日本の戦後70年とワイツゼッカーの演説
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ワイツゼッカー演説の真意―ドイツ人の責任を認めたのか
日本の戦後70年とワイツゼッカーの演説
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
2015年8月14日、安倍晋三首相の戦後70年談話が発表された。印象的だったのは「未来の子孫に謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」の一節ではなかっただろうか。その一節をより深く知るには、歴史学者・山内昌之氏の見解を知るのが一番である。10MTVの視聴者にはご案内の通り、山内氏こそ、この談話のための有識者会合に参加し、歴史家としての意見を何の色づけもなく表明してきた人物だ。今回は、1985年のドイツ元首相・ワイツゼッカーの有名な演説を取り上げ、政治家にとって大切な仕事とは何かを指摘する。
時間:10分37秒
収録日:2015年7月29日
追加日:2015年8月24日
≪全文≫

●政治家の大切な仕事は、自国を卑屈にしないこと


 皆さん、こんにちは。

 古代のローマに生きたギリシャ人、プルタルコスはその有名なエッセイ集『モラリア』の中で、「政治家の大切な仕事は何か」を問い、「いかなる外国に対しても、自らの国を必要以上に卑屈にさせず、足に枷(かせ)をかけた上に、首まで軛(くびき)に差し出す事態をつくらないことだ」と、明快に述べています。

 このプルタルコスのひそみにならえば、大事・小事にお構いなく、歴史を含めた全てのことについて特定の外国の国々などに判断を委ねたり、判断を任せっぱなしにして、自らの国益をまひさせ、歴史解釈に臆病になることによって、結局は国や自分の政治生命をすっかり失ってしまう人々が、歴史上にはいました。

 日本においても、そうした人々がいないとは限りません。日本の戦争責任や歴史認識を問題にするときに、いつも外国の顔色をうかがうような人たちです。こうした人々には、ドイツのリヒャルト・フォン・ワイツゼッカー元大統領の演説を持ち出す人たちが非常に多いのが特徴です。プルタルコスの言葉を借りるならば、そこでは中国や韓国が日本に望んでいる以上に、彼らを「自分たちのご主人さまに祭り上げてしまう」。こうした人々が全くいないとは限らないのが、まことに残念なことです。

 戦後70年にあたって、こうした点を私なりに改めて考える機会がありました。元ドイツ大使であり、長い間練達の外交官として日本外交の前線にいた、現在の中東調査会理事長、有馬龍夫氏の回顧録『対欧米外交の追憶』を読む機会があったからです。


●元ドイツ大使が語るワイツゼッカー演説の真意


 有馬さんは、回顧録の中でワイツゼッカー演説について大変興味深い指摘をしておられます。それは、ワイツゼッカー演説のどこをどう探しても、ナチスによるホロコーストについての謝罪やそれに類した表現をした箇所が見当たらないという事実です。これは、まことに私たちがいつも感じていたことなのですが、ドイツ大使であった人から改めて語られたということです。

 ワイツゼッカー元大統領は、すこぶる明快に次のように語っています。「民族全体の罪、もしくは民族全体の無実というものはない」と。罪や無実は集団的なものではなくて、個人的なものだとはっきり明言しているわけです。つまり、現代のドイツ人は、自分が生まれてもいな...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
政治思想史の古典『法の精神』と『社会契約論』を学ぶ(1)二人の思想家
モンテスキューとルソー…二人の思想家の共通の敵とは?
川出良枝
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
資産運用の思考法…経済や市場の動きをどう読むか
市場予測のポイント…短期・中期・長期の視点と歴史的洞察
養田功一郎
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(31)鶴見太郎先生の「公開収録」のご案内
【公開収録のご案内】鶴見太郎先生:ユダヤ人と世界史…その歴史の教訓とは
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(5)「3つ」で組まれた構造分析
驚くほど似ているギリシアの『オデュッセイア』とインドの『マハーバーラタ』…その謎に迫る
松村一男
ギリシア神話の基本を知る(1)「ゼウス以前」の神々の戦い
ギリシア神話…ゼウスの「父親殺し」とオリュンポス十二神
鎌田東二
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
仏教とキリスト教が照らし出す日本の宗教(1)神とは何か、そして天皇とは?
日本と世界の「神と信仰」の違いは?…そして天皇の大切な役割
橋爪大三郎
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(3)金利上昇の深刻な影響
金利が上昇した未来を10年スパンで見てみると…何が起きるか?
宮本弘曉
司馬遼太郎のビジョン~日本の姿とは?(5)移動と破壊と自由の実現
徳川家康ではなく織田信長…司馬文学が描く「別の可能性」
片山杜秀