●第一のおすすめ本-『進化 生命のたどる道』
私は、進化生物学が生物学の中で最も面白いと思っているので、進化についての本をご紹介したいと思います。
進化についてはテンミニッツTVの中で何回かお話ししてきましたが、生物がどうしてこのようにできているのかを示す唯一の統一的な理論が、進化理論なのです。ところが、進化については本当に誤解が多く、「トンデモ」のような話からまじめな話までたくさんあります。
この本は、カール・ジンマーという人が書いた『進化 生命のたどる道』(岩波書店)という本です。彼はアメリカの科学ジャーナリストですが、たいへんしっかりと調査されていて、その意味でもこの本は非常に立派に全体像を書いた優れた本だと思います。私が日本語版監訳となっており、自分が関係した本をご紹介するのは気がひけるのですが、本当にカール・ジンマー氏のこの本はすごいと思います。
この本では、進化に関する話題は全部取り上げていて、遺伝子の話も形の話も、古生代、中生代と地質年代に沿って生き物がどう変化したかという大きな話も、また、今の人間で起こっているちょっとした遺伝子の変動の話なども、全て入っています。もちろん、人類の進化のことも書いてあります。
●気軽に、きちんと学べる『進化の教科書』
これが本体5600円と非常に値段が高くて、なかなか簡単にはおすすめできないなと思っていたところ、同じカール・ジンマー氏がダグラス.J・エムレン氏(生物学者でカブトムシなどの研究をしている人)と一緒に書いた『進化の教科書』というシリーズが、講談社のブルーバックスから出ました。値段は第1巻が本体1680円、第2巻が本体1600円で、先ほどの本の半分程度です。
カール・ジンマー氏のジャーナリストとしての筆の軽さというものがとても良く、ダグラス.J・エムレン氏も、生物学における進化、遺伝子、生態と歴史などについて、全てうまくカバーして書いているので、とても良い本です。現に、ハーバードやプリンストンなど、いろいろなアメリカの大学で教科書として採用されています。第1巻が進化の歴史について、第2巻が進化の理論となっています。ポケットに入るサイズですし、進化についてしっかりと分かる良質な進化学の本なので、この本をぜひ皆さんにご紹介したいと思います。
(カール・ジンマー著、長谷川眞理子翻訳、入江尚子翻訳、岩波書店)