●国家主権主導型グローバル化を果たした中国
もう一つ申し上げたいのは、中国についてです。中国で何が起きているかというと、中国はいわゆる国家主権を非常に重要視しています。そして、デモクラシーについては、アメリカのような意味でのデモクラシーではありません。
あえて非常に乱暴な言い方をするならば、デモクラシーについては軽視していて、必要とあれば、時にはそれを抑え込むこともやる政府です。そのようななかで、中国はグローバル化を熱心に進めてきました。国家主権を前面に出しながらグローバル化を進めてきて、現在の中国の経済や国家戦略があるわけです。
国家主権を前に押しながら国際化を進めてきた中国と、例えばデモクラシーやポピュリズムのようなものがどんどん大きくなっていくなかでグローバル化を進めてきたアメリカ。この二つの違ったグローバル化がぶつかることによって、グローバル化された世界はある種のつじつまが合うかたちでうまくいくのだろうか。多くの人は、この点について懐疑的な見方をしています。
●20年間で10倍になった中国の輸出をWTOは容認できるか
一番分かりやすいのはWTOが提唱している国際貿易体制です。2001年に中国はWTOに加盟して、その結果としてどんどん成長していくわけです。2001年に中国が加盟した時には、中国のGDPは1.3兆ドルぐらいだったと記憶しています。その1.3兆ドルという金額に比例したかたちで、貿易がありました。
約20年たった現在、中国のGDPは約13兆ドルということで、約10倍にふくれ上がっています。ふくれ上がっていくなかで、中国はどんどん輸出が増えている。結果的に中国の輸出が各国の経済にも非常に大きな影響を及ぼしています。したがって、約20年前に中国がWTOに入ってくる時と比べるとWTOの中身がかなり変わってきていて、簡単に言うと、このなかで中国がどんどん輸出をしていくような状況を、もはやアメリカが容認できないようになってきているのです。
そういうなかで、中国型の資本主義によるグローバル化と、アメリカ型のグローバル化が、真っ向からぶつかり始めたわけです。それが、今の米中貿易摩擦の真相だろうと思います。
●各所で火を吹く中国批判は本質的な問題
もちろんトランプ大統領の始めた米中貿易戦争というのは、あくまでも中国に輸入をもっと減らさせる、あるいは中国がアメリカからの...