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DATE/ 2015.11.16

“怒って死ぬ”ことはあり得るのか?世界史における「憤死」の謎

 世界史の教科書に出てくる「憤死」という単語をご存じだろうか。教皇グレゴリウス7世は破門したハインリヒ4世に攻められて憤死し、周瑜は諸葛孔明の挑発的な手紙に憤死した。憤死とは、「憤って死ぬこと」、つまり、心底怒り、失意のうちに死ぬということである。

怒りで死ぬ?そんなバカな

 そんなバカな話はないだろうと思う人もいることだろう。私はかつてそう思っていた。しかし、調べていくと、憤死は私たちの身にも起こり得る、おそろしい死因であることがわかった。

感情と五臓はつながっている

 中国の医学書「黄帝内経」には、人間の感情によって病が引き起こされることが書かれている。

 感情は五臓と結びついており、さらに五行(水、木、土といった自然界の要素)と結びついている。では、怒りの感情は火? というように思えるが、実は火がついてよく燃える材料、「木」なのだ。そして五臓では肝臓と結びついているとされる。

 青島大明著「病を治す哲学」によれば、怒りのエネルギーは悪いものととらえられがちだが、実はぐんぐんと伸びゆくような勢いのある力で、その様子はまるで木の成長のようだという。怒ることを我慢すると今度は腎臓を傷めるので、怒りの感情も大事なのだ。

怒りがやがて死をまねく

 肝臓病の症状のひとつに、怒りっぽいというものがある。先に述べた、怒りと肝臓、木の結びつきによるものだ。そして怒ることでまた肝臓を悪くしてしまう。憤怒の感情がすぎると、肝臓が縮む。血が大量に全身を巡る。力をこめて拳をにぎり、体に力が入ることで高血圧になる。すると脳溢血、脳梗塞、くも膜下出血などを引き起こす。怒ることでストレスが発散されているように見えるが、体には負担をかけていることを忘れないようにしたい。

それでも怒りがおさまらない人へ

 青島大明によれば、臓器を丈夫にすれば、怒りは自然と収まっていくものだという。つまり、体から治していくのだ。

 「木」の肝臓についた火(怒り)を消すには、熱を下げる陰性の食べ物が良いという。なすやトマトなど体を冷やすものや、バナナやいちじくのような柔らかいものが良い。バナナは精神安定の効果もあるからおすすめだ。

 ただし、持病をお持ちの方はやみくもに食べる前に、何が自分に合っているのかをしっかりと確認してもらいたい。インターネットで陰性のものを簡単に調べることができる。

穏やかに生きる

 ストレスでからなるべく身を守る、内側からも癒す、といった方法をとるならば、身も心も休めることができる。いやなことがあってイライラしだしたら、忘れる時間を作る。そして楽しいことを考えたり、趣味に没頭することで発散させる。「笑う」という感情が体からわき上がることで、怒りは静まっていく。そうやって、生活に穏やかさをとり入れて、健康に生きていきたいものである。

<参考文献>
・『病を治す哲学 伝説的医書「黄帝内経」の驚異』(青島大明著 講談社+α新書)
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