がん対策の現状と今後
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
次の動画も登録不要で無料視聴できます!
がん対策推進基本計画、最初の5年間の成果
第2話へ進む
がんの医療格差をなくすための「がん対策基本法」
がん対策の現状と今後(1)がん対策基本法の成立経緯
門田守人(日本医学会 会長/地方独立行政法人堺市立総合病院機構理事長/大阪大学名誉教授)
がん治療の均てん化というがん患者たちの願いをかなえるべく、2006年にがん対策基本法が成立、2007年に施行された。がん対策推進基本計画では、目標として10年間でがんによる死亡率の20パーセント低下と患者および家族の苦痛の軽減が掲げられた。大阪大学名誉教授で堺市立病院機構理事長の門田守人氏がわが国におけるがん対策の経緯を説明する。(全5話中第1話)
時間:10分48秒
収録日:2018年9月10日
追加日:2019年2月25日
カテゴリー:
≪全文≫

●がん対策の現状


 私は、地方独立行政法人堺市立病院機構の理事長を務めている門田守人です。2017年までは、日本の厚生労働省のがん対策推進協議会の会長という役を6年間務めました。そのようなことから、わが国の今のがん対策の現状、あるいは歴史についてお話を始めたいと思います。

 わが国のがん対策というと、基本的にはがん対策基本法が2006年にでき、2007年から施行されたことが挙げられます。このようなことで、2007年から「がん対策推進基本計画」が行われるようになりました。


 そのようなことになった経緯からお話しします。その頃、まだまだわが国のがんの治療成績は、必ずしも満足できるものではありませんでした。そういった意味で、がんに対して治る人、あるいは運よく治る人もいらっしゃれば、そうではない人が少なからずいらっしゃるという状態でした。当時の話題とすれば2005年ごろからでしょうか、がん患者さんたちが治る病院、治らない病院というとおかしいのですが、治るところ、あるいは治る治療法、ないし最もふさわしい治療法を国民にもよく分かるようにしてほしいという声が、患者さんの側から上がりました。


●がん対策基本法制定の経緯


 当時も、がん患者の会がさまざまに立ち上がっていました。そして、その中で話題はどうなっていたかというと、やはり一番大きな問題意識は、地域による差、すなわち病院による差、場所による差、あるいは病気による差といった、格差があるということでした。この格差があるということに大きな課題がありました。うまくいく人とそうでない人がいるのはどのようなことなのかということで、この格差が非常に意識されていました。
 地域による格差、あるいはがん種による治療技術の差を少なくすることを、「均てん化」といいますが、当時の考えでは、「均てん化」、つまりうまく皆さんにあまねく広く伝わる、あるいはそうした治療を受けられるようにしてほしいというのが、患者さんたちの大きな願いでした。ですから、がん医療の均てん化を図る、というのが当時の大きな話題の中心だったわけです。
 そのようなことが言われるようになり、そのためには法律がいります。そこで、がん対策基本法という法律を作るこ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
睡眠と健康~その驚きの影響(1)睡眠が担う5つのミッション
寝ないとよく食べる…睡眠不足が生活習慣病を招く理由
西野精治
老いない骨のつくり方(1)高齢化と骨の病気
健康寿命に大きく影響する骨粗鬆症・歯周病・変形性関節症
鄭雄一
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
「男性更年期」とは何か
うつやほてり…男性ホルモン・テストステロン減少のせい?
堀江重郎
「最高の睡眠」へ~知っておくべき睡眠常識(1)健康な睡眠のための方法
どうすれば「最高の睡眠」は実現するか…健康な睡眠とは?
西野精治

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓