過去から未来へ、京都学派の役割
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
西田幾多郎と父・髙坂正顕の師弟エピソード
過去から未来へ、京都学派の役割(2)髙坂正顕の思想と西田幾多郎の「永遠の今」
髙坂節三(公益財団法人 日本漢字能力検定協会 顧問)
カント研究の第一人者であり京都学派の中心的人物でもある髙坂正顕氏は、高校時代に西田幾太郎に出会い、ついには父の反対を押しきって京都帝大哲学科に進学する。正顕氏の三男・髙坂節三氏が語る、京都学派の系譜を知るうえで欠かせないエピソードの数々。(全5話中第2話目)
時間:12分06秒
収録日:2014年7月18日
追加日:2014年9月8日
≪全文≫

●幼少期を満州で過ごし、旧制四高で西田幾多郎と出会う


 この京都学派の思想と父の立場というものを、少し述べてみます。「世界史的立場と日本」を世に問うた京都学派の思想ということについては、先ほども少し言いました、歴史の研究を中心としていた鈴木成高さん、この方の確かおじさんが小島祐馬さんという京大の有名な中国の研究者だったと記憶していますが、この人を除いた西谷啓治さん、高山岩男さん、髙坂正顕の3名が西田幾多郎先生の哲学に憧れて思い悩みました。特に、倉田百三さんが最も強い影響を受けたという『善の研究』などの著書にひかれて、西田先生の指導を受けるために京都帝国大学(今の京都大学)の哲学科へ進みました。

 父の父は、原敬の子分だったのです。ところが、原敬に頼まれて、東京市から国会議員に立候補したところ負けてしまって、その後、逐電して満州へ行くのです。そして満州へ行くときに、僕からいえば祖父ですけれども、祖父は、その前に愛知県の碧海郡(現在の愛知県東部)の、今でいう市長のような役職である郡長をしており、そのときに親しくなった名古屋の芸子さんを連れて行ってしまったのです。ですから、その奥さん、つまり、僕のいうなれば祖母、本当のおばあさんは、一人で東京に残って、洗い張りのような仕事をしながら子どもを育てていったわけでして、この辺は泣かせる話なのですが、病気になってとても生きていけないということで、祖母は船で満州まで行って、祖父に「この子だけは頼む」と父のことを託して、それで、3日目くらいで亡くなったのです。当時の満州の病院、今もその病院はありますが、そこで亡くなったそうです。

 あとの女児は皆ちりちりばらばらで、父だけは満州に引き取られて、当時の満州につくられた第1号の中学校に入りました。そして今度、高校は金沢の旧制第四高等学校に行って、そこで西田先生の指導を受けたのです。


●父の反対を押し切って、京都帝大哲学科へ


 先ほど話したような流れがあって、実の母親はある意味で悲劇的な死に方をしました。祖父はあまり満州では成功しませんでした。祖父は父に政治家になってほしいということで東京帝国大学の法学部を受けろと言っていたのですが、そこで父は、祖父の意向に逆らって、内緒で京都帝大の哲学科に願書を出したのです。「自分を修められなくて、何でそんな政治家をやれるのか」というよう...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
道徳と多様性~道徳のメカニズム(1)既存の道徳の問題点
多様性の時代に必要な道徳とは…科学的アプローチで考える
鄭雄一
世界神話の中の古事記・日本書紀(1)人間の位置づけ
世界神話と日本神話の違いの特徴は「人間の格づけ」にある
鎌田東二
人の行動の「なぜ」を読み解く行動分析学(1)随伴性
「なぜ人は部屋を片付けられないか」を行動分析学で考える
島宗理
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(序)時代考証が語る『豊臣兄弟!』の魅力
2026年大河ドラマ『豊臣兄弟!』、秀吉と秀長の実像に迫る
黒田基樹
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(5)『秘蔵宝鑰』が示す非二元論的世界
雄大で雄渾な生命の全体像…その中で点滅する個々の生命
鎌田東二
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治