●日韓のすれ違い-「十分な謝罪をした」という日本側の言い分
前回、日韓の関係が、韓国の民主化が進んだことによって特に1990年代、非常に好転した、日本の謝罪も進んだ、そういう動きについてお話しました。では、今日どうしてこれほど日韓関係がとげとげしくなってしまったのか、そこについて今回はお話したいと思います。
一言で言うと、私は、日韓の間に次に述べるようなすれ違いがあるのではないか、という気がするのです。それは日本からすると「過去のことはもういいではないか」という感じです。一方、韓国からすると「いや、今こそしっかりしなければいけないのだ」「今こそきちんとしてほしい」という、このようなすれ違いがあるような気がします。
「もういいではないか」というのは、前回も申し上げましたように、1990年代に村山談話をはじめ、さまざまな日本側の謝罪が行われたからです。特に、1998年には金大中大統領が日本に来て、小渕恵三総理大臣との首脳会談が行われた結果、日韓パートナーシップ共同宣言というのが出ました。そこで小渕さんが再度謝罪をし、金大中さんが「和解」という言葉を使って、これからの日韓関係を未来に向けて開いていこうということを、お互い宣言はしたわけです。ですから、日本とすれば、「もういいではないか」ということだと思います。
●日韓のすれ違い-民主化を背景にさらなる謝罪、補償を求める韓国側の主張
ただ、韓国からすると、「それでは日本は本当に過去を謝罪してくれたのか」という見方があります。
一つは、村山談話などが出るそばから、閣僚をはじめとして有力政治家の中から、過去についてあまり反省しない、過去の植民地支配は当然のことであったかのような発言が出てくる、そういうことへのいら立ちがあるわけですね。
それと同時に、もう一つの理由は、前にも申し上げましたが、日韓条約というのは韓国では軍事政権が反日の機運を抑え込んで成立させた条約だったので、国民のほうからするといろいろと不満があった。ところが、韓国が民主化されたことによって、かつて弾圧された側の人々が表舞台に出てくる、あるいは当時の学生が中心の勢力になっているというようなことが挙げられます。つまり、韓国の側からすると、民主化されたことによって必ずしも日韓関係がうまくいくということではなくて、その条約で不十分だったもの...