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『賢い子はスマホで何をしているのか』に学ぶICT教育の今
何歳から子どもにスマホやタブレットを与えたらいいのか。また、子どもにそうしたデジタルデバイスを本当に与えてもいいのか。
スマホやタブレットがごくごく身近になり、プログラミング教育が学校で必修化され、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあってオンライン授業が進んでいる今、家庭でどのようにICT教育に取り組むべきか、頭を抱えている親御さんも少なくないでしょう。今回はそんな親御さん必読の内容です。なぜなら、注目の新書『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)をもとに、家庭におけるデジタルデバイスとの付き合い方、プログラミング教育の意義についてお伝えするからです。
ここで、著者である石戸奈々子さんのプロフィールを簡単にご紹介します。石戸さんは、東京大学工学部卒業後、世界中から研究者の逸材が集まる米国マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ客員研究員を経て、2002年に遊びと学びのヒミツ基地「CANVAS」を設立。「CANVAS」は、子ども向け創造・表現活動を推進するNPOで、これまでのべ3000回のワークショップを開催し、50万人のこどもたちにワークショップを届けてきました。現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授も務められている石戸さん。一児のママとしても奮闘中です。
それなら、どうするべきか。「全否定」などする必要はないはずです。デジタルデバイスとの付き合い方、付き合うための「方法」を熟慮すべきなのです。そのとき、注意すべきことは「こうあらねばならない」という考えにしばられないようにすることです。
その指針として石戸さんは、「幼稚園ぐらいまでは、『へえー。面白い!』と興味をもってくれれば、それで十分でしょう。『なぜ?』と考え始める、きっかけになればいい」と述べています。ちなみに、石戸さんはお子さんに0歳の時からタブレットを与え、時間を制限したことは一切ないそうです。時間を制限しないほうが、子どもがスマホなどにしがみつくことが少ない印象だということで、厳しく制限されるほうが逆にスマホに固執するのでは、という意見もあるそうです。
ただし、子どもに与えるデジタルデバイスの中身は、石戸さんが選んだ学習アプリばかりで、課金の制限を行うなどフィリタリングも行っているとか。つまり、そういう工夫があるからこその与え方なので、決して無制限に子どもに与えているわけではないということです。
本書では、そのための創造ツールとして「プログラミング」、そのための教育として「プログラミング教育」を挙げて解説しています。プログラミングというと、パソコンの画面に暗号のような文字が並んでいるものを想像する方も多いかもしれませんが、そうしたいわゆるプログラミング言語を使わないプログラミングもありますし、「アンプラグドプログラミング」といってコンピュータすら使わないプログラミングもあります。また、プログラミング教育といっても、何もプログラマーを育成するための教育というわけではありません。
そうは言われても、まだイメージがわかない方もおられるでしょう。そういうときは「実際にやってみる」ことです。実際にその中身にふれてみると、どんなものかがよくわかります。ここで、石戸さんおすすめのプログラミングの学習アプリケーションを紹介します。
まずは石戸さんも所属していたMITが開発し、全世界に七千万人もの登録者がいるという「スクラッチ」。最大の特徴はコミュニティ機能が充実している点です。自分の作品を世界中の人に見てもらうことができるとのことで、幼児向けには「スクラッチジュニア」(5歳以上が対象)があります。また、子ども向けのアプリとしては、日本で開発された「ビスケット」と「スプリンギン」もあります。「ビスケット」の開発者・原田廉徳さんは「粘土みたいなプログラミング言語を作りたかった」と語っており、より直感的に操作できるようになっています。「スプリンギン」も同じく直感的に操作できることが特徴です。
「STEAM教育」とは、サイエンス(Science)、テクノンロジー(Technology)、工学(Engineering)。アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念のことです。元は「STEM教育」といわれていたのですが、石戸さんがMITメディアラボに所属していたときの指導教官だったジョン・マエダ教授が2013年にSTEMにA(アート)を付け足して「STEAM教育」として推奨し始めました。
「アート」を付け足したのは、科学の論理性だけでなく、人間的感性も重要なのだという提言です。アートというと「芸術」を連想するかもしれませんが、それ以上に「リベラルアーツ」(教養)、つまり「STEM」の4つを統合するものとしての「アート」に期待しているのだそうです。
また、アートには「作る」というニュアンスも含まれているのではないかと石戸さんはおっしゃっています。「作りながら学ぶ」ということです。知識は机の上で覚えるだけではなかなか定着しないもの。「実際にやってみる」ことで新たなアイデアがわいてくることもあるでしょう。
「読み・書き・そろばん」という言葉がありますが、現代では「そろばん」に当たる計算はコンピュータが代わりにやってくれます。そのコンピュータを動かすために必要なのが「プログラミング」です。考えてみればすぐにわかることですが、新しい商品やサービスを開発するときにコンピュータが関与しないものはほとんどありません。石戸さんによると、「読み・書き・そろばん」ではなく、「読み・書き・プログラミング」の時代に変わったということです。
教育というと、上から目線で教えるという印象を持つかもしれませんが、これからの教育は、子どもと大人が一緒に夢中になって「学習」することです。いろいろと試してみてください。
スマホやタブレットがごくごく身近になり、プログラミング教育が学校で必修化され、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあってオンライン授業が進んでいる今、家庭でどのようにICT教育に取り組むべきか、頭を抱えている親御さんも少なくないでしょう。今回はそんな親御さん必読の内容です。なぜなら、注目の新書『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)をもとに、家庭におけるデジタルデバイスとの付き合い方、プログラミング教育の意義についてお伝えするからです。
ここで、著者である石戸奈々子さんのプロフィールを簡単にご紹介します。石戸さんは、東京大学工学部卒業後、世界中から研究者の逸材が集まる米国マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ客員研究員を経て、2002年に遊びと学びのヒミツ基地「CANVAS」を設立。「CANVAS」は、子ども向け創造・表現活動を推進するNPOで、これまでのべ3000回のワークショップを開催し、50万人のこどもたちにワークショップを届けてきました。現在は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授も務められている石戸さん。一児のママとしても奮闘中です。
もはやデジタルデバイスを手放すことはできない
さて最近、『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン著、新潮新書)をはじめ、スマホのリスクを伝える本や言説を多く目にするようになりました。はたして本当に「スマホは危ない」のでしょうか。なによりも石戸さんが疑問を感じているのは、「リスクがあるから全否定」という考え方です。これはデジタルデバイスの使用法にしても、プログラミング教育にしても同じこと。IoT化が進んでいる現在の社会のなかで、私たちはもはやデジタルデバイスを手放すことはできません。それなら、どうするべきか。「全否定」などする必要はないはずです。デジタルデバイスとの付き合い方、付き合うための「方法」を熟慮すべきなのです。そのとき、注意すべきことは「こうあらねばならない」という考えにしばられないようにすることです。
スマホは何歳から持たせればいい?
では、何歳から子どもにスマホを持たせればいいのでしょうか。石戸さんによると、そこに答えはないとのこと。石戸さんは、子どもの成熟具合や家庭環境などによって、それぞれの家庭でそれぞれの答えを持つべきだと述べています。ということは、それらを保護者が考えることからすでに教育は始まっているのかもしれません。その指針として石戸さんは、「幼稚園ぐらいまでは、『へえー。面白い!』と興味をもってくれれば、それで十分でしょう。『なぜ?』と考え始める、きっかけになればいい」と述べています。ちなみに、石戸さんはお子さんに0歳の時からタブレットを与え、時間を制限したことは一切ないそうです。時間を制限しないほうが、子どもがスマホなどにしがみつくことが少ない印象だということで、厳しく制限されるほうが逆にスマホに固執するのでは、という意見もあるそうです。
ただし、子どもに与えるデジタルデバイスの中身は、石戸さんが選んだ学習アプリばかりで、課金の制限を行うなどフィリタリングも行っているとか。つまり、そういう工夫があるからこその与え方なので、決して無制限に子どもに与えているわけではないということです。
学び続けるための創造ツール「プログラミング」とおすすめアプリ
ところで、かつては暗記重視の教育、つまり暗記に価値のある時代でした。しかし、科学技術が急激に進歩し、インターネットで検索すればどんな情報でも簡単に手に入る今、重要なのは、何を覚えたか、何を学んだか以上に、「学び方を知っているかどうか」だと話す石戸さん。そして、これから求められるのは、社会の変化に合わせて「学び続ける能力」だというのです。これは子どもだけのことではなく、大人も同じです。本書では、そのための創造ツールとして「プログラミング」、そのための教育として「プログラミング教育」を挙げて解説しています。プログラミングというと、パソコンの画面に暗号のような文字が並んでいるものを想像する方も多いかもしれませんが、そうしたいわゆるプログラミング言語を使わないプログラミングもありますし、「アンプラグドプログラミング」といってコンピュータすら使わないプログラミングもあります。また、プログラミング教育といっても、何もプログラマーを育成するための教育というわけではありません。
そうは言われても、まだイメージがわかない方もおられるでしょう。そういうときは「実際にやってみる」ことです。実際にその中身にふれてみると、どんなものかがよくわかります。ここで、石戸さんおすすめのプログラミングの学習アプリケーションを紹介します。
まずは石戸さんも所属していたMITが開発し、全世界に七千万人もの登録者がいるという「スクラッチ」。最大の特徴はコミュニティ機能が充実している点です。自分の作品を世界中の人に見てもらうことができるとのことで、幼児向けには「スクラッチジュニア」(5歳以上が対象)があります。また、子ども向けのアプリとしては、日本で開発された「ビスケット」と「スプリンギン」もあります。「ビスケット」の開発者・原田廉徳さんは「粘土みたいなプログラミング言語を作りたかった」と語っており、より直感的に操作できるようになっています。「スプリンギン」も同じく直感的に操作できることが特徴です。
STEAM教育~子どもと大人が一緒に「作りながら学ぶ」
最後に、プログラミング教育やデジタル教育とともに、最近よく見かけるようになった「STEAM教育」について少し触れておきたいと思います。「STEAM教育」とは、サイエンス(Science)、テクノンロジー(Technology)、工学(Engineering)。アート(Art)、数学(Mathematics)の5つの領域を対象とした理数教育に創造性教育を加えた教育理念のことです。元は「STEM教育」といわれていたのですが、石戸さんがMITメディアラボに所属していたときの指導教官だったジョン・マエダ教授が2013年にSTEMにA(アート)を付け足して「STEAM教育」として推奨し始めました。
「アート」を付け足したのは、科学の論理性だけでなく、人間的感性も重要なのだという提言です。アートというと「芸術」を連想するかもしれませんが、それ以上に「リベラルアーツ」(教養)、つまり「STEM」の4つを統合するものとしての「アート」に期待しているのだそうです。
また、アートには「作る」というニュアンスも含まれているのではないかと石戸さんはおっしゃっています。「作りながら学ぶ」ということです。知識は机の上で覚えるだけではなかなか定着しないもの。「実際にやってみる」ことで新たなアイデアがわいてくることもあるでしょう。
「読み・書き・そろばん」という言葉がありますが、現代では「そろばん」に当たる計算はコンピュータが代わりにやってくれます。そのコンピュータを動かすために必要なのが「プログラミング」です。考えてみればすぐにわかることですが、新しい商品やサービスを開発するときにコンピュータが関与しないものはほとんどありません。石戸さんによると、「読み・書き・そろばん」ではなく、「読み・書き・プログラミング」の時代に変わったということです。
教育というと、上から目線で教えるという印象を持つかもしれませんが、これからの教育は、子どもと大人が一緒に夢中になって「学習」することです。いろいろと試してみてください。
<参考文献>
『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)
https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/26458
<参考サイト>
CANVAS | 遊びと学びのヒミツ基地
https://canvas.ws/
『賢い子はスマホで何をしているのか』(石戸奈々子著、日経プレミアシリーズ)
https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/26458
<参考サイト>
CANVAS | 遊びと学びのヒミツ基地
https://canvas.ws/
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