最初の日本列島人~3万年前の航海
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「3万年前の航海」に挑んだ徹底再現プロジェクトとは
最初の日本列島人~3万年前の航海(2)3万年前の航海を徹底再現
歴史と社会
海部陽介(東京大学総合研究博物館 教授)
3万年前、ホモサピエンスは日本にどのようにして渡ったのか。それを解明するため、海部陽介氏は台湾から沖縄に向かうルートを使って実験航海を行うプロジェクトを敢行。当時と同じ材料と道具、技術で舟を作り、航海に臨んだのだ。試行錯誤の末、丸木舟という方法にたどりついたが、当時の彼らからすれば、それは冒険ではなく「移住」のためのものだった。(全3話中第2話)
※インタビュアー:川上達史(10MTVオピニオン編集長)
時間:13分35秒
収録日:2019年8月29日
追加日:2019年10月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●難しいからこそ挑んだ沖縄ルート


―― いよいよ今回の実験で先生が研究された沖縄ルートについてということになるんですけれども、普通に考えると非常に難しいというか、非常に距離もあるので、なぜそこに着目されたんでしょうか。

海部 実は最古の渡来ルートではないんです。ですから、そういう意味ではなく、単に難しいからです。沖縄は島が小さくて遠く、それから黒潮という世界最大の海流がそこに入っている。だから非常に難しいんですね、考えただけでも。

 ですが、島に人がいました。これはもう確実ですね。遺跡がありますので。3万年前になると、琉球列島のほぼ全域に人が突然、現れるんですね。これは僕らが思っていたような話とは違う。つまり、その頃の人たちがそんな難しい海を渡れるなんて、今まであまり考えていなかったんですね。どうも何か僕らは思い違いをしているのではないか、ということで、この実験プロジェクトを始めました。


●当時の技術で黒潮をどうやって越えるかを徹底再現


―― これは非常に素人考えでいくと、北から来るか、南の台湾の方から来るかということになると思うんですけれど、北からというのは黒潮が流れているから、当時の技術では難しいということですか。

海部 黒潮の影響のない種子島であれば、九州から南下しているであろうというのが、旧石器考古学の人たちの共通した見解になっています。ただ、そこからトカラ列島を越えて、いわゆる中央琉球、奄美大島、徳之島、沖縄島、この辺りにどっちから入ったかというのは、はっきりとは分かっていないんですね。人類学では伝統的に南の方から来ただろうと言われているんですけれども、ここはもう少し研究などから見ていく必要があると思います。

 他には八重山ですね。宮古島、石垣島でも古い遺跡が発見されています。いろんな証拠があり、どれも決定的ではないんですけれども、総合すると南から来たという可能性が高いんですね。ですから、琉球列島への人の流入というのは、北と南と両方あったんじゃないかなと考えるのが、今のところ妥当です。どっちか一方からと考えるのは、相当無理があると思いです。

 つまり、北の九州から石垣島まで下りてくるというのは、これはとんでもない話になります。黒潮の流れに逆行しないといけないし、宮古島と沖縄島の間は一番距離が...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「歴史と社会」でまず見るべき講義シリーズ
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
古代中国の「日常史」(1)日常史研究とは何か
『古代中国の24時間』英雄だけでなく無名の民に注目!
柿沼陽平
概説・縄文時代~その最新常識(1)縄文時代のイメージと新たな発見
高校日本史で学んだ縄文時代のイメージが最新の研究で変化
山田康弘
モンゴル帝国の世界史(1)日本の世界史教育の大問題
なぜ日本の「世界史」はいびつなのか…東洋史と西洋史の違い
宮脇淳子
「集権と分権」から考える日本の核心(1)日本の国家モデルと公の概念
日本は集権的か分権的か…地理と歴史が作る人間の性質とは
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
海底の仕組みと地球のメカニズム(1)海底の生まれるところ
地球上の火山活動の8割を占める「中央海嶺」とは何か
沖野郷子
経験学習を促すリーダーシップ(2)経験から学ぶ力
米長邦雄のアンラーニング、弟子の弟子になってV字成長
松尾睦
未来を知るための宇宙開発の歴史(9)宇宙開発を継続するための国際月探査
「国際月探査」とは?アルテミス合意と月探査の意味
川口淳一郎
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
続・日本人の「所得の謎」徹底分析(1)各国の財政と国民負担
日本と各国の比較…税負担は低いが社会保障の負担は高い
養田功一郎
「集権と分権」から考える日本の核心(5)島国という地理的条件と高い森林率
各々の地でそれぞれ勝手に…森林率が高い島国・日本の特徴
片山杜秀
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(3)共同保育を現代社会に取り戻す
狩猟採集生活の知恵を生かせ!共同保育実現に向けた動き
長谷川眞理子
知識創造戦略論~暗黙知から形式知へ(2)イノベーションとプロセスの質
「プロセスの質」こそがイノベーションの結果を決める
遠山亮子
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
不便益システムデザインの魅力と可能性(7)不便益の意義と発想方法
「のらカフェ」は「不便益×食」から生まれたアイデア
川上浩司