では公共の場でゴミ箱の設置が減少していきます。近年ではさらなるテロ防止の観点などからも、すでにあったゴミ箱も街中から撤去されるようになっていきました。

 そのうえ最近では、コンビニエンスストアが店先に設置していたゴミ箱を店内に移動させたことも相まって、街中でゴミ箱を目にすることが少なくなっています。

 一方、食べ歩きブームやテイクアウト文化がより広く受け入れられるようになります。特に、プラスチックカップで提供されるコーヒーやタピオカドリンクなど、飲料のテイクアウトが拡充しています。

 街中のゴミ箱減少とテイクアウト(特に飲料)の増加といった二大要因によって、現在、街中で発生するゴミとゴミ箱の需要と供給のバランスが崩れているといえるのかもしれません。

ゴミはゴミ箱に。でもその前に・・・

 ただし、いくら街中のゴミ箱が減って不便になってきているからといって、そもそも論としてゴミは各自で正しく処分することが基本です。

 また、たとえ街中にゴミ箱があったとしても、それはあくまでも他者の善意、企業や行政サービスの一環であり、そのための善意や労力、資本や税などが投入されています。

 それはリサイクルボックスあっても同様です。「混ぜればゴミ・分ければ資源」とも言われるように、正しい認識と活用によって、市民としての良識をもった行動のうえで、善意や資源を多いに活用することが求められています。

<参考サイト>
・20.10.20 リサイクルボックスに関する消費者意識調査2020
http://www.j-sda.or.jp/ippan/news_view.php?kind=1&id=303
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
より深い大人の教養が身に付く 『テンミニッツTV』 をオススメします。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか

葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化

浮世絵を中心に日本画においてさまざまな絵画表現の礎を築いた葛飾北斎。『富嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」が特に有名だが、それを描いた70代に至るまでの変遷が実に興味深い。北斎とその娘・応為の作品そして彼らの生涯を深...
収録日:2025/10/29
追加日:2025/12/05
堀口茉純
歴史作家 江戸風俗研究家
2

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは

熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために

「腸脳相関」という言葉がある。健康には腸内環境が大切といわれるが、腸で重要な役割をしている物質が脳にも存在することが分かっている。「バランスの良い食事」が健康ひいては睡眠にも大切なのは、このためだ。人生は寝るた...
収録日:2025/03/05
追加日:2025/12/14
西野精治
スタンフォード大学医学部精神科教授
3

平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?

平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?

平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想

平和は、いかにすれば実現できるのか――古今東西さまざまに議論されてきた。リアリズム、強力な世界政府、国家連合・連邦制、国連主義……。さまざまな構想が生み出されてきたが、ここで考えなければならないのは「平和」だけで良...
収録日:2025/08/02
追加日:2025/12/08
川出良枝
東京大学名誉教授 放送大学教養学部教授
4

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制

「バイアスがかかる」と聞くと、つい「ないほうが望ましい」という印象を抱いてしまうが、実は人間が生きていく上でバイアスは必要不可欠な存在である。それを今井氏は「マイワールドバイアス」と呼んでいるが、いったいどうい...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/09
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く

自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く

禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅

大学院を中退して禅の道に進み、アメリカ東海岸で18年間禅堂を開いた藤田一照師に、禅と仏教の心について話を聞いていく。アメリカの禅にはすでに百年近い歴史があり、最初に鈴木大拙が伝えたといわれている。その後、一時はカ...
収録日:2024/08/09
追加日:2025/01/13
藤田一照
曹洞宗僧侶