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なぜ、がんの死亡率が下がらないか…喫煙率と検診受診率

がん対策の現状と今後(4)死亡率低下のための課題

門田守人
日本医学会 会長
概要・テキスト
今回は、がん対策推進基本計画を振り返り、なぜその中で死亡率が思ったほど下がらなかったのかを説明する。そこには少子高齢化に伴う統計上の問題と予防や検診が広がらないという日本の現状がある。(全5話中第4話)
時間:11:20
収録日:2018/09/10
追加日:2019/02/28
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≪全文≫

●がん対策の遅れと「がん対策加速化プラン」


 成果はそれなりに現れています。しかし、がんの死亡率が10年で20パーセント減少にはいかないということは、もうはっきりと言えるようになりました。ですから、第2期の2016年~2017年頃には、10年たつけれど結局は計画倒れに近いのではないか、大変なことだ、といわれるようになりました。

 そのような時に、わが国はがん対策とは言うもののやはり遅れているのではないのか、ということで、安倍晋三総理大臣からがん対策の加速化を考えたらどうかと提案されました。

 2015年(平成27年)6月1日に「がんサミット」が開催されました。その席で安倍総理が、何とか加速するようにと言われました。そこで、「がん対策加速化プラン」が2015年に行われました。

 2017年(平成29年)が、がん対策推進基本計画が進められて10年目になります。その時期までに遅れているものを何とかするように、ということですが、それほど簡単に、遅れているものが急にどんどん進むというような種類のものではありません。そこで対策を何とかしようということが話題になり始めたのです。


●生存率の高まりと下がらないがんの死亡率


 そこで、医療にしろ、社会的な問題にしろ、さまざまなものが皆それなりに動いて前に進んでいるといいつつも、がんの死亡率が思うように下がらないというのはどういうことなのか、ということを考えざるを得ませんでした。

 その時に話題になったのはどういうことか。がんにかかった人が治療して、5年生存率、あるいは10年生存率を見てみると、成績はだんだん良くなっています。ですから、医療は進んでだんだん良くなっており、生存率も少しずつ伸びているのです。

 けれども、生存率というのは、がんにかかった人が治療してどれだけ生存できるかということです。ですから、治療をちゃんとしたらこうなりますよ、ということです。ということは、がん死亡率とは、がん患者さんではなく、国民全体当たりのがんで亡くなる人の割合ということになったのです。

 そうなると、分母は国民全体で、がんになった人を上手に治療して長生きできるようにしたとしても、がんにかかる人がどんどん増えたらどうなるか。治療はう...
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