シンガポールの謎~驚異的な経済発展の秘密
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
リー・クアンユーの政策で急成長を遂げたシンガポール
シンガポールの謎~驚異的な経済発展の秘密(2)リー・クアンユーの大戦略
島田晴雄(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
マレー半島からの分離独立後、指導者リー・クアンユーが行った大戦略により急成長を遂げたシンガポール。果たしてその戦略とはどんなものだったのか。そしてその結果、国民にどんな影響を与えたのか。その詳細に迫る。(後編)
時間:10分45秒
収録日:2013年10月3日
追加日:2014年4月10日
≪全文≫

●リー・クアンユーの大戦略その1~公営団地建設と持家政策~


そして、リー・クアンユーさんは本質的な大戦略を打っていきました。すべてを語ることができませんが、いくつか申し上げたいと思います。
当時、シンガポールは大変貧しい島で、ヤシの木が生い茂ったジャングルがあり、国民の生活は生きるのもギリギリという国でした。島内はどこも貧民窟ばかりだったのです。
これをなんとか近代国家にしていかなければいけないということで、リー・クアンユーさんは、まず地震の統計を行ったそうです。すると、シンガポールには、三百何十年間、地震がないことに気がつきました。それならば、ここに高層建築を大変安いコストで建てることができるのではないかと考えて、専門家と相談し、何十階建ての公営住宅をどんどん林立させたのです。
「貧民窟にいた住人はそこに入りなさい」「あなたたちが頑張って家賃を7割くらい払えば、自分たちのものになる」と言われたので、彼らは一生懸命働いて、家賃を払おうと努力をしました。

●リー・クアンユーの大戦略その2~海外企業誘致と優遇税制措置~


ところが、努力をしたくても、給料や職場は限られているので、家賃を稼ぐだけの働き場がないのです。また、島のなかにはそんな資源もありません。
そこで、リー・クアンユーさんは考え、世界に向かって「有力なものづくり企業さん、来て下さい」「シンガポールに来れば、土地はただです。ほとんど税はとりません。世界のどこに立地するよりも有利です」と発信したのです。
そうしたら、世界の有力企業が、シンガポールにどんどん立地をしたわけです。そのなかで最も活躍したのが、日本の松下電器やソニー、それからフィリップス。つまり、当時盛んだった電機、電子産業がどんどん立地をしたということです。
そのおかげで、どんどん仕事が生まれ、国民はそこで働きました。そうして、給料を得て家賃を払った国民は、高層ビルのなかにあるマンションを次から次へと自分の持家にしていったのです。これは夢のようなことですね。

●リー・クアンユーの大戦略その3~市場開放で世界の金融機関が投資~


ところが、そうしているうちに給料がどんどん上がり始めたので、ものづくり産業の競争力が落ちていきました。
「これではいかん」「もっともっと競争力の出る産業に来てくれ」ということになり、シンガポールの人たちが目をつけ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(3)カントの公共性論
いま学ぶべきカントの挑戦~なぜ「公開性」が重要なのか
齋藤純一