森と都市の共生~木材活用の豊かな社会
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
自分たちの手でメンテナンスできる木造ビルの魅力
森と都市の共生~木材活用の豊かな社会(8)山の価値観、都市の価値観
腰原幹雄(東京大学生産技術研究所 教授)
かつて「割り箸」論争があった。「割り箸は森林破壊だ」という主張と「割り箸は森林資源の有効活用だ。」という主張の対立である。論争は決着を見ないまま、中国産輸入割り箸に取って代わられている。経済性がものを言ったわけである。グローバル社会の中での「木造」は何を目指して行われるのか。東京大学生産技術研究所教授・腰原幹雄氏に、今後の役割を語っていただく。(2015年11月19日開催日本ビジネス協会JBCインタラクティブセミナー「森と都市の共生~都市木造の役割」より、全8話中最終話)
時間:5分57秒
収録日:2015年11月19日
追加日:2016年5月26日
≪全文≫

●「消耗品か生物か」という根本的価値観の違い


 山の人たちの価値観について、割り箸を例に取りましょう。今、割り箸というのは、どうなのでしょう。一時期は悪者になっていて、「割り箸は使わないで、マイ箸を持ち歩きましょう」と言われていました。割り箸用に木を伐るのは良くないと言われたのですが、実は余った木でつくる割り箸というものがあるのです。

 日本の割り箸は、そのために木を伐るわけではありません。先ほど見た柱や梁を伐り出した後、丸い部分が残るわけです。それを捨てるのが嫌なので、山の人たちは別にもうかりもしないのに一生懸命箸に加工する。

 植えてから50年間、一生懸命成長した木なのに、一度も役に立たないまま燃やすのはかわいそうだ。せめて一回は役に立ってもらおうというので、ちまちまと割り箸をつくっている。

 ところが、そんな割り箸まで悪者になった時代があったために、割り箸をつくっても売れなくなってしまった。山の人から見ると、別にもうけのためではなく、せっかく育てた木を一度も日の目を見せずに捨てるのはもったいないという気持ちです。

 バイオマス・エネルギーについても、いま同じ問題が浮上しています。何かに使った後にバイオマスとして使ってくれればいいのに、最近は丸太のまますぐバイオマスにされて、燃やす方の燃料に使われる。昔のバイオエタノールと同じです。トウモロコシを食べないで、エタノールにする。そこには、何か矛盾があります。


●手抜きの文化と「磨けばよくなる」文化


 山の人たちの価値観はそうではありません。せっかく育った木なのだから、とことん使ってあげようと考えている。これは、実は無駄なことをしているのですが、結局なぜ木造がうまくいかないかの原因もそこにあります。

 木造建築は世につれて進化してきましたが、その進化とは効率性や合理性、もっと言えば経済性のことです。「メンテナンスフリー」などという言葉もあるぐらいで、あまり何も手をかけなくてもいい方向に進む。要は、手抜きの文化です。

 しかし、本来の木造の魅力というものは、手が掛かります。例えばこの会場の机、ちょっとこの辺りのメンテナンスが悪いですね。でも、こういうものは磨けば磨くほどきれいになる。ところが放置していると汚くなるので、手が掛かる。

 手を掛ければよくなるのだから、それを楽しむ。そのために...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
断熱から考える一年中快適で健康な住環境(1)日本の住宅の実態と問題点
なぜ日本は夏暑く、冬寒いのか…断熱から考える住宅の問題
前真之
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
航空機事故ゼロをめざして(1)フラッター現象とは何か
零戦の開発段階で起きたフラッター現象…事故の教訓とは
鈴木真二
「海の哺乳類」の生き残り作戦(1)分類と海牛目の特徴
「海の哺乳類」が海の中で行った「生き残り作戦」とは
田島木綿子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎

人気の講義ランキングTOP10
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
ケルト神話の基本を知る(1)ケルト地域と3つの神話群
ケルト神話とは…ダーナ神族、アルスター神話、フィアナ神話
鎌田東二
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(5)「チーム戦と新規ビジネス」の要点
「土地勘のあるところ、自分たちの武器を持っていく」
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀
いま夏目漱石の前期三部作を読む(1)夏目漱石を読み直す意味
メンタルが苦しくなったら?…今、夏目漱石を読み直す意味
與那覇潤
教養としての「人口減少問題と社会保障」(1)急速に人口減少する日本の現実
毎年100万人ずつ減少…急降下する日本の人口問題を考える
森田朗
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子