社会人向け教養サービス 『テンミニッツ・アカデミー』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2024.11.26

「カーブミラー」はなぜオレンジ色なのか

 道路にあるものと言えば、信号や標識、ガードレール(防護柵)、街灯、車線分離標(中央分離帯)といったものもあります。あたり前のようにありますが、どれも道路の安全を守るためには欠かせません。細かく見ればほかにもあると思われますが、今回は特に「カーブミラー」について焦点を当ててみましょう。

オレンジ色とルールで決まっているわけではない

 カーブミラーの正式名称は、「道路反射鏡(どうろはんしゃきょう)」です。ちなみに「カーブミラー」は和製英語で、英語だと正しくは「Traffic mirrors(トラフィックミラー)」と呼ぶことが多いそうです。ここでは便宜上、国内で一般的によく言われている「カーブミラー」を使います。「カーブミラー」と聞くと全体としてオレンジ色で、支柱に支えられた丸い凸面鏡(とつめんきょう)を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。カーブや交差点などには必ずと言っていいほど設置されています。もしカーブでこれがなかったら、事故のリスクはかなり高くなるのではないでしょうか。

 カーブミラーの多くはオレンジ色です。あまりに統一されているので、何か法律などで決まっているのだろうと思われるかもしれませんが、実はそうでもないようです。カーブミラーの色に関しては明確な決まりはないので、実は何色でもいいようです。この点についてカーブミラーを製造する「信正工業株式会社」によると、「昔は鏡体部分では黄色が主流で、柱は白と黒で交互に色分けされた遮断機のような色配置の支柱が使われていた」とのことです。

オレンジ色が目立ちやすく、何より安い

 その後、黄色の支柱を経てから鏡体・支柱ともオレンジが広く使用されるようになったそうです。オレンジである理由は「目立たせるため」とのこと。たしかに、オレンジは赤や黄色に近く、生物で言えばいわゆる警告色であり、JIS(日本工業規格)においてもJIS安全色としても定められています。周囲の風景になじみにくい色とも言えるでしょう。

 もちろんオレンジ色でないカーブミラーもあるようです。たとえば街になじむブラウン(茶色)の支柱と鏡体を採用する自治体もありましたが、価格が割高になるようです。また目立ちにくいことで車両に接触されやすいといった理由もあって、あまり出回らなくなったそうです。どういった色にするかという点は自治体が決定するようですが、やはりオレンジ色であればメーカーも準備しやすいことから、何か景観上の問題といったことがない限りは、基本的にはオレンジ色になると考えられます。

過信は禁物。必ず目視確認を。

 カーブミラー(道路反射鏡)は安全のためには欠かせないものですが、注意も必要です。道路反射鏡メーカーが集まって運営している「道路反射鏡協会(DHK)では、いくつか注意すべきポイントを取り上げています。一つ目は「左右が逆になる」点です。もちろん鏡なので左右が逆になることは当然と言えば当然です。普段から見慣れている人にとってはどうということはないかもしれませんが、見慣れていない人は意識していないとちょっと危険な点です。

 また、カーブミラーは凸面鏡(前に出っ張った鏡)なので、一般的な鏡より少し広い範囲を移すことができます。ただし限界があります。特に交差点に近い位置は死角になります。何も映っていないから大丈夫だろうと思い込んで一旦停止を怠った結果、自転車と追突してしまった事故がしばしば起こっているようです。

 またカーブミラーでは、映っているものの大きさが、実際の大きさよりも小さく見える特性があります。少し遠くから自転車が来ているから先に行こう、と思って前に出たところでぶつかるという事故も起きるようです。カーブミラーの過信は禁物です。交差点などでは特に目視で安全確認すること、また一時停止する必要があるところでは必ず守る意識を持っておいた方がよさそうです。

<参考サイト>
道路反射鏡協会
https://www.dhk.gr.jp/
きっかけは道路じゃなくて鉄道? 日本で初めてカーブミラーを作った人とは│GAZOO
https://gazoo.com/column/daily/17/07/17/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
自分を豊かにする“教養の自己投資”始めてみませんか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,600本以上。 『テンミニッツ・アカデミー』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み

何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み

なぜ「何回説明しても伝わらない」という現象は起こるのか。対人コミュニケーションにおいて誰もが経験する理解や認識の行き違いだが、私たちは同じ言語を使っているのになぜすれ違うのか。この謎について、ベストセラー『「何...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/11/02
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
2

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話

ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群

ケルト神話とは何か。ケルトという地域は広範囲にわたっており、一般的にアイルランドを中心にした「島のケルト」と、フランスやスペインの西北部などに広がった「大陸のケルト」があるが、神話が濃厚に残っているのはアイルラ...
収録日:2022/04/12
追加日:2023/07/23
鎌田東二
京都大学名誉教授
3

「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」

「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」

エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点

経営は個人戦でなくチーム戦であり、経営メンバーは「人材の組み合わせ」が大事である。かつて本田宗一郎には藤沢武夫、井深大には盛田昭夫がいたからホンダもソニーも大きくなれた。また、新規ビジネスを始めるときは大事なの...
収録日:2025/05/08
追加日:2025/11/03
水野道訓
元ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役CEO
4

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ

学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ

算数が苦手な子どもが多く、特に分数でつまずいてしまう子どもが非常に多いというのは世界的な問題になっているという。いったいどういうことなのか。そこで今回は、私たちが言語習得の鍵となる「スキーマ」という概念を取り上...
収録日:2025/05/12
追加日:2025/10/06
今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
5

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由

徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題

半世紀ほど前、松下幸之助に経営者の条件について尋ねた田口氏は、「運と徳」、そして「人間の把握」と「宇宙の理法」という命題を受けた。その後50年間、その本質を東洋思想の観点から探究し続けてきた。その中で後藤新平の思...
収録日:2025/05/21
追加日:2025/10/24