●35年の植民地支配を清算した日韓基本条約
今回は日韓関係についてお話したいと思います。この頃日中ももちろんそうなのですが、
韓流ドラマ、韓流ブームなどですっかりよくなっていたはずの日韓関係が、特に政治外交の関係において、すっかり悪くなってしまいました。
朴槿恵大統領と安倍(晋三)さんという新しい指導者が、一昨年の暮れから去年にかけて生まれたわけですけれども、ついに去年は二人の首脳会談もできずに終わってしまいました。日韓の国交正常化以来、こんなことは非常に珍しいことなのですが、どうしてこんなことになってしまったのかについて、少し歴史的な経緯を踏まえてお話したいと思います。
実は来年2015年は、日韓基本条約ができてちょうど50年にあたる年になります。たまたまそれがまた戦後70年という節目でもあるのですが、この日韓基本条約というのは、1965年にできました。当時の朴正煕大統領、今の朴槿恵さんのお父さんが韓国の大統領だったときです。日本では佐藤栄作さんが総理大臣のときにできた条約です。
これは一言で言うと、かつての日本の植民地支配の時代が韓国で35年間続いたわけですが、それにけりをつける、清算するという内容の条約だったわけです。1965年といいますと、戦争が終わってちょうど20年、韓国にしてみれば植民地から解放されて20年ということなのですが、20年間そういうけりがつかなかったわけです。条約交渉自体、13年に及んでいます。非常に難しい交渉でした。
●経済支援で応じた韓国の賠償要求
一言で言うとけりをつけると申し上げたのですが、もう少し説明すると、要するに植民地時代のすべての法律等が無効であるということを確認したわけです。そして、ここが重要なのですが、韓国にとっては植民地時代の賠償を請求するわけですが、日本は経済協力という形で実質賠償に応じます。無償で3億ドル、有償で2億ドルの経済支援をするわけです。このほかに民間の経済協力もあるわけですけれども、そういう大きな経済支援をすることで韓国の経済発展に尽くす、というのが大きな中身です。
これは一方で、日本は韓国において、個人も国家も築いて持っていたいろいろな財産をすべて放棄するということを意味します。韓国もこれをもって日本に対する請求はすべて終了するという内容の協定も、この条約とセットでできたわけです。
●尾を引く問題点:(1)「併合条約」はいつから無効なのか
ですが、実はいくつかここに問題がありまして、今日までそれが尾を引いているのです。
一つは、韓国が併合された日韓併合条約というのが1910年にあったわけですが、基本的に韓国はこの条約自体が不法であって、「本来当初から無効なのだ」と解釈しています。しかし日本は、「いや、そうではない。いささか強引ではあったかもしれないけれど、あの条約は作ったのだ。国際的にも承認されたものだから法的には当時は合法だった」という立場を貫きます。
この点で最後までもめるのですが、結局条約の中では、そうした併合にまつわるさまざまな条約や協定について、「もはや無効であることを確認する」としました。「もはや」という表現で玉虫色にしたわけです。
韓国は、「もはや」ということで「当初から」というように解釈する。日本側は、「いや、この基本条約によって、もはや無効になったのだ」というように解釈するというところで、そこの差異があります。
●尾を引く問題点:(2)棚上げした領土問題
それから、領土の問題があります。竹島、独島の領有権をめぐって、当時もう韓国は竹島を自分の領土として占拠して実効支配をしていました。日本はこれに反発していたわけですが、この問題について条約にはなんら書き込むことがなく、事実上棚上げしたのです。
実は条約締結にあたり、当時有力な政治家同士の間で、この問題は解決しないことをもって解決とみなす、というような密約を結んだということも言われています。今はその文書がないものですから証拠もないのですが。
当時の理解としては、韓国が実効支配したまま、日本はそれに抗議はするけれども、それ以上この問題で両国があまりヒートアップしないようにしよう、という暗黙の了解だったわけです。そうしたことが、今日50年近く経つと当事者もいなくなって、いろいろうやむやになってくるのですが。
●尾を引く問題点:(3)個人補償は解決ずみか
もう一つ、先ほど少しお話ししましたが、このときに韓国はこれをもってさまざまな請求をもうこれ以上しないということを、協定に書いたのです。ですけれども、これも時代に合わないということで、例えば従軍慰安婦、あるいは強制的に徴用された労働者の補償など、さまざまな問題が今日になって韓国で大きな要求として出てきています。これについて韓国の裁判所が...