平和の追求~哲学者たちの構想
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「コスモポリタニズム」の理想と「国家連合」というプラン
平和の追求~哲学者たちの構想(2)世界市民と国家連合
川出良枝(東京大学名誉教授/放送大学教養学部教授)

5.カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
2025年12月22日配信予定
6.理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
2025年12月23日配信予定
7.国際機関やEUは、あまり欲張らないほうがいいのでは?
2025年12月23日配信予定
講義一覧を見る▼
18世紀フランスではコスモポリタニズムの概念が復興し、「世界市民」という発想が勃興する。この発想からくる「平和」を具現化する方法の1つとして生まれたのが、「国家と国家を連合させる」というアイデアだった。のちにその別方向としてアメリカの国の形にもつながるこのアイデアが生まれた背景について解説する。(2025年8月2日開催:早稲田大学Life Redesign College〈LRC〉講座より、全7話中第2話)
※司会者:川上達史(テンミニッツ・アカデミー編集長)
時間:10分45秒
収録日:2025年8月2日
追加日:2025年12月9日
≪全文≫

●賛同が得られなかったホッブズ的解釈


川出 さて、(ホッブズの議論は)なんとなく説得されそうな迫真の議論ではあります。ただ、18世紀に平和を追求した論者の多くは、こうしたホッブズ的解釈の道筋に異を唱えました。ここがポイントです。

 どうしてか。先ほどのホッブズのような議論を念頭に置くと、そうした世界単一国家は、非常に強大な国家が武力によって各地域を征服して1つにまとめあげてしまうというルートだって当然、あるわけです。そしてまた、さまざまな多様な国家、いろいろなものの考え方、いろいろな文化がある現状を全て真っさらにしてしまって、巨大な政府に統一される。これは諸国民の自由や多様性の否定となるのではないか。そうした懸念が同時に浮かび上がってくるわけです。

 歴史的な話になりますが、具体的には18世紀において、ルイ14世というフランスの絶対君主が、まさにそういう形でヨーロッパを事実上統一するのだという野心を持っていたので、すごくリアルなのです。「ルイ14世が起こす戦争はこりごりだ。でも、ならばルイ14世が本当に武力で全ヨーロッパを征服して、そのような形で平和になって、それでいいのだろうか」という、ちょっとしたジレンマなのですね。

 なので、世界単一国家による平和に異を唱えつつ、平和の実現を考える。つまり、世界が1つの国家になるという解決策とは別の形で平和を追求していかなければいけない。そういう考え方が登場していくというところにポイントがあるわけです。


●18世紀フランスで復興した「コスモポリタニズム」


川出 さて、平和の話のはずが、なんとなくきな臭い戦争の話になりました。しかし、そういった議論が主流な中で登場してきた、それに対するアンチとして、「コスモポリタニズム」という考え方もあったというお話をしたいと思います。

 コスモポリタニズムとは、コスモポリタンが「世界市民」という意味なので、「世界市民主義」という意味です。世界市民として生きること。このニュアンスをなかなか日本語でうまく伝えるのが難しいのですが、日本国民であったり、フランス人(国民)であったりというだけではなく、世界市民であるということです。日本の市民であるだけではなく、世界の市民であるという考え方です。

 言い方を変えると、国を超える人類の一体性を強調する...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(2)『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏への道
『富嶽三十六景』神奈川沖浪裏のすごさ…波へのこだわり
堀口茉純
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦