歴史家が語る『裕次郎』
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
社会派でありながら娯楽映画に仕立てた裕次郎映画
歴史家が語る『裕次郎』(4)『太陽への脱出』と「骨」
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
古代ローマ史を専門とする早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏が著書『裕次郎』について解説するシリーズレクチャー。最終回の今回取り上げる『太陽への脱出』は、単行本では「必死に耐えながらも傷ついてゆく男の宿命」と題されている。裕次郎はいったい何に耐えたのか。著者自身に案内していただこう。(全4話中第4話)
【ご注意】本講義には、映画の内容や結末に言及する箇所がございます。
時間:17分13秒
収録日:2017年8月23日
追加日:2017年9月29日
≪全文≫

●同時代性の突出に度肝を抜かれる『太陽への脱出』


 『赤いハンカチ』や『夜霧よ今夜もありがとう』といった映画も、やはり独特の時代背景を生かしています。『赤いハンカチ』で裕次郎演じる刑事は射撃の名手なのですが、オリンピック候補に選ばれるほどだという設定です。昭和39(1964)年1月公開の映画ですから、その年の10月には東京オリンピックを迎えます。そのように時代のニーズなり関心を呼ぶ役回りをしっかりと作っているということです。後になって冷静に考えると、観た方は時代背景が良く描かれた作品だと気付くものです。

 さらに驚くべき作品は昭和38年4月公開の『太陽への脱出』です。なんと、日本から東南アジア方面に向けた武器輸出疑惑が軸になっています。その情報を嗅ぎ付け、真実を突き止めようとする新聞記者を二谷英明が演じました。

 裕次郎は、日本からの武器を売りさばく商社の社員の一人として彼の前に現れる、いわば悪役です。日本は、ご承知のように武器を持つことすら憲法で建前上は禁止されている国です。まして製造して他国に売るなどということはあり得ません。しかし、実際には東南アジア方面に武器を売って儲けている人間がいるらしいという設定で、その情報を追いかけていくと、密売人の先頭に立って交渉しているのが裕次郎役の主人公なのです。


●国民的ヒーローの裕次郎が壮絶な「死」を遂げる映画


 商社員の名は速水。ある時から自分は死んだことになっており、中国人に成り済ましています。しかし、人前で中国語を話すわけにはいかず、英語でしゃべっているという設定です。映画でも速水(裕次郎)は、最初の30分ほど英語で話します。記者(二谷)と出会う場面は英語のやりとりで、字幕が付くという念の入れようですが、話の展開につれて、実態が次第に明らかになっていきます。

 結局、速水(裕次郎)が密売の中心人物といっても、背景には巨大な組織があり、ただ最前線で働かされているだけだったのです。新聞記者の介入を知った組織による事態の急変があり、速水にも日本へ帰って皆に実情を訴えたい気持ちが生まれてきます。最終的には武器製造工場を爆破しようと決意し、「5分後に工場を爆破します。皆さん、今すぐ退避してください」と社内放送を流します。火薬庫の入口にたどり着き、突入しようとしたところで、ライフルの一斉射撃に遭い、壮絶な死を遂げるという筋...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
印象派の解体と最後の印象派展(1)セザンヌと印象派
印象派の画家に大きな影響を与えたセザンヌの構築的筆触
安井裕雄
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留

人気の講義ランキングTOP10
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(5)キリスト教と反ユダヤ思想
ユダヤ人迫害を生んだ「権力者・ユダヤ人・民衆」の三者関係
鶴見太郎
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
三日坊主、部屋が片付かない…なぜできないか行動分析学で考える
島宗理
組織心理学~「チームの温度差」を埋める(1)温度差の正体とあいさつの影響力
職場のメンタルに影響する「あいさつ」、その効用とは?
山浦一保
心と感情の進化(1)そもそも「心と感情」とは何なのか
「心と感情」とは何か、行動生態学から考える大事な問題
長谷川眞理子
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
大人の学び~発展しつづける人生のために(1)「Unlearn(アンラーン)」とは何か
見方を変える!生き方を変える!そのためのアンラーン
為末大
編集部ラジオ2026(10)ユダヤ人特集~鶴見太郎先生
【10min解説】鶴見太郎先生《教養としてのユダヤ人の歴史》
テンミニッツ・アカデミー編集部
折口信夫が語った日本文化の核心(2)宗教文学発生説と「依代」
なぜ大晦日におせち料理を食べてはいけないか?神様の来訪
上野誠