シリア難民問題
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隣国イランはシリア難民を一人も受け入れていない
シリア難民問題(3)解決に向けて~期待されるイラン
政治と経済
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏によれば、シリアをはじめとする難民問題は、今や国際社会全体で対応すべきレベルに達している。そこで、この難民問題解決に向け期待すべき国として山内氏はイランを挙げている。イランはシリアの隣国でありシリア紛争に介入してきた国だけに、果たすべき役割は大きい。(全3話中第3話目)
時間:11分21秒
収録日:2015年9月16日
追加日:2015年9月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●難民はシリア人だけではない

 
 皆さん、こんにちは。

 前回、前々回に引き続き、現在の中東で起こっている難民問題について、三度触れてみたいと思います。ヨーロッパでは、第二次世界大戦以来最大の難民危機、最大の難民問題が発生したと伝えられています。しかしながら、この難民危機というのはまだ始まったばかりだというところに、深刻さがあります。

 トルコにはまず200万のシリア難民が殺到し、レバノンには100万人、さらにそこを越えて欧州に入ってくる者たちの全てが、シリア人だけではありません。アフガン人、ひいてはリビアをはじめとするアフリカの人びとも、地中海を越えて入ってきます。こうした人びとは、自分たちの母国、祖国において、紛争で疲弊し尽くした人びとです。

 EUの中においては、難民問題をめぐる論争が活発になりつつありますが、いくらヨーロッパ、あるいはEUが寛容であっても、国際社会がこの問題に全体として取り組まなければ限度があるというのが、正直なところだと思います。数百万のシリア人が難民となり、これからもなるであろうという状況の中で、シリアを中心に、イスラム国(IS)のような過激派集団が国境を越えてシリアに潜入し、シリア、イラクを軸にして拡大し続けるというのは、誠に不幸なことです。


●シリアの難民とIS戦士の入れ替わり現象

 
 ひとたび生命を賭して海を渡ってヨーロッパに入国した難民たち、特にシリア人たちは、祖国に帰国することはなかなかに難しいものと思われます。反対に、数千人もの外国人がわざわざシリアに過激派としてやってきて、そこで犯罪、テロ、暴力、あるいは戦争に加担しているような人びとが、シリアから出て自分の祖国に帰国するということは極めて少ないかと思われます。

 これは誠に皮肉な現象です。シリア人は、父祖伝来の土地、国を捨てざるを得ず、捨てることを強いられているのに対して、代わりにアフガン人やチェチェン人といった過激派の人びとのみならず、イギリス、フランス等々のヨーロッパの若者たちが、イスラム国(IS)の戦士、兵士として、シリアに代わって登場してくるというのは、誠に不可思議、そして奇怪な現象、逆説だといわなければなりません。


●難民問題は各国協同で取り組むべき大事な問い


 難民と移住者は、仕事を見つけて、そこが安全だと感じられる限り、自分を受け...

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