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好感度が上がらない…実力者ヒラリーが今後とるべき戦略

予想を裏切った2016年米大統領選―その実態とリスク

曽根泰教
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
概要・テキスト
ヒラリー・クリントン氏
今回のアメリカ大統領選は、トランプ候補が暴言、つまりPC違反を繰り返しても支持を高めたり、ヒラリー候補が実力も知名度もあるのに好感度が低かったりと、いくつもの不思議があるが、アメリカの大統領選も非常に不思議な制度だと政治学者で慶応義塾大学大学院教授・曽根泰教氏は語る。なぜこのような不思議が起こるのか。曽根氏が11月に迫ったアメリカ大統領選の実情を解説する。
時間:16:35
収録日:2016/08/29
追加日:2016/09/09
カテゴリー:
≪全文≫

●予想を裏切り続けてきたここまでの大統領選


 今、アメリカ大統領選が進行中ですが、今回の大統領選はいまだかつてなく多くの人の予想を裏切って、不思議なことがたくさんあります。一般の人だけではなく専門家、特に詳しく過去の歴史を知っている人にとって、思わぬことが起きたということです。

 その一つはドナルド・トランプ氏が、共和党の正式な大統領候補となっているということ。ヒラリー・クリントン氏は簡単に勝つだろうと思われていたのですが、民主党の中でも苦戦し、最後までなかなか正式な大統領候補として決まらなかったこと。そして、ひょっとしたら「トランプ大統領」という可能性があるという思いがけないこと、などです。

 また、このアメリカの大統領選はかなり評価の高い制度だったのですが、どうも反省材料がたくさんあるようです。そのことを話すためには、「そもそも大統領制とは何か」「議院内閣制とどう違うのか」というところを押えなければなりません。制度論を議論すると大変長くなりますので、かいつまんでポイントだけ申し上げます。


●暴言続きでも支持率を上げたトランプ


 まず、トランプ氏が候補者となっているという点について。これはトランプという人の評価とも関わるわけですが、人々はよく「不動産王」という言い方をします。しかし、本当に彼は不動産でかせいだのでしょうか。かつてあったトランプ・シャトルという飛行機会社はもうありませんし、彼は限りなく失敗し、破産もしているわけです。ですから、最初にトランプが出てきた時には記念受験ではないのですが、「この大統領選挙で名前を売って商売の足しにするのではないか」という程度にしか、皆考えていませんでした。

 そして、それなら合点がいくのですが、もう一つ、これまでテンミニッツTVでもずっと申し上げているトランプ氏の「暴言」という問題があります。アメリカでいうPC(ポリティカル・コレクトネス)のことですが、このPC違反を繰り返していても、ますます彼への支持、人気が高まっているのです。


●メディア利用の上手さがトランプの武器


 これは実はメディアとの関係が非常に重要で、トランプ氏はとにかくニュースになる、あるいは視聴率をかせげる、 何を言い出すか分からない、ということで、その日のニュースの時間を彼のために空けるわけです。つまりメディア各社は、彼を報道して視聴...
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