都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「主伐材」がホント!「間伐材」は実は存在しない
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(3)森と都市の共生
科学と技術
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
安価で品質の安定した輸入材に対して、国産木材はつねに苦境に立たされてきた。急斜面の山地で営まざるを得ない日本の林業に活路はあるのか? 東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏が示す希望とは。シリーズ「都市木造の可能性」第3回。
時間:10分41秒
収録日:2015年10月6日
追加日:2016年2月4日
≪全文≫

●山の資源を使い尽くす


 森林資源と木造建築について考えると、山は、木を産出しているだけではありません。木は、実は山にとっては副産物なのかもしれません。山が生み出しているものは、木だけではないからです。まず治水です。水資源を確保すること。あるいは、山という形態があります。崖崩れや斜面崩壊を防ぐために植林をする。あるいは、そこに住む動植物や生物多様性に貢献することもあります。さらには、旅行に行って快適さを感じるレクリエーションなども、人間は山の恩恵として受けているわけです。そういった目で見ると、実は山から生まれてくる木というものは、副産物として、山を元気にし、活性化するためにあるものだという見方もできます。

 効率的に木材をつくろうと思えば、畑のように平らな所で植林をしてその木を切るようにすれば、効率よくどんどんつくることができます。ニュージーランドやオーストラリアのような広大な土地を持つ国では、そういうことをして、大量生産の木材が生まれてきているのです。しかし残念ながら、日本では、そのような平地ではなく、急斜面に植えられている木を切って、林業を成り立たせています。そうした大量生産、効率性、合理性だけを考えていたのでは、海外からの輸入材にかなうわけがありません。

 だとすると、いま国内でできることは、山にある資源を使い尽くすということなのです。山にはいろいろな資源があります。その資源をいろいろな形に使っていくことが重要なのです。


●2000年の基準法改正で木の需要が増加


 これまで建築業界で木を使うというと、先述のように2000年の基準法改正までは2階建て3階建ての木造住宅ぐらいしかつくれませんでした。それが、2000年の建築基準法の改正によって、多層の中高層の木造建築や大規模な木造建築がつくれるようになりました。これによって、公共建築が木造化されていくことになったわけです。

 そうした大きい建築をつくるということになると、当然、木材の需要は上がりますが、そのときに選り好みをしてはいけないのです。山にはいろいろな木があります。太い木も、細い木も、少し曲がった木もあります。材料の性能が高い木があれば、低い木もあります。大きい建築をつくる中で、いい木、太い木、長い木、強い木だけを使って建築をつくったとすると、山の資源の有効活用にはなりません。山の人...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
2050年のための「前向きの愛国心」(1)木造都市へのシフト
木造ビルで20階…新しい暮らしを支える森林産業の確立を
小宮山宏
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮