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スマートウエルネスシティ設計のポイント

スマートウェルネスみつけの実現へ(4)7つのポイント

久住時男
元・見附市長
情報・テキスト
新潟県見附市長の久住時男氏は、スマートウエルネスシティの設計に関し、施設運営や公共交通整備などについて、7つのポイントを指摘する。そこでは、ハード面だけでなく、人材育成などソフト面でもさまざまな試みがなされているという。(全5話中第4話)
≪全文≫

●社会参加ができる場所づくり


 前回ご説明したさまざまな研究成果と、それに基づくプロジェクトをベースに、さらに都市の設計が考えられています。歩かざるを得ないような、あるいは歩きたくなるような都市を作るために、具体的にどのような形でスマートウエルネスシティを設計していくかについてまとめたのが、上のスライドです。

 第1に、社会参加です。つまり、外出できる場づくりをするということです。家でテレビを見るより、毎日行きたいような場所が地域にどれだけあるでしょうか。これを計画してつくっていかなければなりません。

 例えば、後でお話しする「ネーブルみつけ」や「みつけイングリッシュガーデン」、そして「ふるさとセンター」があります。ふるさとセンターは、12年かけて全市につくった地域コミュニティ組織の真ん中に、地域のたまり場としてつくったものです。

 さらに「パティオにいがた」という道の駅を災害の跡地につくりました。ここは国道に面していないにもかかわらず、1年間で100万人が来訪しました。また、法務局が撤退して空き家になっていた建物を市民ギャラリーにしました。ここにも2017(平成29年)年度の入場者は約5万人に上りました。他にも国の支援で、商店街の近くに銭湯を作り、1年間で20万人が来るような施設になりました。このようなたまり場を計画的につくっていったのです。

 もう一つ考えたのは、こうした施設の運営を、できるだけ市民の皆さんにやってもらうという仕組みです。行政が直接運営をするのはまず無理だと割り切っています。先ほどお話ししたハッピー・リタイアメント・プロジェクトは、このネーブルみつけを中心に開催してもらっています。

 他方、みつけイングリッシュガーデンの維持管理は市民ボランティアグループである「ナチュラルガーデンクラブ」が行っています。ナチュラルガーデンクラブは118人の市民の皆さんで組織されています。

 ナチュラルガーデンクラブはその活動が評価され、2015年(平成27年)には「みどりの愛護」功労者国土交通大臣賞を、また、2018年(平成30年)4月にはみどりの式典で天皇皇后両陛下の前で、安倍晋三総理大臣から緑化推進運動功労者内閣総理大臣表彰を受けました。

 また、こうしたふるさとセンターができたことによって、地域の運動会が復活するという効果もありました。私は文部科学省の委員も務めてきましたが、その中で学校は学校の先生だけでなく、地域が支えなければ問題は1つも解決しないということを学びました。その経験から、地域が学校を支えるという考えの下、さまざまな仕組みをつくっていきました。

 見附市には8つの小学校、4つの中学校、1つの特別支援学校があります。2005年(平成17年)の時点では、地域の人の中でこれらの学校に関わった数は、年間701人だけでした。それが2017年(平成29年)には1年間で学校に関わった地域の人の数は8058人に増えました。学校の先生は地域の人が関わることを歓迎してくれており、地域の人も学校に関わってお手伝いしたいという気持ちを持っています。こうした関係の強化が、関わる人が増えていった要因であると考えることができます。

 ここまでお話ししたさまざまな施設をつくることで、ソフト面での市民の活動につながっていったということが、第一に大事な点です。


●中心市街地を中核とした賑わいづくり


 スマートウエルネスシティを推進するために重要視している第2のポイントは、中心市街地です。見附市は旧見附町と旧今町という2つの大きい中心市街地が昭和の大合併で合併し、1つになりました。その中心の0.5~1キロ四方に、先ほどの施設をあまり分散させずに、できるだけ集約するよう計画したのです。それにより、この中心市街地の中では、なるべく市民が歩いて移動できるような空間をつくりました。

 また、今までの道路は車のために設計していましたが、見附市では歩く人たち中心の道路設計がなされました。この図にある、歩車共存道路は、そうした意図でつくられました。


●複数省庁を巻き込む地域再生計画の実施


 第3のポイントは、地方都市を持続させていくためのまちづくりを、複数の省庁に働きかけて行うということです。つまり、省庁に横串を刺して問題に取り組むということです。見附市では、全ての部署に横串を刺す形で取り組まなければ、問題は解決しないという考えが浸透しています。

 霞が関の官僚も横串を刺して問題に取り組むことを言い続けてきています。その中で地方都市に関しても、2013年(平成25年)から特定地域再生計画を策定し、6省庁の課長が見附市に来訪し、このまちのことを議論してくれま...
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