中国の夢~中華から語る「普遍」
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
近代日本の「失敗」は東アジア共通の遺産
中国の夢~中華から語る「普遍」(3)日本の経験の共有
中島隆博(東京大学東洋文化研究所長・教授)
東京大学東洋文化研究所教授・中島隆博氏によれば、「中国の夢」という言説は、日本や韓国など東アジア全体を包む共同体の構想へと発展し得る。もし「中国の夢」をその方向で発展させるなら、かつて近代日本が犯した失敗も、その発展に貢献するものになるだろう。今後私たちは、中国とともに「中華」の普遍を夢見るだろうか。(全3話中第3話)
時間:10分04秒
収録日:2016年1月21日
追加日:2016年4月14日
≪全文≫

●「中国の夢」が行き着くのは、東アジア共同体の構想だ


 もちろん中国の中にも、第2話で取り上げた趙汀陽さんの議論に対する直接的間接的反応、批判的な反応があります。例えば上海の許紀霖さんという方は、新しい天下主義、「新天下主義」と言っています。現在の「中国の夢」とは、ただ富んで強くなる「富強」の点ばかり強調する民族復興の抗争と受け取られているのではないか。そこには、批判的な契機が十分に練られていないのではないか。そういうことを言います。そこで、彼は何と言うかというと、もし今、中国が普遍を語り、新しいディスコースの権利を手に入れていくならば、中国が自らを反省しながら、しかも中国の外と連携しながらやっていくしかないのではないか。こういう言い方をしています。

 彼が言うのは、共に享受する普遍性です。中国だけではなく、日本も韓国も台湾も、あるいはペリフェリーもそうです。それらが共に享受する普遍性を目指さなければいけない。中国だけが中心にいて中国的な普遍性を主張しても、誰もそれは納得をしないし、広がっていかない。それでは全く普遍的ではない。こういう言い方をしています。

 こう考えると、この、共に享受する普遍性が目指す「普遍」とは、当然ある種の東アジア的な共同体の構想につながっていきます。国民国家を簡単になくすことはできないが、それを前提として、来るべき東アジア共同体を考えた上での普遍性になっていかないといけないのではないか。これはなかなかに大胆な主張だろうと思います。彼はこの構想を指して「東アジア運命共同体」とまで踏み込んで述べているので、それがどこまで受け入れられるのかと思いますが。


●「韓国」と「儒家思想」から見た中華的な普遍


 この考えは、韓国の白永瑞(ペク・ヨンソ)先生も共通して持っています。単純に中国的な普遍を主張した場合、例えば韓国がそこから抜け落ちる可能性がありますね。韓国の持っている、ある意味で二重に周辺化されてしまっている歴史、すなわちヨーロッパからも周辺化されるだけではなく、東アジアの中でも周辺化されてきた。「中国の夢」ではその問題をきちんと考えることができない。そのような普遍であっては、やはりいけないのではないか。来たるべき普遍とは、韓国のような経験をも包み込むような、そういう普遍でなければいけないのではないのか。こういったことを言っ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
楽観は強い意志であり、悲観は人間の本性である
これからの時代をつくるのは、間違いなく「楽観主義」な人
小宮山宏
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
小林秀雄と吉本隆明―「断絶」を乗り越える(1)「断絶」を乗り越えるという主題
小林秀雄と吉本隆明の営為とプラグマティズムの格率
浜崎洋介
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
法隆寺は聖徳太子と共にあり(1)無条件の「和」の精神
聖徳太子が提唱した「和」と中国の「和」の大きな違いとは
大野玄妙
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(2)日本人が知らない世界エンタメ市場
実は「コンテンツ世界収益ベストテン」に日本勢が5つも!
水野道訓