自律型海中ロボットの仕事
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ロボットにとっては頭脳や身体よりも「五感」が大切だ
自律型海中ロボットの仕事(3)ロボット学のサイクル
浦環(東京大学名誉教授/株式会社ディープ・リッジ・テク代表取締役)
「ロボットにとっては、頭脳(コンピューター)や運動器官(ハードウェア)よりも、五感(センサー)が大切だ」と、九州工業大学社会ロボット具現化センター長・特別教授の浦環氏は語る。センサーが大事だというのは、一体どういうことか。浦氏が「ロボット学」のキモを短時間で教えてくれる。(全4話中第3話)
時間:14分20秒
収録日:2016年5月17日
追加日:2016年8月29日
≪全文≫

●自分たちでフィードバックサイクルを回すのが「ロボット学」


 私たちがロボットをつくるときに重要なのは、ロボットがきちんと仕事をすることをユーザーに見せることです。つまり「できました。使ってください」ではなくて、私たち自身がロボットを運転して、海底の観測、資源の調査、情報の収集をすることで、ロボットがしなければならない仕事、ロボットの環境に対する知識を増やして、次のロボットを開発していくのです。つまり、「フィードバック」です。このフィードバックの循環がないと、良いロボットはできません。自動車を開発するときも、「社長が言うような自動車をつくりました」ではなくて、その自動車を自分で運転して、どこが良いか、どこが悪いかを理解することが大切でしょう。テストではなく、それを実際に行うことで、より自動車が良くなっていくのです。その点では、ロボットも自動車も同じです。

 特に観測用のロボットの多くは、エンジニアたちが現場で使うチャンスはほとんどありません。基本的にはユーザーが使うものです。われわれはそれではいけないと考え、積極的に自分たちがユーザーとして観測を行い、観測データをサイエンティストの人たちに示すようにしてきました。これはとても大事なことです。このサイクルを回すことを「ロボット学」と呼んでいるのです。


●ロボット研究では「センサー」と「ロジ」が大事


 繰り返しになりますが、自律型海中ロボットの具体的な定義は、自身が取ったセンサーデータを解析することで、周囲の環境と自分自身の状態を理解して、海中で自ら行動を決められることです。自律型海中ロボットの基本は、「センサーデータ」なのです。

 これは「ツナサンド(Tuna-Sand)」というロボットですが、これが行動を決める際は、搭載されているセンサーが情報を獲得して、その情報をコンピューターが処理し、タスク(仕事のパーツ)を次々に切り替えていきます。この「タスクの切り替え」が、最終的に行動を決めるのです。つまり、人間に例えると、センサーが五感で、コンピューターは頭脳、仕事をするのは運動器官です。この三つがそろわないと、ロボットはきちんと動きません。特に重要なのはセンサーです。センサーが何をセンシングして、コンピューターにどのようなデータを教えてくれるのかが、行動の質を左右します。ついついロボットの研究者はコ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
性はなぜあるのか~進化生物学から見たLGBT(1)有性生殖と無性生殖
なぜ雄と雌の2つの性別があるのか…「性」の謎とLGBT
長谷川眞理子
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
平和の追求~哲学者たちの構想(3)サン=ピエールとモンテスキュー
「国連」の発想の源は?…一方、小共和国連合=連邦構想も
川出良枝
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
禅とは何か~禅と仏教の心(2)仏典漢訳から日本仏教へ
「ブッダに帰れ」――禅とは己事究明の道
藤田一照
大人の学び~発展しつづける人生のために(2)熟達と遊び~好奇心から始まる学び
好奇心はコントロールが効かない…遊びの重要な条件とは
為末大
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦