テンミニッツTV|有識者による1話10分のオンライン講義
ログイン 会員登録 テンミニッツTVとは
社会人向け教養サービス 『テンミニッツTV』 が、巷の様々な豆知識や真実を無料でお届けしているコラムコーナーです。
DATE/ 2015.10.17

あなたの世代の損益は?格差1億円の「生涯純利益」って

 消費税率10%は延期になったとはいえ、さらなる引き上げが待ったなしの状況に何ら変わりはない。では実際に税金の恩恵を、私たちは今後どのくらい受けられるのだろうか。詳しく見てみよう。

 人が一生のうちに政府に支払う租税や社会保険料を負担総額とする。逆に政府から受け取る年金、医療などの社会保障給付、補助金、教育、公共事業からの便益といった項目の総額を受益額とする。この負担総額と受益総額の差額を「生涯純利益」と呼ぶ。

 では世代間の「生涯純利益」を比べるとどういうことになるか。「団塊の世代」というボリュームゾーンが高齢化している日本の人口比、活況とまでは言い難い経済状況などから想定して、ある程度想像はつくだろう。しかし、実際の数字を見ると、かなりの衝撃を受けるかもしれない。

 内閣府の試算によると、2003年に60歳以上の世代は約4,900万円の受益超過(+)である。

 一方、20歳代では約1,700万円の負担超過(-)、さらに20歳未満の将来世代では約4,600万円の負担超過(-)になる。

 これを5年後の2008年時点の状況で見ると、60歳以上の受益超過(+)は約4,000万円、20代で約1,500万円の負担超過(-)、さらに20歳未満の将来世代では約8,000万円の負担超過(-)となっている。

 つまり60歳以上の世代と将来世代の一人の「生涯純利益」の差は、およそ1億円近くあるのだ。

 この世代間不均衡は、大ざっぱに言ってしまえばドイツの1.8倍、アメリカの3.3倍と抜きんでている。しかも人口のボリュームゾーンが高齢化し、今後人口が減っていく以上、この問題は残り続ける。

 しかし、この数字を見て単純に悲観する必要はないだろう。日本の元気な時代を生きてきた「団塊の世代」は、年齢を重ねても、様々な形で働ける環境を作り出している。

 また、彼らが退職した後には、非正規なども含めそれまで中堅として働いてきた人材を、思い切って活用できる労働力と見る動きもある。もともと不安定で比較的先の見えない状況で働かざるをえなかった世代にとっては、親世代ほどの給料をもらえずとも、安定を手にすることができるのは大きいといえるのではないだろうか。

 日本経済は90年代のバブル崩壊後、ずっと低空飛行を続けてきたが、これから訪れるであろう世代交代による変化を、幸福感ひいては消費意欲にまで変える可能性を持っているのが、「団塊ジュニア世代」、もしくは「ロストジェネレーション(ロスジェネ)」世代と呼ばれる現代の30代半ばから40代半ばの世代なのだ。

 そして、その子どもたちに当たる20歳未満の将来世代も、「生涯純利益」の差1億円という数字に惑わされてはいけない。現在の場所から先がどう見えるかという視点に立つべきである。これは、「消費者マインド」の動きにつながる。上向く要素が見えるなら、全体に経済は活気づき、好循環が生まれてくるはずだ。

<参考文献・参考サイト>
・『顧客の心をつかむニーズ多様化時代のマーケティング戦略』(株式会社明治 営業企画本部 営業企画部監修 幻冬舎)
・NIKKEI STYLE:どうなる「団塊ジュニア」の老後 支える子供少なく 2014・8・27付
https://style.nikkei.com/article/DGXDZO76152890W4A820C1TJP001
~最後までコラムを読んでくれた方へ~
「学ぶことが楽しい」方には 『テンミニッツTV』 がオススメです。
明日すぐには使えないかもしれないけど、10年後も役に立つ“大人の教養”を 5,300本以上。 『テンミニッツTV』 で人気の教養講義をご紹介します。
1

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

経営をひと言で?…松下幸之助曰く「2つじゃいけないか」

東洋の叡智に学ぶ経営の真髄(1)経営とは何かをひと言で?

東洋思想を研究する中で、50年間追求してきた命題の解を得たと田口佳史氏は言う。また、その命題を得るきっかけとなったのは松下幸之助との出会いだった。果たしてその命題とは何か、生涯の研究となる東洋思想とどのように結び...
収録日:2024/09/19
追加日:2024/11/21
2

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

次の時代は絶対にアメリカだ…私費で渡米した原敬の真骨頂

今求められるリーダー像とは(3)原敬と松下幸之助…成功の要点

猛獣型リーダーの典型として、ジェネラリスト原敬を忘れてはならない。ジャーナリスト、官僚、実業家、政治家として、いずれも目覚ましい実績を上げた彼の人生は「賊軍」出身というレッテルから始まった。世界を見る目を養い、...
収録日:2024/09/26
追加日:2024/11/20
神藏孝之
公益財団法人松下幸之助記念志財団 理事
3

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

冷戦終焉から30年、激変する世界の行方を追う

ポスト冷戦の終焉と日本政治(1)「偽りの和解」と「対テロ戦争」の時代

これから世界は激動の時代を迎える。その見通しを持ったのは冷戦終焉がしきりに叫ばれていた時だ――中西輝政氏はこう話す。多くの人びとが冷戦終焉後の世界に期待を寄せる中、アメリカやヨーロッパ諸国、またロシアや同じく共産...
収録日:2023/05/24
追加日:2023/06/27
中西輝政
京都大学名誉教授
4

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

遊女の実像…「苦界と公界」江戸時代の吉原遊郭の二面性

『江戸名所図会』で歩く東京~吉原(1)「苦界」とは異なる江戸時代の吉原

『江戸名所図会』を手がかりに江戸時代の人々の暮らしぶりをひもとく本シリーズ。今回は、遊郭として名高い吉原を取り上げる。遊女の過酷さがクローズアップされがちな吉原だが、江戸時代の吉原には違う一面もあったようだ。政...
収録日:2024/06/05
追加日:2024/11/18
堀口茉純
歴史作家
5

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

国の借金は誰が払う?人口減少による社会保障負担増の問題

教養としての「人口減少問題と社会保障」(4)増え続ける社会保障負担

人口減少が社会にどのような影響を与えるのか。それは政府支出、特に社会保障給付費の増加という形で現れる。ではどれくらい増えているのか。日本の一般会計の収支の推移、社会保障費の推移、一生のうちに人間一人がどれほど行...
収録日:2024/07/13
追加日:2024/11/19
森田朗
一般社団法人 次世代基盤政策研究所(NFI)所長・代表理事