森と都市の共生~木材活用の豊かな社会
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都市の景観にマッチした木造ビルへのチャレンジ
森と都市の共生~木材活用の豊かな社会(5)都市木造の実際
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
木造建築の歴史は古いが、都市木造は始まったばかりの試みだ。木という素材と向き合い、現代の価値観から見つめ直すことで、木を使った魅力的な建築が生まれるのではないだろうか。都市木造を推進する東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏に、都市木造の歩みを振り返っていただく。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中第5話)
時間:11分29秒
収録日:2015年11月19日
追加日:2016年5月5日
≪全文≫

●都市木造は生活スタイルと社会システムにつれて


 都市木造で何を目指すのかというと、今の時代の生活スタイルと社会システムに適した建築です。しかし、建築物は建てられてから50年ぐらいは建ち続けますから、少しは将来を見据えたものを提案しようとしたのが、東京・表参道の街並が木造ビルに変わればどうなるか、というCGです。

 これは5年前につくったものですが、あまり良い出来ではありません。当時、ヨーロッパの建築系雑誌の編集者が興味を持ってくれたので送ったところ、「どこが木造なんだ?」と言われました。確かにそこが難しい問題です。木造のビルなど誰も見たことがないですから、まだ木造らしさが分からず、「ただ柱を茶色く塗ってあるだけじゃないのか」と言われてしまいます。

 こうしたものは「歴史的にない」と言いましたが、実は1900年代のある時期には瞬間的に存在しました。1950年に「建築基準法」の出る前、1919年に「市街地建築物法」が出ています。その前のわずかな期間、江戸期から明治期に入り、1919年になるまでの間だけ、実はこういう建物ができたのです。

 なぜできたのかというと、社会システムの変化があったからです。江戸時代の家内制工業から大量生産の時代になってくれば、倉庫や工場などの大きい建築が必要になる。それまでももちろん酒蔵など大きな建築はありましたが、大体は平屋建てだったのです。


●消滅した木造ビル文化の成長をシミュレートする


 右上の写真は群馬県館林市に建った製粉工場です。製粉工場では、不純物をなくすのに高い所から粉を落としますので、高い建物が必要です。それを木造で造りました。左上は岩手県小岩井農場の中にある4階建ての倉庫です。右側のものは壊されましたが、こちらはまだ見ることができます。そして、左下は福島県須賀川にある繭の乾燥倉庫です。さらに、近代教育が導入されて、寺子屋から学校が必要になったために、右下のような学校の校舎が生まれます。

 要は、社会システムが変わり、新しい用途の建築が必要になったためにそれを木で造ってみようということになった。よく分からないけど造ってみたという点では、先ほどの竪穴式住居と同じです。この頃はまだ技術が未熟で、あまり木造らしくないですね。

 この技術をいかに洗練させていって楽しい町にするかという構想があったはずなのですが...

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