日韓関係の悩ましさ
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
ソウル五輪や韓国民主化、日本の体制も変わり共同宣言へ
日韓関係の悩ましさ(2)90年代の和解に行きつくまで
政治と経済
若宮啓文(元朝日新聞主筆)
1965年に締結した日韓基本条約は、その後、日韓両国にさまざまな波紋を投げかけた。条約締結の背景となった国際情勢、その後に噴出した諸問題など、日韓条約に関連する複雑かつ多面的状況を解説する。(シリーズ3話中第2話)
時間:8分26秒
収録日:2013年11月8日
追加日:2014年4月24日
≪全文≫

●日韓それぞれの反対運動


前回、日韓条約というのはどういうものだったかというお話をしましたが、実は1965年に日韓条約が結ばれたとき、韓国でも日本でも大変な反対デモが起きました。特に韓国では激しい反対のデモが学生を中心に起きまして、ついに当時の朴正煕さんという大統領が非常戒厳令まで敷いたのです。これはクーデターによって作った軍事独裁政権ですから、そういうことができたのですが、非常戒厳令まで敷いて反対デモを抑えて通した条約だったのです。
なぜこれほど韓国で反対が強かったのか。それは一言で言えば、韓国にとってはこの条約が屈辱的であるという理由からでした。
この条約には、実は日本側の過去に対する謝罪もなければ反省の弁もなんら書き込まれていないのです。当時条約を作るにあたって、 椎名悦三郎さんという外務大臣がいたのですが、唯一、この方がソウルに行って空港で読み上げた声明の中で、「過去の不幸な一時期について苦痛を与えたことを反省する」という弁を述べて、それで韓国政府はよしとします。しかし、条約そのものにはそういう文言は一切ないのです。首脳会談も行われませんでした。
つまり、軍事政権下において国民の中では、「日本の謝罪もないのにお金欲しさでこういう条約を結ぶのか」という反対が強く、それを軍事独裁政権が抑えこんで作ったということだったわけです。
それから、一方の日本側ですが、確かにそういう反省の機運というのはそれほど大きくあったわけではないのです。当時は自民党の磐石の政権でした。そして、日本でも実は反対デモがあり、特に野党、あるいは労働組合、学生たちが反対したのは、その条約の相手が朝鮮半島の南半分の韓国であるということからでした。北朝鮮を置き去りにして韓国とだけそういう条約を作っていいのか。しかも、韓国は軍事政権ではないのか、いうことで反対がありました。

●条約に込められた戦略的事情とその限界


しかし、この両国の政府は、アメリカも後ろで非常に強くバックアップしたのですが、いろいろな問題はあっても北朝鮮という脅威を抱えていました。あるいは、激しい冷戦の時代ですから、そのバックにはソ連がおり、また朝鮮戦争では、北朝鮮を応援して戦争に参加した中国がバックにいました。そういう中で、韓国が経済力においても北朝鮮に目劣りするようなことでは困る。早く韓国を一人前の国にして、対抗し...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプの動きを止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
なぜ中間団体が重要か…家族も企業も学校も自治会も政党も
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
第2の人生を明るくする労働市場改革(1)日本の労働市場が抱える問題
シニアの雇用、正規・非正規の格差…日本の労働市場の問題
宮本弘曉
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(4)百年後の日本人のために
百年後の日本人のために、共に玉砕する仲間たちのために
門田隆将
「アカデメイア」から考える学びの意義(2)プラトンの学園アカデメイア
プラトン「アカデメイア」の本質は自由な議論と哲学的探究
納富信留