テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2023.05.22

「カーブミラー」はなぜオレンジ色なのか

 道路にあるものと言えば、信号や標識、ガードレール(防護柵)、街灯、車線分離標(中央分離帯)といったものもあります。あたり前のようにありますが、どれも道路の安全を守るためには欠かせません。細かく見ればほかにもあると思われますが、今回は特に「カーブミラー」について焦点を当ててみましょう。

オレンジ色とルールで決まっているわけではない

 カーブミラーの正式名称は、「道路反射鏡(どうろはんしゃきょう)」です。ちなみに「カーブミラー」は和製英語で、英語だと正しくは「Traffic mirrors(トラフィックミラー)」と呼ぶことが多いそうです。ここでは便宜上、国内で一般的によく言われている「カーブミラー」を使います。「カーブミラー」と聞くと全体としてオレンジ色で、支柱に支えられた丸い凸面鏡(とつめんきょう)を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。カーブや交差点などには必ずと言っていいほど設置されています。もしカーブでこれがなかったら、事故のリスクはかなり高くなるのではないでしょうか。

 カーブミラーの多くはオレンジ色です。あまりに統一されているので、何か法律などで決まっているのだろうと思われるかもしれませんが、実はそうでもないようです。カーブミラーの色に関しては明確な決まりはないので、実は何色でもいいようです。この点についてカーブミラーを製造する「信正工業株式会社」によると、「昔は鏡体部分では黄色が主流で、柱は白と黒で交互に色分けされた遮断機のような色配置の支柱が使われていた」とのことです。

オレンジ色が目立ちやすく、何より安い

 その後、黄色の支柱を経てから鏡体・支柱ともオレンジが広く使用されるようになったそうです。オレンジである理由は「目立たせるため」とのこと。たしかに、オレンジは赤や黄色に近く、生物で言えばいわゆる警告色であり、JIS(日本工業規格)においてもJIS安全色としても定められています。周囲の風景になじみにくい色とも言えるでしょう。

 もちろんオレンジ色でないカーブミラーもあるようです。たとえば街になじむブラウン(茶色)の支柱と鏡体を採用する自治体もありましたが、価格が割高になるようです。また目立ちにくいことで車両に接触されやすいといった理由もあって、あまり出回らなくなったそうです。どういった色にするかという点は自治体が決定するようですが、やはりオレンジ色であればメーカーも準備しやすいことから、何か景観上の問題といったことがない限りは、基本的にはオレンジ色になると考えられます。

過信は禁物。必ず目視確認を。

 カーブミラー(道路反射鏡)は安全のためには欠かせないものですが、注意も必要です。道路反射鏡メーカーが集まって運営している「道路反射鏡協会(DHK)では、いくつか注意すべきポイントを取り上げています。一つ目は「左右が逆になる」点です。もちろん鏡なので左右が逆になることは当然と言えば当然です。普段から見慣れている人にとってはどうということはないかもしれませんが、見慣れていない人は意識していないとちょっと危険な点です。

 また、カーブミラーは凸面鏡(前に出っ張った鏡)なので、一般的な鏡より少し広い範囲を移すことができます。ただし限界があります。特に交差点に近い位置は死角になります。何も映っていないから大丈夫だろうと思い込んで一旦停止を怠った結果、自転車と追突してしまった事故がしばしば起こっているようです。

 またカーブミラーでは、映っているものの大きさが、実際の大きさよりも小さく見える特性があります。少し遠くから自転車が来ているから先に行こう、と思って前に出たところでぶつかるという事故も起きるようです。カーブミラーの過信は禁物です。交差点などでは特に目視で安全確認すること、また一時停止する必要があるところでは必ず守る意識を持っておいた方がよさそうです。

<参考サイト>
道路反射鏡協会
https://www.dhk.gr.jp/
きっかけは道路じゃなくて鉄道? 日本で初めてカーブミラーを作った人とは│GAZOO
https://gazoo.com/column/daily/17/07/17/
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
雑学から一段上の「大人の教養」はいかがですか?
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,100本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制は民主主義的で、野党もブレーキ役に担っていた

55年体制と2012年体制(1)質的な違いと野党がなすべきこと

戦後の日本の自民党一党支配体制は、現在の安倍政権における自民党一党支配と比べて、何がどのように違うのか。「55年体制」と「2012年体制」の違いと、民主党をはじめ現在の野党がなすべきことについて、ジェラルド・カ...
収録日:2014/11/18
追加日:2014/12/09
2

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか

5Gとローカル5G(1)5G推進の背景

第5世代移動通信システムである5Gが、日本でもいよいよ導入される。世界中で5Gが導入されている背景には、2020年代に訪れるというデータ容量の爆発的な増大に伴う、移動通信システムの刷新がある。5Gにより、高精細動画のような...
収録日:2019/11/20
追加日:2019/12/01
中尾彰宏
東京大学 大学院工学系研究科 教授
3

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミは本来、与野党機能を果たすべき

マスコミと政治の距離~マスコミの使命と課題を考える

政治学者・曽根泰教氏が、マスコミと政治の距離を中心に、マスコミの使命と課題について論じる。日本の新聞は各社それぞれの立場をとっており、その報道の基本姿勢は「客観報道」である。公的異議申し立てを前提とする中立的報...
収録日:2015/05/25
追加日:2015/06/29
曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授
4

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITのEU首脳会議での膠着

BREXITの経緯と課題(6)EU首脳会議における膠着

2018年10月に行われたEU首脳会議について解説する。北アイルランドの国境問題をめぐって、解決案をイギリスが見つけられなければ、北アイルランドのみ関税同盟に残す案が浮上するも、メイ首相や強硬離脱派はこれに反発している...
収録日:2018/12/04
追加日:2019/03/16
島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授
5

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か?取り組み方とメリット

健康経営とは何か~その取り組みと期待される役割~

近年、企業における健康経営®の重要性が高まっている。少子高齢化による労働人口の減少が見込まれる中、労働力の確保と、生産性の向上は企業にとって最重要事項である。政府主導で進められている健康経営とは何か。それが提唱さ...
収録日:2021/07/29
追加日:2021/09/21
阿久津聡
一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻教授