長期金利の低水準下で取るべき日本の政策
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
長期金利が低いまま続く場合、どのような政策運営が必要か
長期金利の低水準下で取るべき日本の政策
伊藤元重(東京大学名誉教授)
長期金利はほとんどゼロに近い。だからといって、借金を増やしても大丈夫というのは非常に乱暴な議論だと伊藤元重氏は言う。債務は減らしていく必要があるが、歳出を抑え込むことは経済にマイナスの効果を産むこともある。ではなぜここまで長期金利が低いのか。この状態がこのまま続くとすると、どうすればいいのか。日本の課題と、取るべき政策について議論する。
時間:14分35秒
収録日:2019年4月16日
追加日:2019年6月2日
カテゴリー:
≪全文≫

●長期金利がゼロに近いから借金を増やしても大丈夫というのは乱暴な議論


 長期金利は普通、国債の利回りで議論します。今の時点で10年ものの長期金利はほとんどゼロに近い。一時的にはマイナスまでいくことがあるわけですが、長期金利、すなわち10年ものの国債の利回りが0パーセントだということはどういうことかというと、政府が新たに債務を借金したり、あるいは過去に借りた債務を新しい国債に借り換えたりしたときの金利負担は生まれないということです。

 ですから、非常に乱暴な話ではあるのですが、長期金利がゼロに近いというのは、政府はある程度借金を増やしても問題がないのではないだろうかという議論になる可能性があるということです。

 この「政府がある程度借金を増やしても問題がないのではないだろうか」という言い方は、非常に気を付けなければいけないと思います。今いくらでも借金を増やしても大丈夫だという非常に乱暴な議論もありますから、そういう議論と一緒にはされたくありません。


●債務を減らすにあたって歳出を抑え込むと弊害もあり得る


 ただ、非常に印象的だったのは、最近、元アメリカの財務長官でハーバード大学の教授でもあるローレンス・サマーズ氏が『FOREIGN AFFAIRS(フォーリン・アフェアーズ)』でそのような論点に立った非常に強烈な議論をしていることです。簡単にいうと、ある程度政府の債務が高い水準にあるわけだが、それはあまり気にする必要はない、ということです。

 むしろ心配しなければいけないのは、急速に債務を減らさなければいけないからといって、歳出を抑え込むことのマイナスの方が大きいのではないだろうか、ということです。低金利がもたらしているマクロ的な環境について、再度きちっと考える必要があるのではないだろうかということを言っています。そういう意味では、日本の財政問題や日本の経済運営についても、この点は非常に重要になってくるかもしれません。

 個人的な話をすると、日本の債務が非常に大きいことが将来、財政に対して非常に大きな負荷をかける、ということを私は心配しています。確かに今、金利は非常に低いので、政府の財政の中における国債の利払いの負担は次第に小さくなってきています。

 ただよくいわれるように、もし何らかの理由で国債の金利が上がったりすると、債務における政府の財政負担が増えていきま...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
AI大格差~最新研究による仕事と給料の未来(1)最新研究から見えてくる未来像
AI大格差…なぜ日本の雇用環境では「ショックが大きい」のか?
宮本弘曉
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩
クライン『ショック・ドクトリン』の真実(1)ショック・ドクトリンとは何か
100分de名著!?『ショック・ドクトリン』驚愕の印象操作
柿埜真吾

人気の講義ランキングTOP10
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(6)認知症予防と健康寿命の延伸に向けて
フレイル・サイクルは回り出したら抜けられない!?負のスパイラルへの対処法
小川純人
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
なぜ「てふてふ」が蝶々?日本語の変遷を追う…まずは万葉仮名から
釘貫亨
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(1)物語の構造を読み解くおもしろさ
『オデュッセイア』の面白さの秘密を神話の構造から読み解く…なぜ波乱万丈の神話が人間の創作の源泉になったか
松村一男
今こそ問うべき「人間にとっての教養」(1)なぜ本を読むことが教養なのか
『人間にとって教養とはなにか』に学ぶ教養と本の関係
橋爪大三郎
「満洲」から考える日本とアジア(10)戦後の「五族」の運命
「五族協和」の真実と満洲国崩壊後の五族の悲劇…満洲人、朝鮮人、露人、蒙古人、漢人らの戦後悲史を直視せよ
宮脇淳子
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
編集部ラジオ2026(36)宮脇淳子先生「満洲史」講義の要点
【10min解説】「満洲史」はタブー?…そこから見えてくる教訓とは?
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国春秋戦国時代と始皇帝(序)映画『キングダム』の中国史監修
中国古代史の真実と『キングダム』…史実がわかれば物語はもっと面白い
鶴間和幸
優れた経営者の条件(1)スキルとセンスの違い
経営者のセンスは担当者のスキルとは全く違う
楠木建
メンタルヘルスの現在地とこれから(1)「心を病む」とはどういうことか
なぜ「心の病」が増えている?メンタルヘルスの実態に迫る
斎藤環