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DATE/ 2016.03.04

防犯カメラが犯罪を助長する!?監視社会の死角

 人々の安全を守るための防犯カメラ。今では330万台に上るという。大きなビルの中だけでなく、住宅街や商店街にまでその数を増やしている。防犯カメラには犯罪の証拠を残すという意味で重要な役割を果たしている。それ以上に、監視されていることを意識づけることで、犯罪を事前に抑止する効果が期待されている。

 古来から、目の力というものは大きな意味を持ってきた。暗がりに貼っている「見ているぞ」と書かれた目のポスターでさえ、ただの紙なのにドキリとさせられる。それが絵だけでなく、実際にこちらを監視するものだとすれば、さらに、その一部始終が記録されているとしたらどうだろう。しかも、その記録に自由にアクセスできたとしたら。

監視社会の死角

 最近ニュースで騒がれた、防犯カメラ画像のインターネットでの無断公開はご存じだろうか。画像のみならず、動画なども不正アクセスによって公開されてしまうケースである。日本に設置されている約6000台ものカメラをリアルタイムで覗けてしまうサイトまであったという。

 このような無断公開によってプライバシーが晒される不安感から、防犯カメラを危険視する声が聞かれるようになった。では、なぜこういったことが起きたのか。

 よくある防犯カメラは、その画像確認のためのアクセスをパスワードで管理することになっている。しかし、安全なパスワードで管理されていないカメラが多く、初期設定のままになっていることから、容易に外部からアクセスができてしまうのだ。

 こうした事情より、空き巣を目論む犯罪者は、防犯カメラに不正アクセスすることで簡単に部屋の間取りや無人の時間帯を知ることができるという。さらに、暗証番号を入力するような機器を監視しているカメラがあるなら、暗証番号が筒抜けになってしまう危険性すらあるのだ。

 犯罪を防ぐために設置しているにもかかわらず、むしろ犯罪を助長してしまうことになりかねない防犯カメラ。こうした事件を鑑み、多くのカメラメーカーからは注意喚起と対策が出されている。こうして、正しい使い方とリスクを周知できれば、防犯カメラへの不正アクセスから勝手に画像が公開されるということも少なくなるに違いない。

プライバシーが晒されるリスクを回避するために

 防犯カメラを問題視する人は、監視され続けることへの恐怖や不安を訴える。しかし、防犯カメラに限ることなく、私たちの日常生活はつねに人の目を避けることはできない。公共の場に出るということは、不特定多数の人間がいる場所に身をさらすことであり、知らない人に見られるということだ。外に出るだけでも誰かに見られているのだ。おそらく、本当の恐怖や不安は見られていること以上に、意図しない自分のプライバシーがひと目に晒されるリスクにある。

 しかし、常に監視されることの不安から防犯カメラに反対する人が出るくらい、「見られている」ことへの意識が高まるのであれば、少なからず子どもを誘拐したり、物を盗もうとする人の心にも、何かしらの効果があるはずである。今後、防犯カメラを取り付ける場合、見られることの不安を取り除けるよう、設定をしっかり行い、取り付け場所にも細心の注意をはらうことを意識するようにしたい。

~最後までコラムを読んでくれた方へ~
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今井むつみ
一般社団法人今井むつみ教育研究所代表理事 慶應義塾大学名誉教授
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青山学院大学 経営学部経営学科 教授