都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
森林資源の有効活用には多様な木を多様に使うことが不可欠
都市木造の可能性~木造ビルへの挑戦(4)循環型資源としての「木」
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
ちょっと曲がっているだけで、「B材、C材」にランク落ちしてしまう。そんな木材の現状に「待った」をかける東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏。山の恵みである木を有効に使い尽くすとはどういうことか。木造建築の向こうに見える社会システムのあり方とは。シリーズ「都市木造の可能性」第4回。
時間:10分03秒
収録日:2015年10月6日
追加日:2016年2月8日
≪全文≫

●いろいろな木を、いろいろに使う


 森林資源の有効活用という意味では、山の木をいろいろに使うということがありますが、条件は太さだけではありません。他にもいろいろあります。例えば、曲がった木です。曲がった木は、建築にはやはりなかなか使いにくいものでした。というのは、柱や梁といった建物を構成する部材は、3メートル、4メートルの真っすぐな材でなければならなかったからです。

 昔の民家の小屋組みの中には、「曲がり梁」や「牛梁」と呼ばれるような、曲がった材を屋根裏でうまく使う工夫もありました。ですが、そうしたものも、現代建築ではなかなか使われなくなってきました。そうすると、そのような曲がった材の使い道がなかなかなくなり、結果、当然ながら売れなくなってしまいます。

 丸太の分類でいうと、「A材、B材、C材、D材」などと呼ばれていますが、真っすぐな材がとれるA材は、そのまま製材として住宅、あるいは、建築に使えるために、高く売ることができます。一方、ちょっと曲がってしまうと、B材、C材と呼ばれ、加工した木材にならざるを得ない。かつらむきのように剥いて、2ミリ、3ミリの単板、ベニヤの形にしてつくられた合板や、LVL(単板積層材)といった木質材料、あるいは厚さ3センチぐらいのラミナ(挽き板)材を接着して組み合わせた集成材などの材に変化していきます。


●B材、C材から生まれた「新しい木材」


 こうしたB材、C材と呼ばれているものは、建築用にならなければ、パルプになってしまいます。山で育てた木を粉砕して、紙にしてしまう。木として成長したものを、木として使わないということになってしまうのです。そこで、現代の新しい木質材料として、このB材、C材を有効活用していく動きが出始めています。少し曲がっていて製材として扱いにくいものを、木質材料、再構成材として使っていこうという動きです。

 これまで、合板、集成材、LVLと呼ばれる木質材料があったわけですが、最近ではCLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)と呼ばれる直交集成板、すなわち、厚さ15センチ、20センチといった厚い板がつくれるようになりました。大きさも3メートル×6メートル程度の非常に大きい板です。

 こうした新しい木材、木を原料とした木質材料、再構成材が生まれることによって、これまであまり価値のなかったB材、C材...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
レアメタルの光と影(1)イントロ
イノベーションがレアメタルをコモンメタルにする
岡部徹
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(33)2025年を振り返る
2025年のテンミニッツ・アカデミーを振り返る
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(1)「まれびと」と日本の「おもてなし」
「まれびと」とは何か?折口信夫が考えた日本文化の根源
上野誠
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(4)信長の直臣、秀吉の与力としての秀長
最初は信長の直臣として活躍――武闘派・秀長の前半生は?
黒田基樹
過激化した米国~MAGA内戦と民主党の逆襲(3)DSA化した民主党と今後の展望
DSAの民主党乗っ取り工作…世代交代で大躍進の可能性
東秀敏
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
経験学習を促すリーダーシップ(4)成功を振り返り、強みを伸ばす
なぜ強みが大事なのか?ドラッカー、西田幾多郎の答えは
松尾睦
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規