シリア難民問題
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湾岸諸国(GCC)とヨーロッパの難民事情
シリア難民問題(2)アラブ諸国に対する誤解
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
ヨーロッパ、特にドイツのシリア難民受け入れが連日報道されているが、湾岸諸国でも難民の数は急増している。では、その地域における難民の姿がさほどクローズアップされないのはなぜなのか? 歴史学者・山内昌之氏が、人道的観点一辺倒では語れない難民問題を公正な目を通して解説する。(全3話中第2話目)
時間:10分51秒
収録日:2015年9月16日
追加日:2015年9月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●多数の難民を吸収している湾岸諸国


 皆さん、こんにちは。

 前回に引き続き、湾岸諸国における難民問題の現状について、その一端をお話ししてみたいと思います。

 難民といえば、どうしてもシリア人だけを連想しがちですが、同じように内戦や戦争を経験している現在のイエメンからも多くの難民が発生しています。サウジアラビアにおけるイエメン人の数は、今回の戦争が起きて以来、100万人を超えたとされています。不法にサウジアラビアに入ったイエメン人とその難民たちは、結果として全て在留許可をもらっています。そして、労働と居住の許可をもらっています。

 ヨーロッパへの難民は、ヨルダン、あるいはレバノン、トルコといった中東の国々の扱いやそこでの生活と比べると、現在まだつつましやかであり、そしてシリア人の難民の生活は始まったばかりです。ともかく難民たちの一部はシリア人難民を中心に、ヨーロッパにおいて受け入れられたという面があります。にもかかわらず、湾岸がこうした難民のかなりの部分を吸収しているということも認識しておかなければなりません。

 

●ヨーロッパと湾岸諸国それぞれの難民受け入れ


 もっとも、スウェーデンやドイツといったヨーロッパの特に難民を受け入れることに前向きな国については、そのヒューマニティーや人道性ゆえに高く評価しなければならないと思います。意外に日本では知られていない事実ですが、1970年代のレバノン内戦以来、難民に最も温かく接し、そして受け入れてきたヨーロッパ有数の国は、ドイツでした。ドイツ人のこうした人道主義的なスタンスは、多くの点で諸外国が、もちろん日本も含めて学ぶべき点が少なくありません。

 一方、湾岸諸国はこの間もお話ししましたように、そこに労働などのために滞在していた家族が、他の家族をこの内戦の結果呼び寄せることになり、そうした家族の再結集、家族の再会などを通して、彼らに多くのスペースを与えているということを、バランスをもって見なければなりません。今回はそうしたシリア人以外にイエメン人も加わることで、既にいる各種難民の数は湾岸諸国、GCC(湾岸協力会議:Gulf Cooperation Council)6カ国においては150万人を上回るようになったといわれております。


●湾岸の国々で難民が目立たない理由


 従って、産油国であるこの湾岸の...

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