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DATE/ 2024.09.14

自己中心的な性格とは?特徴や直し方

 自己中心的な性格とは、自分自身の視点を中心にして周囲の世界を見るような性格を意味します。

 近年では「自己チュー」などともいわれ、一般的には問題があるとはいえ、あくまで個人的な性格を表す特徴の一つとされている側面も多いように思われますが、「自己中心」さらにいえば「自己中心性」は、心理学者ピアジェの提唱した心理学用語であり、幼児の発達段階の思考様式の特徴を表す概念です。

 つまり、自己中心的な性格を心理学の視点でみると、個性のような特性ではなく、単に、発達段階の課題を達成できていない状態にある人、つまり脱中心化ができていない状態(自己中心的思考から脱し、他者の考えを考慮に入れる視点を獲得すること)であると考えられます。

 そのうえで逆説的に考えれば、発達課題を適切に達成したり、特性上どうしても達成できない場合は適切に捉えたりすることができれば、自己中心的な性格は直したり改善したりできるといえます。

 そこで今回は、自己中心的な性格の特徴を挙げつつ、直し方としての自己コントロール方法を取り上げてみたいと思います。

自己中心的な性格を測る、セルフチェック

 では早速、自己中心的な性格の特徴を挙げつつ、セルフチェックしてみましょう。次の1)~9)のうち、当てはまる点や気になる点はありますか。ご自身の性格を振り返ってみてください。

1)自分は「頑固」な性格だと思う
・たとえ良い変化であっても、そもそも変化に対応することが苦手
・自分の狭量な価値観に頑なに固執する傾向にある

2)自分は「好き嫌いが激しい」性格だと思う
・食や生活様式だけでなく趣味や人間関係など、強い好みやこだわりがある
・自己の好き嫌いのこだわりを正当化したいために、他者の好きを貶す

3)自分は「反抗的で不服従」な性格だと思う
・合理、非合理にかかわらず、わざと人と対立するような言動を取ってしまう
・自己の理論の破綻や自分に非や誤りがあっても、他者の意見には従えない

4)自分は「あきっぽい」性格だと思う
・たとえ自分が興味をもってやり始めたことでも、長続きさせることができない
・熱しやすくすぐに夢中になるが、それ以上に移り気で冷めやすい

5)自分は「仕切りたがり」な性格だと思う
・自分がリーダーシップを取らなければいけないと思い込んでいる
・求められる状況を把握できずに、実力不足でも仕切りたがる

6)自分は「一番にこだわる」性格だと思う
・内実が伴わなくても勝利にこだわる
・一番であること、一番に扱われることに固執してしまう

7)自分は「他罰的」な性格だと思う
・自分の欲求不満の原因を外部に求める傾向にある
・「悪いのは常に他者」の精神を押し通そうとしてしまう

8)自分は「場面緘黙(かんもく)」な性格だと思う
・普段は饒舌でも、嫌いな相手やめんどくさい場面では無口になる
・自分の都合で話すことはいとわないが、都合が悪くなると押し黙る

9)自分は「素直になれない」性格だと思う
・たとえ自己にとって良いことであっても、ありのままに物事を受け止められない
・他者の思いやりからの言動であっても、ひねくれた見方をしてしまう

脱・自己中心のための、自己コントロール

 いかがでしたでしょうか。ではどうすれば、自己中心的な性格をコントロールできるようになるのでしょうか。直したい人、改善を目指したい人は、次の1)~8)の自己コントロールを心がけてみてください。

1)「所有」のコントロール
 自己と他者を区別するため最もわかりやすい客観的な目安は、「所有感情」です。物を通して自分の存在を感じたり確認したりすることは誰しもありますが、度が過ぎると危険です。「どうぞ」の精神をはぐくむと同時に、そもそも自分の所有権や意見がおよぶ領域であるかを見直してみましょう。

2)「勝敗」のコントロール
 勝利を目指すことや敗北を悔しがることは、自己成長だけでなく、個人が社会的な成長をするためにも、基本となるポジティブで正常な感情です。しかし、実力や能力の伴わない勝利への過信は、自己の成長につながらないだけでなく、集団内での自己の立場すらあやうくします。

3)「良悪」のコントロール
 良いことと悪いことの内部基準をもつことは大切ですが、相対的な良悪の基準と照らし合わせること、つまり社会的な慣習やルール、さらには枠組みと調整していくことも肝要です。決して妥協ということではなく、自分の良識と社会の良識を照らし合わせて改良していくことが求められます。

4)「道徳」のコントロール
 善悪の道徳基準を持つことはきわめて重要です。しかし、多様性の時代、万人に共通する正義の基準や道徳観のあり方も、多様となっています。誰にとっても重要で大切であるからこそ、道徳感にも適切なアップデートが不可欠であり、さらには他者への寛容性が求められています。

5)「嗜好」のコントロール
 自分の好みを自覚し好きと嫌いを認識することは、成長することの楽しみであり、ある意味でたしなみでもありますが、だからといって好みを押し通すことはできません。自分に好みがあるように、相手の好みへの思いやる最低限のマナーが始まりです。

6)「興味」のコントロール
 好奇心を高め、志向性を発揮することは、人生をより良くしてくれます。興味をもてることに出合えた人は幸せ者です。反面、興味の持てないつまらないこと、けれども義務や責務としてやらなくてはいけないこともあります。そして、後者の時の態度こそ、自己の負の側面が出やすいものです。

7)「規律」のコントロール
 社会マナーのような良し悪しや、道徳のような善悪だけでなく、社会やコミュニティには様々な規律があります。自分が嫌悪感情で規律を破ることは論外として、たとえ悪習や非合理だからといって強引に規律を改変するような行動は、結果として秩序を乱しかねません。

8)「役割」のコントロール
 人間は徹底的に社会的な動物であるため、誰しもどこかのコミュニティに所属することと、そしてコミュニティ内での役割を果たすことが求められます。役割を果たす際は無理をせず、さらには実力不足を強引な自己主張でごまかすようなこともせずに、他者と協調することが求められます。

連続体の中の、多様で自由な自己中心性

 以上、自己中心のネガティブな側面をフォーカスしてきましたが、実は大前提として、自己中心性が確立していることは、とても素晴らしいことです。まずはしっかりと自己中心を確立し、次のステップにすすみましょう。

9)「尊重」のコントロール
 次のステップとは、相手にも自分と同じように素晴らしい自己があることを尊重する、他者尊重です。他者尊重ができるようになれば、自己以外の視点を持てる、つまりたくさんの中心性をコントロールできるようになります。

 ところで、冒頭で心理学用語としての自己中心性を紹介しました。心理学には他にも、自己の特性を明確に線引きすることはできないとした、「スペクトラム(連続体)」(意見・現象・症状などがあいまいな境界をもちながら連続している状態)という捉え方があります。

 そして、わざわざ心理学を持ち出さなくとも、「自分のこともよくわからない」という感覚を、多くの人が持ち合わせ、得も徳も納得もできないような非合理で不安的な行動を、普段からとっているのではないでしょうか。

 自己中心的な性格のよりどころとなる自己の他者との境界も、つきつめればその程度のあいまいさでしかないのかもしれません。だからこそ、視点という名の自己の中心性を自由に多様に動かすことができれば、まだ出合えていないより良い自己に、出合える可能性も増えてくるように思えます。

<参考文献>
・『教育心理学の理論と実際』(河村茂雄・武蔵由佳著、図書文化社)
・『「わがまま」といわれる子どもたち』(湯汲英史・石崎朝世・一松麻実子著、鈴木出版)
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