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DATE/ 2023.04.26

貯金がないのは危険?起こりうるリスクとは

 物価高の影響もあり、今は貯蓄するお金を捻出するのはなかなか大変な時代かもしれません。それでも私たちの生活は続きます。少しでも貯蓄を意識しておくと、未来は少し楽になるかもしれません。ここでは貯金がないとどういうリスクがあるのか、また貯蓄するにはなにからはじめればいいのかという点について見ておきましょう。

二人以上の世帯で貯蓄ゼロ23.1%

 「家計の金融行動に関する世論調査」では、世帯ごとの貯蓄額などについてのデータが集計されています。この2022年(令和4年)版で貯蓄額(金融資産を保有していない世帯を含む)をみてみると、二人以上の世帯での全国平均は1,291万円、中央値は400万円、単身世帯で見ると全国平均は871万円、中央値は100万円となっています。中央値とは小さい順に並べた時に真ん中に来る数値です。平均値だと、極端に多いか少ない値がある場合にあまり実態を反映しない数値になります。こういった時には中央値の方がより現実的です。

 同調査でもう少し明確なデータを見ると、貯蓄額貯蓄ゼロの世帯は二人以上の世帯で23.1%、単身世帯34.5%となっています。つまり、二人以上の世帯のうちおおよそ4世帯から5世帯に1世帯が貯蓄ゼロ、単身世帯では3世帯に1世帯が貯蓄ゼロです。また前年(2021年・令和3年)の調査では二人以上の世帯で22.0%、単身世帯で33.2%だったので、二人以上の世帯で1.1%増、単身世帯では1.3%増となっています。

保険があった場合でも一時金が必要

 病気や事故、失業といった状況は不意に訪れます。仕事ができなかった期間に預貯金がなければ、生活は立ち行かなくなります。もちろん病気や事故の場合、保険に入っていればある程度の保障があります。しかし多くの場合、保険はすぐには支給されません。一般的には申請書を出したのちに経緯や状況等さまざまな確認がなされます。保険の種類や保険会社による部分もあるとは思われますが、この間20日から1ヶ月程度の時間がかかることもあるようです。

 また失業した場合、雇用保険に加入していたとしても「自己都合退職」の場合、2ヶ月(5年間で3回目以降は3ヶ月)は給付を受けることができません。また健康保険加入者には傷病手当制度というものもあります。これは病気や怪我の療養のために仕事を休んだ場合、4日目以降の収入分に関して給与の3分の2が保証される制度です。ただしこれも後日請求するものです。もっといえば国民健康保険の場合(つまりフリーランスで仕事をしている場合)、傷病手当金の対象外です。

目標を明確にすることが大事

 また結婚、出産、引っ越し、家族の介護といったライフイベントでは大きな出費を伴います。こういった状況になったとき、すぐにお金を用意することができない場合、たいへん不自由で苦しい思いをすることは想像に難くありません。また生きていれば誰しも老後を迎えます。お金は突然必要になって消えていくことはあっても、突然降ってくることはまずありません。この時、足りないお金を借金で賄うと利息を払う必要が生まれます。こうなると状況がさらに悪化するリスクを背負うことになります。

 ではどういう点を意識すれば、無理なく貯蓄を始められるのでしょうか。まずは貯蓄する理由を明確にしましょう。はじめから「老後のため」「病気になった時のため」だとモチベーションとならない可能性もあります。まずは「〇〇が欲しい」「〇〇に行きたい」といったような、なにか自分にとって喜びとなることを目標にするといいかもしれません。

 その上で、無理のない範囲でいつまでにいくら貯蓄するかといった目標金額を決めることです。「〇〇のために、〇〇までに、〇〇円貯める」といった形でできるだけ明確にしましょう。次にその目標から逆算し、現実的に毎月いくら貯蓄すればいいのかを明確にします。貯蓄は小さな積み重ねです。いきなり大きなお金を動かせば必ず反動で苦しくなります。無理のない金額を少しずつ貯蓄にまわすことが大事です。

固定費から見直す

 このためには現状で何にお金を使っているのかを知る必要があります。まずは家計簿アプリをダウンロードします。クレジットカードや銀行の口座などと紐づけて自動的に出費を仕分け管理してくれるアプリもあります。ここで自身の毎月の収入と支出を知ることができたら、一歩前進です。自分のお金の使い方が見えたら、不要なものを考えてみましょう。

 まずは固定費(毎月の定額出費)から確認します。何かしらのサブスクリプションサービスに複数加入していたとしたら、それは本当に全て必要でしょうか。また、そのサービスはもう少し安いものに切り替えることはできないでしょうか。ここで浮いた分をそのまま貯金に回せば、大きな痛みを感じることなく貯蓄することができます。

 次に支出を眺めてみて、割合の大きいところについて考えてみましょう。食費はもちろん生活上の一定の割合を占めていますが、見直す余地はあるかもしれません。コンビニでの支払いについては、一度あたりはそこまで大きくはないですが、一月で見るとそれなりの金額になります。また外食費に関してはどうでしょう。惣菜だけ買う日を意識してもいいかもしれません。この辺りを少し修正できたら、毎月さらに数千円は浮きます。

貯蓄用口座に自動振り込み設定する

 たとえば、月5000円を貯蓄に回したとします。このとき1年で貯まる額は6万円です。このまま3年経てば18万円になっています。この間もう少し節約がうまくいけば、貯蓄に回す金額を増やすことは可能です。1年目は5000円、2年目に8000円、3年目に10000円と貯蓄額を増やしてみましょう。そうすると1年目は6万円、2年目は9万6千円、3年目は12万円で合計27.6万円貯まっています。

 貯蓄用口座を一つ作っておくといいでしょう。ここに自身の給与振り込み口座から毎月自動的に一定の金額が振り込まれる設定をしておきます。この設定をしたら、目標に達するまで貯蓄用口座には手をつけません。このとき普通預金だとほぼ金利はつかないので、少しリスクをとって投資信託で運用すれば、金利で年間数%程度の利益を上げることもできます。

 ともあれ、節約しようとしてストレスで衝動買いをしてしまえば本末転倒です。この辺りはダイエットと似ている感じもします。無理をせず毎月一定の貯蓄額を減らすことなく、可能であれば少しだけ増やしながら時間を積み重ねることです。一度習慣化してしまえば、そんなに無理せずに気がついたら一定額貯蓄できているはずです。一定額を貯めることができた人は、大きなハードルを越えています。あとは繰り返すだけなので必ず貯蓄できます。

<参考サイト>
実は結構いる貯金ゼロの人…お金を貯めたい人への3つのヒント│Like U(三井住友カード)
https://www.smbc-card.com/like_u/money/no_savings.jsp
Q. 給付金の請求から入金されるまでどれくらいの日数がかかりますか。|大同生命
https://www.daido-life.co.jp/contact/faq/c_kojin01/q04.html
病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/
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