歴史家が語る『裕次郎』
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社会派でありながら娯楽映画に仕立てた裕次郎映画
歴史家が語る『裕次郎』(4)『太陽への脱出』と「骨」
芸術と文化
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
古代ローマ史を専門とする早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏が著書『裕次郎』について解説するシリーズレクチャー。最終回の今回取り上げる『太陽への脱出』は、単行本では「必死に耐えながらも傷ついてゆく男の宿命」と題されている。裕次郎はいったい何に耐えたのか。著者自身に案内していただこう。(全4話中第4話)
【ご注意】本講義には、映画の内容や結末に言及する箇所がございます。
時間:17分13秒
収録日:2017年8月23日
追加日:2017年9月29日
≪全文≫

●同時代性の突出に度肝を抜かれる『太陽への脱出』


 『赤いハンカチ』や『夜霧よ今夜もありがとう』といった映画も、やはり独特の時代背景を生かしています。『赤いハンカチ』で裕次郎演じる刑事は射撃の名手なのですが、オリンピック候補に選ばれるほどだという設定です。昭和39(1964)年1月公開の映画ですから、その年の10月には東京オリンピックを迎えます。そのように時代のニーズなり関心を呼ぶ役回りをしっかりと作っているということです。後になって冷静に考えると、観た方は時代背景が良く描かれた作品だと気付くものです。

 さらに驚くべき作品は昭和38年4月公開の『太陽への脱出』です。なんと、日本から東南アジア方面に向けた武器輸出疑惑が軸になっています。その情報を嗅ぎ付け、真実を突き止めようとする新聞記者を二谷英明が演じました。

 裕次郎は、日本からの武器を売りさばく商社の社員の一人として彼の前に現れる、いわば悪役です。日本は、ご承知のように武器を持つことすら憲法で建前上は禁止されている国です。まして製造して他国に売るなどということはあり得ません。しかし、実際には東南アジア方面に武器を売って儲けている人間がいるらしいという設定で、その情報を追いかけていくと、密売人の先頭に立って交渉しているのが裕次郎役の主人公なのです。


●国民的ヒーローの裕次郎が壮絶な「死」を遂げる映画


 商社員の名は速水。ある時から自分は死んだことになっており、中国人に成り済ましています。しかし、人前で中国語を話すわけにはいかず、英語でしゃべっているという設定です。映画でも速水(裕次郎)は、最初の30分ほど英語で話します。記者(二谷)と出会う場面は英語のやりとりで、字幕が付くという念の入れようですが、話の展開につれて、実態が次第に明らかになっていきます。

 結局、速水(裕次郎)が密売の中心人物といっても、背景には巨大な組織があり、ただ最前線で働かされているだけだったのです。新聞記者の介入を知った組織による事態の急変があり、速水にも日本へ帰って皆に実情を訴えたい気持ちが生まれてきます。最終的には武器製造工場を爆破しようと決意し、「5分後に工場を爆破します。皆さん、今すぐ退避してください」と社内放送を流します。火薬庫の入口にたどり着き、突入しようとしたところで、ライフルの一斉射撃に遭い、壮絶な死を遂げるという筋...

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