社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.02.01

自分の1時間の価値は何円なのか?

 時計をはじめ情報機器や宝飾品などの製造・販売で知られるセイコーグループは、毎年6月10日の「時の記念日」に、生活者に時間についての意識や実態を探る調査「セイコー時間白書」を発表しています。

 2022年版となる「セイコー時間白書2022」でも、自分の1時間の価格(=時価)を値付けした結果が発表されました。

【「セイコー時間白書2022」自分の1時間の価格】
仕事や家事・勉強をするオンタイム:1時間4,983円※前年(4,253円)より730円上昇。
プライベートなオフタイム:1時間13,639円※前年(12,992円)より647円上昇。

 高値更新された以上の結果からは、自分の1時間の価格(=時価)、つまりは「時間価値」が高まっていることが見えてきます。また、オンタイムとオフタイムの差が8,710円と約2.7倍もオフタイムの方が高いことからは、「時間価値」が相対的であることがうかがえます。

相対的な「時間価値」の4カテゴライズ

 相対的かつ、時間とともに価値が高まりつつあることがうかがえる「時間価値」をより具体的に示した例があります。

 証券アナリストや経営コンサルタントとして活躍し、コンサルとM&A助言を主力とするフロンティア・マネジメントの代表取締役を務める松岡真宏氏は、『時間資本主義の時代』で「時間価値」を考えるためのツールとして、現代の職業人を縦軸の「収入」と横軸の「時間の2軸で分類した【時間とお金と人材のマトリクス】を示し、4つにカテゴライズしています。

【時間とお金と人材のマトリクス】
・縦軸「収入」:上に行くほど「マネーリッチ(高収入)」⇔下に行くほど「マネープア(定収入)」
・横軸「時間」:右に行くほど「時間リッチ」⇔左に行くほど「時間プア」
・左上から時計回りに(1)~(4)にカテゴライズ

(1)伝統的エリート:お金はあるけど時間がない!
給料は高いが労働時間が長い傾向。大企業の管理職やコンサルティングファーム、官僚などが該当。

(2)クリエイティブ・クラス:お金も時間もある!
特に「時間価値」が高い人たち。有名クリエイターやベンチャー企業経営者などが該当。

(3)終わりなき日常を生き続ける人:お金はないが時間はたっぷり!
低収入でも自分なりにゆったりした生活を送っている。フリーターなどが該当。

(4)まじめ貧乏:お金も時間もない!
特に「時間価値」が低い人たち。労働時間が長いわりに給料が低い傾向。高付加価値でないサービス業従事者や非正規雇用者などが該当。

 「時間価値」の4カテゴライズには、「時間価値」の高め方や「時間価値」との付き合い方のヒントがあります。

自分の1時間の価値に納得できるのか?

 大量コンテンツ社会となった現代では、費やした費用に対する効果を表す「コスパ(コストパフォーマンス)」の追求から、費やした時間に対する満足度を表す「タイパ(タイムパフォーマンス)」が注目されるようになってきました。

 並行して、テクノロジーの進化によって「すきま時間」も有効活用できるツールが普及したことからも、以前に比べて相対的に「時間の価値」そのものが高まっているでしょう。

 ただし、時間は有限であり、誰にとっても1時間という物理的な時間は絶対です。振り返って自分の1時間の価値に値段をつけたときに自分が納得できる時間を過ごすことが、ますます肝要でありながらも難しい時代になっているように思います。

<参考文献・参考サイト>
・『時間資本主義の時代』(松岡真宏著、日本経済新聞出版社)
・セイコー時間白書2022
https://www.seiko.co.jp/timewhitepaper/2022/
・caroa times 時間価値とは|変わりゆく時間価値と「働き方・生き方」の関係を考える
https://caroa.jp/times/articles/Z988V_H2
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論

東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ

東京大学大学院人文社会系研究科教授・一ノ瀬正樹氏が、海外でも有名な「ハチ公」の逸話を例に、人と犬の関係について考察する。第一回目は、ハチの飼い主・上野英三郎博士について触れ、東大とハチ公の結びつきや、東大駒場キ...
収録日:2017/04/04
追加日:2017/06/13
一ノ瀬正樹
東京大学名誉教授 武蔵野大学人間科学部人間科学科教授
2

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

変人募集中…0から1を生める人、発掘する人、育てる人

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(4)エンタメで一番重要なのは「人」

エンタメビジネスにおいて一番大切なのは「人」である。さらに、「0から1を生める」クリエイターが必須であることはいうまでもないが、そのような人材だけではエンタテインメントビジネスは成立しない。時として異能で多様なク...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/10/28
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO
3

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

正直とは何か――絶対的存在との信頼関係の根幹にあるもの

徳と仏教の人生論(2)和合の至りと正直

『書経』を研究する中で発見した真理について理解を深めていく今回。徳は天をも感動させる力を持ち、真の和合は神を動かす。そして、宇宙は人間のように、また人間も宇宙のように構成されており、その根底には「正直」がある。...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/25
4

5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現

5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現

産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題

温暖化やエネルギー問題など、地球環境の持続可能性をめぐる議論はその緊急性が増している。そのような状況で日本はどのような社会を目指すべきなのか。モノの所有ではなく幸せを求める、持続可能な「プラチナ社会」の構想につ...
収録日:2025/04/21
追加日:2025/10/22
小宮山宏
東京大学第28代総長 株式会社三菱総合研究所 理事長 テンミニッツ・アカデミー座長
5

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界

習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?

「習近平中国」「習近平時代」における中国内政の特徴を見る上では、それ以前との比較が欠かせない。「中国は、毛沢東により立ち上がり、鄧小平により豊かになり、そして習近平により強くなる」という彼自身の言葉通りの路線が...
収録日:2025/07/01
追加日:2025/09/25
垂秀夫
元日本国駐中華人民共和国特命全権大使