●デンマークは小規模分散型でエネルギー自立化へ
引き続いて、環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也です。後半は、グローバルな変化を起こしつつある構造変化についてお話をしたいと思います。
最も象徴的なのは、このスライドにあるデンマークにおける過去30年の変化です。デンマークは30年前、大きく分けると二つの系統の独占電力会社と、数えるばかりの大型の石炭火力発電がありました。原発は日本と違い、もともと国策で導入をしなかったわけですが、大規模集中型の独占電力会社は、ある意味で今の日本に似ているかと思います。
それが今日、およそ6500基の風力発電と、およそ1000基のコージェネレーションになっています。コージェネレーションは、電気と熱の両方をエネルギーとして活用しますので、発電だけですと40パーセントのエネルギー効率しかないものが100パーセント近くになるのです。実際に、デンマークでは100パーセントを超える熱効率のコージェネレーションもあります。さらに、およそ5000基のバイオマスを中心とするボイラーもあります。こういう小規模分散型のエネルギー源によって、デンマークは今、エネルギー自立化へと向かっているのです。つまり、一目瞭然ですが、エネルギー構造が大規模集中型から小規模地域分散型へ完全に変わったわけです。
●構造変化の背景-高度成長から石油ショック
もう一つ重要な要素は、30年前には非常に数少ない独占電力会社が大規模な発電所を独占し一方的に電気を送っていましたが、現在は6500基の風力発電と1000基のコージェネレーション、さらに数千基のバイオマスボイラー、これらの8割を地域の人たちが持っているということです。それは、個人であったり、農家であったり、協同組合であったり、消費者組合であったり、あるいは地方自治体がつくったエネルギー会社であったりします。こういたエネルギー所有の構造が、この30年で完璧に変わりました。
デンマークだけに限りませんけれども、こういう構造(変化)の背景として、次のスライドにありますように、われわれ人類、とりわけ先進国を中心とした国々がエネルギーに関して五つの歴史的な課題に遭遇をしてきたことが挙げられると思います。
一番最初は、高度成長期への対応です。これは、石油を中心とするエネルギーをしっかりと供給することで、...