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DATE/ 2023.05.06

車の「ナンバープレート」個人情報が分かるって本当?

 ナンバープレートはむやみにSNSにアップしないほうがいいと言われています。実際にGoogleストリートビューをみると、映り込んだナンバープレートには基本的に「ぼかし」が入っています。確かにナンバープレートはその車に固有のものなので、そこから個人を特定することは可能であると考えられます。ではナンバープレートは個人情報として保護されているのでしょうか。この辺り少し詳しく見てみましょう。

個人情報とは個人を識別できる情報

 個人情報は現在「個人情報保護法」によって守られています。またここで守られる個人情報には大きく分けて2つの種類があると考えられます。一つはそれ単体で個人を識別できるもの、もうひとつは2つ以上の情報を合わせることで個人の識別が可能になるものです。政府広報オンラインでは、個人情報保護法における「個人情報」とは「生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報」と定義されています。

 「それ単体で個人を特定できる情報」については、例えば顔認証や指紋認証のデータ、虹彩、声紋、手指の静脈といったようなデータがあるようです。さらにパスポートや運転免許証の番号、マイナンバー、保険者番号などの公的な番号が該当すると考えられます。こういった情報は「個人識別符号」と呼ばれ、重要な個人情報として保護されます。

 また組み合わせによって個人を特定できるものもあります。たとえば、生年月日や顔写真などです。これらは単体の情報だけですぐに個人を特定することはできません。しかし、生年月日と住所や電話番号などのように2つ以上の情報が照合されることで、特定の個人を識別することが可能になります。また、メールアドレスも個人の識別ができる場合があるので、個人情報に該当します。

ナンバープレートは個人情報ではない

 ではナンバープレートはどうなのでしょうか。結論からいえば、総務省の見解ではナンバープレートは個人情報には該当しないとのことです。もちろんナンバープレートによって警察は所有者などを割り出すことができます。しかし個人がナンバープレートからその所有者情報を知ることは、容易ではありません。このことが個人情報に該当しない理由とされているようです。

 たとえば、個人がナンバープレートから所有者を割り出す必要がある場合、運輸支局などの窓口で「登録事項等証明書」の交付請求を行うことで可能です。このとき、「私有地にある放置車両」で所有者を割り出す必要がある場合であれば、ナンバープレートのみから所有者情報を請求することができます。ただしこの時には、「場所がわかるもの」、「放置状況がわかる見取り図」や「放置車両の写真」、「放置期間」などの情報や資料が必要です。また請求理由は正当なものでない限り却下されます。つまり、自身の私有地に無断駐車されている車の所有者に連絡を取る必要がある、または裁判の資料として示す必要があるといった「個人を特定する明確な目的がない限り」はナンバープレートから所有者を識別することは不可能です。

写り込みへの注意が大事

 このように、ナンバープレートだけでは個人を特定することはできないので、例えば写真や映像にナンバープレートが写り込んでいたからといって個人情報が流出したことにはなりません。ただし、ナンバープレートと共に、個人を特定できる情報が写り込んでいた場合「プライバシー権の侵害」や「肖像権の侵害」といったことで訴えられる可能性がある点には注意です。

 ナンバープレートには登録地域名が記載されています。これに建物や風景などの情報が加われば、どのあたりにその車がいるのかということは特定される可能性があります。さらに、運転手の作業着や制服などが写り込めば所属先が特定されることもあり得ます。無用なトラブルを招かないためにも、写り込みには十分な意識を払う必要がありそうです。

<参考サイト>
「個人情報保護法」をわかりやすく解説 個人情報の取扱いルールとは?|政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201703/1.html
登録事項等証明書交付請求|関東運輸局
https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_gian/touroku/car_regist_shoumei.htm
利用者視点を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000028227.pdf
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