森と都市の共生~木材活用の豊かな社会
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
都市の景観にマッチした木造ビルへのチャレンジ
森と都市の共生~木材活用の豊かな社会(5)都市木造の実際
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
木造建築の歴史は古いが、都市木造は始まったばかりの試みだ。木という素材と向き合い、現代の価値観から見つめ直すことで、木を使った魅力的な建築が生まれるのではないだろうか。都市木造を推進する東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏に、都市木造の歩みを振り返っていただく。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中第5話)
時間:11分29秒
収録日:2015年11月19日
追加日:2016年5月5日
≪全文≫

●都市木造は生活スタイルと社会システムにつれて


 都市木造で何を目指すのかというと、今の時代の生活スタイルと社会システムに適した建築です。しかし、建築物は建てられてから50年ぐらいは建ち続けますから、少しは将来を見据えたものを提案しようとしたのが、東京・表参道の街並が木造ビルに変わればどうなるか、というCGです。

 これは5年前につくったものですが、あまり良い出来ではありません。当時、ヨーロッパの建築系雑誌の編集者が興味を持ってくれたので送ったところ、「どこが木造なんだ?」と言われました。確かにそこが難しい問題です。木造のビルなど誰も見たことがないですから、まだ木造らしさが分からず、「ただ柱を茶色く塗ってあるだけじゃないのか」と言われてしまいます。

 こうしたものは「歴史的にない」と言いましたが、実は1900年代のある時期には瞬間的に存在しました。1950年に「建築基準法」の出る前、1919年に「市街地建築物法」が出ています。その前のわずかな期間、江戸期から明治期に入り、1919年になるまでの間だけ、実はこういう建物ができたのです。

 なぜできたのかというと、社会システムの変化があったからです。江戸時代の家内制工業から大量生産の時代になってくれば、倉庫や工場などの大きい建築が必要になる。それまでももちろん酒蔵など大きな建築はありましたが、大体は平屋建てだったのです。


●消滅した木造ビル文化の成長をシミュレートする


 右上の写真は群馬県館林市に建った製粉工場です。製粉工場では、不純物をなくすのに高い所から粉を落としますので、高い建物が必要です。それを木造で造りました。左上は岩手県小岩井農場の中にある4階建ての倉庫です。右側のものは壊されましたが、こちらはまだ見ることができます。そして、左下は福島県須賀川にある繭の乾燥倉庫です。さらに、近代教育が導入されて、寺子屋から学校が必要になったために、右下のような学校の校舎が生まれます。

 要は、社会システムが変わり、新しい用途の建築が必要になったためにそれを木で造ってみようということになった。よく分からないけど造ってみたという点では、先ほどの竪穴式住居と同じです。この頃はまだ技術が未熟で、あまり木造らしくないですね。

 この技術をいかに洗練させていって楽しい町にするかという構想があったはずなのですが...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
未来を知るための宇宙開発の歴史(1)宇宙開発の流れを概観する
宇宙開発の歴史、そして未来へ…6枚の写真で概観する
川口淳一郎
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
現在の宇宙の姿(1)星はなぜ自ら輝くのか
宇宙に関するニュースを理解するために宇宙の姿を学ぶ
岡村定矩
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
知能と進化(1)知性と身体性
AI、ディープラーニングとは…知能と身体性は不可分か?
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(4)克己と天壌無窮
横井小楠が説く「世界の幸せのお世話係」こそ日本の使命
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
東大ハチ公物語―人と犬の関係(1)上野英三郎博士とハチ
忠犬ハチ公で哲学する…人と犬の関係から見えてくる道徳論
一ノ瀬正樹
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(5)社会的共通資本によるプラチナ社会へ
「日本に来れば未来が見える」…希望があるうちにやろう!
小宮山宏
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
プラトン『ソクラテスの弁明』を読む(6)裁判の帰趨
死刑を前にしたソクラテスの最後の言葉
納富信留