歴史家が語る『裕次郎』
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
裕次郎映画に描かれる時代背景がリアルな共感を生んだ
歴史家が語る『裕次郎』(3)裕次郎映画とその時代背景
本村凌二(東京大学名誉教授/文学博士)
「古代ローマ史の泰斗が『同時代史』を描いた」と話題になっているのが、『裕次郎』(講談社)。2017年7月に発刊された早稲田大学国際教養学部特任教授の本村凌二氏の近刊である。今回は、著作で取り上げた10本の映画から、時代背景の優れた作品をいくつか紹介していただく。(全4話中第3話)
【ご注意】本講義には、映画の内容や結末に言及する箇所がございます。
時間:14分37秒
収録日:2017年8月23日
追加日:2017年9月28日
≪全文≫

●『裕次郎』で取り上げた10本の映画


 『裕次郎』という本の中では、10本の映画を取り上げました。まずラインナップを紹介しましょう。

 昭和31(1956)年の映画が『狂った果実』、昭和32年が『俺は待ってるぜ』、32年から33年に向かう年末年始に封切られたのが『嵐を呼ぶ男』です。同じ昭和33年作に『赤い波止場』があります。この作品中の裕次郎が最高に格好良いという人もいます。翌昭和34年は『世界を賭ける恋』で、昭和37年『憎いあンちくしょう』、昭和38年『太陽への脱出』、昭和39年『赤いハンカチ』と続きます。そして、昭和41年が『帰らざる波止場』、最後が昭和42年の『夜霧よ今夜もありがとう』で、以上の10本です。

 年配の方の中には、「観た映画ばかり」と言われる方もいらっしゃると思います。全部を取り上げるわけにはいきませんが、この中から2~3本、思い出に残ったものを取り上げて、時代との関わりの中でどういうことが描かれたのかを紹介します。


●ブラジル移民とボクシング人気を描いた『俺は待ってるぜ』


 まずは『俺は待ってるぜ』です。裕次郎が演じる主人公は元ボクサーで、喧嘩の時に誤って相手を殺してしまいます。過失致死がついたかもしれませんが、そのために彼はボクサーを辞めて、レストラン経営を始めます。そこに、ある女性(後に石原夫人となる北原三枝)とのやりとりが、絡んできます。

 やがて、彼にはブラジルに移民した兄がおり、1年たてば自分を呼んでくれるはずだからボクサーを廃業したのだということが分かります。ところが、肝心の兄との間は音信不通が続いています。1年後、兄に出した3通の手紙が「該当者なし」扱いで送り返されてきます。結局、兄は日本を出国さえしていないことがだんだんと分かってくるのです。

 時代の背景にあるのは「移民」の事情です。今でこそブラジルよりも日本の方が先進国になってしまいましたが、戦時中も終戦直後も、まったくそうではありませんでした。戦前、満州への移民などは、日本が不景気の時に活発に行われ、戦後は行き先がブラジルやアメリカに変わります。特にブラジル移民については、政策的にかなり奨励されるようなところがありました。少年期をブラジル移民として育ったアントニオ猪木氏が、帰国後にプロレスラーになったのは有名な話です。

 そういう背景の下、いざ移民するとなると船賃が必要ですが、「小銭...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
武田将明
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
万葉集の秘密~日本文化と中国文化(1)万葉集の歌と中国の影響
『万葉集』はいかなる歌集か…日本のルーツと中国の影響
上野誠
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(6)日本人の当たり前と山本七平の違和感
日本の異様さ…フィリピンから復員した山本七平が驚いたこと
與那覇潤
インフレの行方…歴史から将来を予測する(1)インフレの具体像を探る
270年の物価の歴史に学べ…急激な物価上昇期の特徴と教訓
養田功一郎
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
第二次世界大戦とソ連の真実(1)レーニンの思想的特徴
レーニン演説…革命のため帝国主義の3つの対立を利用せよ
福井義高
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
戦前、陸軍は歴史をどう動かしたか(1)総力戦時代の到来
日英同盟の廃棄、総力戦…世界秩序の激変に翻弄された日本
中西輝政
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(3)「現場の熱」こそ多角化の要点
新規事業を成功させるリーダーとは…上意下達はなぜダメか
水野道訓