森と都市の共生~木材活用の豊かな社会
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
正倉院もツーバイフォーも同じ?「伝統工法」とは
森と都市の共生~木材活用の豊かな社会(3)伝統木造と現代の工法の共通点
科学と技術
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏が解説する「伝統木造ってなんだ?」。多様すぎてまとまりのない「木造」のイメージを、腰原氏が分かりやすく整理。見えてきたのは、伝統木造と現代の工法の意外な共通点だった。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中第3話)
時間:9分33秒
収録日:2015年11月19日
追加日:2016年4月21日
≪全文≫

●誰も定義できない「伝統木造」


 「木造建築」と言ったときに、日本には1400年以上の木造の歴史があります。法隆寺をスタートにするとよく言われているのですが、皆さんの頭の中に浮かぶ木造建築とは、同じようで違うのです。これが実は大問題なのです。皆、木造建築の話を会議でしていて、最後にふっと「話がかみ合わないよね」というときは、皆、頭の中で思い描いている木造像が違うのです。山小屋のようなものや、前回お見せした地方にあるようななんだか快適な別荘のようなもの、それから今度は、大量生産の戸建て住宅かなと思ったり。あるいは、体育館やドームのようなものがあったり、また、茶室のようなもの、そして、この応接室のような重厚な空間も木でできているわけです。でも、それらは皆、木でできているのですが、全然雰囲気が違うので話がかみ合わないのです。だから、そこをまず真面目に考えなければいけない。

 日本には古くからの伝統木造の歴史があります。この場合に思い浮かべるのは、法隆寺や東大寺大仏殿といった建物です。かやぶき屋根の農家型の民家。京町家、宿場町などの町家型の民家。こういうなんとなくガイドブックの世界のようなものを見て、伝統木造というと、皆さん「こんな感じかな」と思うのです。

 でも、伝統木造とはそもそも何なのか。今、建築基準法の中でも「伝統木造を守らなければいけない」というわけで、法律に乗せていかなければいけないのですが、実は誰も伝統木造を定義できないのです。皆さんの頭の中で思い描いているものが違う。古いものを伝統木造と言うかどうかなんですね。


●文化の香り、技術の洗練度が決め手


 ここに木造の住宅を四つ並べています。この辺は、先ほど言ったように町家型や農家型で、なんかもう「伝統木造です」ということになるんですけれど。では、これ。竪穴式住居。これも木造の住宅なんです。でも、これは3000年前のものです。これはきっと伝統木造とは言ってもらえないですよね。そこから少し時代がたって、高床式倉庫。これも多分駄目ですね。でも、正倉院と言うと、「おっ」という感じになるわけです。

 ですから、「古い」ということが伝統木造ではなく、「何か」があるわけです。その何というのは、実は技術なのです。この辺の竪穴式住居の頃は、穴を掘って丸太を刺して、それから横に丸太を流し、縄とか蔓で縛って造る...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
2050年「プラチナ社会」実現への挑戦(1)「プラチナ社会」実現のルーツと現況
2025年頭所感~5つのプラチナ産業イニシアティブ創りへ
小宮山宏
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
2050年のための「前向きの愛国心」(1)木造都市へのシフト
木造ビルで20階…新しい暮らしを支える森林産業の確立を
小宮山宏
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎

人気の講義ランキングTOP10
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(1)動物の配偶と子育てシステム
ヒトは共同保育の動物――生物学からみた子育ての基礎知識
長谷川眞理子
未来を知るための宇宙開発の歴史(7)米ソとは異なる日本の宇宙開発
日本の弾道ミサイル開発禁止!?米ソとは異なる宇宙開拓の道
川口淳一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(3)中央集権と六国史の時代の終焉
天平期の天然痘で国民の3割が死亡?…大仏と崩れる律令制
片山杜秀
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は数学と音楽でできている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
モンゴル帝国の世界史(2)チンギス・ハーンのカリスマ性
自由な多民族をモンゴルに統一したチンギス・ハーンの魅力
宮脇淳子
DEIの重要性と企業経営(4)人口統計的DEIと女性活躍推進の効果
日本的雇用慣行の課題…女性比率を高めても業績向上は難しい
山本勲
睡眠から考える健康リスクと社会的時差ボケ(5)シフトワークと健康問題
発がんリスク、心身の不調…シフトワークの悪影響に迫る
西多昌規
「アカデメイア」から考える学びの意義(1)学びを巡る3つの危機
「学びの危機」こそが現代社会と次世代への大きな危機
納富信留
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(1)イノベーションと価値創造
価値創造において重要なのは未来から現在を見るという視点
遠山亮子
トランプ政権と「一寸先は闇」の国際秩序(3)これからの世界と底線思考の重要性
同盟国よもっと働け…急激に進んでいる「負担のシフト」
佐橋亮