●戦争、独裁、マイノリティに対して人権を保護している
国際人権NGO、ヒューマン・ライツ・ウォッチの日本の代表をしている土井香苗と申します。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、本部がニューヨークにあり、90カ国で活動している世界最大級の人権団体です。40年ほど前に設立されました。日本には2009年に設立され、7年ほど活動を続けてきました。
活動の題材は人権問題で、幅広く扱っています。大きく分けると3つの分野となります。一つ目は「戦争」です。戦争や紛争の下で、女性や子どもを含めた戦闘員でない人、兵士でない人が殺されるのを防ぐことです。二つ目は「独裁」です。近い国ですと北朝鮮や、その隣の中国などもやはり、政治的な多党制が実現しておらず、自由で公正な選挙が行われていない地域です。こうした地域では多くの場合、野党の弾圧、表現の自由の弾圧、団体・結社・集会の弾圧が多い傾向にあります。こうした問題への対処をしています。
最後のカテゴリーとしては、いわゆる「マイノリティの保護、差別撤廃、平等の実現」といった分野があります。これは日本にも関係のあるところです。日本はありがたいことに戦争もないし、独裁国でもないのですが、マイノリティ、少数派は存在しています。そうした少数派の声は、民主主義の中でもなかなか聞いてもらえません。民主主義は多数決の世界で、多数派でない人の声は実現しにくいのです。そのために差別などを受けることがありますので、そうした方々の人権を実現する活動もしています。
●日本政府や日本企業の力を引き出すことが重要
私は、7年前に東京の事務所をつくった際の設立メンバーです。ヒューマン・ライツ・ウォッチの東京事務所をつくろうと思った最大の理由は、世界にありアジアにもある戦争や独裁などのさまざまな人権問題を解決するために、日本の力、特に日本政府や日本企業の力が非常に重要だと考えたからです。日本の潜在力を重視し、これを引き出すことを目的につくられたのです。
日本は経済力で世界第3位ですし、人口も多く、潜在的な政治力がある国だと思います。しかしながら、少なくとも人権の分野では、それに見合った政治力を発揮してきていません。世界では、人権・戦争・難民などさまざまな問題が今、深刻になっており、解決には急を要します。そこで、まだまだ伸びしろが大きな日本の力が必要...