自律型海中ロボットの仕事
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ロボットでは「船体」だけでなく「船長」もつくる
自律型海中ロボットの仕事(2)ハードとソフト
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
「きれいなロボットです」「プールの中でスイスイ泳げます」というだけでは、ロボットはユーザーの信頼を得られないと、九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授の浦環氏は語る。では、どうしたらロボットは信頼を得られるのか。浦氏が自身のロボット開発ポリシーを語る。(全4話中第2話)
時間:9分10秒
収録日:2016年5月17日
追加日:2016年8月22日
≪全文≫

●ロボットの実績を語らない限り、性能は分からない


 われわれの自律型海中ロボットとは何かについて、もう少し詳しく見ていきましょう。ロボットの特徴は、「ハードとソフトが一体」になっていることです。これは船ですが、見えているのはハードウェア、船の船体です。「きれい」、「客室がいい」、「ディスコがある」というのはハードに属することです。

 しかし、ハードだけでは船は動きません。動かすのは船長、船員です。特に重要なのは船長で、彼がリーダーシップを取ります。ところが、船長の性能は見ただけでは分かりません。性能を把握するには、彼が経験してきた航海、彼の冒険談、どのような危険を回避してきたかといったことを知らなければなりません。この船長、船員と一体になって、初めて船は仕事をするわけです。

 しかし困ったことに、われわれはなかなかこの船長や船員の性能が分かりません。この船はCosta Concordia(コスタ・コンコルディア)というイタリアの船で、実際にはこのようになってしまいました。数年前にニュースになったので覚えている方もいるかもしれませんが、船が傾いたとき、船長がさっさと逃げてしまったことが問題になりました。乗客は、船長がそういう人だとは全然分からなかった。事故が起こって初めて知ったのです。

 ロボットの場合、ハードとソフトは一体になっていますから、私たちはロボットのソフトウェア、つまり「船長」もつくっているわけです。そのソフトウェアの性能は、動かして初めて見えるものです。ロボットを見るときは、ハードウェアだけでなく、そのソフトウェアのパフォーマンス、どう動くかを見なくてはなりません。逆に言えば、ロボット研究家は、ソフトウェアのパフォーマンスを示さない限り、誰も信用してくれません。船長の航海履歴や冒険譚によって、われわれが船に乗っても大丈夫だと分かるのと同じように、ロボットも「きれいなロボットです」「プールの中でスイスイ泳げます」といったことだけでは駄目で、どのような冒険をしてきたのかを語らない限り、信用されないのです。

 現在、私たちの自律型海中ロボット・AUVは、さまざまな実績を示すに至っています。もちろん、われわれのグループのロボット以外にも、JAMSTEC(海洋研究開発機構)や海保(海上保安庁)のロボットもいろいろと活躍を始めています。例えば、後...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
プロジェクトマネジメントの基本(2)プロジェクトの複雑性とマネジメント
コスパが鍵!? 顧客満足につながる品質マネジメントとは
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦